中国(上海)自由貿易試験区全体方案公布に関する国務院の通知

作成日:2013年10月15日

法令名称
中国(上海)自由貿易試験区全体方案公布に関する国務院の通知
発布機関
国務院
発布番号
国発[2013]38号
発布日
2013.09.18
実施日
2013.09.18

主旨と目的

国際水準並みの投資貿易の利便化、高効率で簡便・迅速な監督管理、法制環境の規範化された自由貿易試験区を設置し、改革推進と高い開放型経済水準の「実験場」となり、まねることのできる、そして普及させることができる経験を作り出し、全国に奉仕する模範的な、プラスの役割を発揮し、各地区の共同発展を促進する(通知第二条)。

内容のまとめ

全体目標
(全体方案→一、全体要求→(二))
【試験期間】2年から3年
【目 標】
  • 政府機能転換を加速化する。
  • サービス業の開放拡大と外資投資管理体制の改革を積極的に推進する。
  • 本部経済と新型貿易業態を大いに発展させる。
  • 資本項目の兌換自由化と金融サービス業の全面的な開放の探索を急ぐ。
  • 貨物状態の分類監督管理方式を探索・確立する。
  • 投資と革新を促進する政策支援体制を形成する。
  • 国際化・法治化されたビジネス環境を育成する。
実施範囲
(全体方案→一、全体要求→(三))
  • 上海外高橋保税区、上海外高橋保税物流園区、洋山保税港区と上海浦東空港総合保税区などの4つの税関特殊監督管理区域。
  • 先行試行の実施状況及び産業発展と先導の必要性に応じて、実施範囲と試行政策範囲を徐々に拡大する。
行政管理体制改革を推進する
(全体方案→二、主要任務と措置→(一)政府職能転換の加速化→1.)
  • 事前審査許可重視から中間過程、事後の監督管理を重視する政府管理に変更する。
  • ワンストップ受理、総合審査許可と高効率運営のサービス方式を確立する。
  • 業種情報の追跡、監督管理と分類集中の総合評価体制を確立し、試験区内の企業による区外での経営活動の全過程の追跡、管理と監督を強化する。
  • 条件に適合した外国投資者が自由に自己の投資収益を移すことを認める。
  • 知的財産権紛争の調停、援助などの解決体制を確立する。
サービス業の開放を拡大する
(全体方案→二、主要任務と措置→(二)投資領域の開放拡大→2.)
【分 野】
  • 金融サービス分野:銀行サービス、専門健康医療保険、ファイナンスリース。
  • 運輸サービス分野:遠洋貨物運輸、国際船舶管理。
  • 商業貿易サービス分野:付加価値電信、ゲーム機、アミューズメントマシンの販売及びサービス。
  • 専門サービス分野:弁護士サービス、資産信用調査、旅行社、人材仲介サービス、投資管理、工事設計、建築サービス。
  • 文化サービス分野:公演仲介、娯楽場所、教育トレーニング、職業技能トレーニング、医療サービス。
【開放措置】投資者の資格要求、持分比率制限、経営範囲制限などの参入制限措置を一時停止又は取消す(銀行業機関、情報通信サービスは除外する)。
【備考】開放措置は中国(上海)自由貿易試験区内に登録した企業のみに適用される。
ネガティブリスト管理方式を探索・確立する
(全体方案→二、主要任務と措置→(二)投資領域の開放拡大→3.)
国際通用規則を参考にして、外商投資に対して参入前の内国民待遇を試行し、試験区の外商投資と内国民待遇などが合致しない場合を列挙したネガティブリストを研究の上作成する。ネガティブリスト以外の分野:
  • 外商投資プロジェクトについては従来の認可制から届出制に変更し(国内投資プロジェクトは認可のままとする旨国務院が規定している場合は除く)、上海市が責任を持ってこれを取り扱う。
  • 外商投資企業の契約・定款審査許可から上海市による届出管理に変更し、届出後、国の関係規定に従い関係手続きを行う。
  • 国家安全審査制度を整備し、試験区内において外資に関係する国家安全審査を試験的に展開する。
対外投資サービス促進体制を確立する
(全体方案→二、主要任務と措置→(二)投資領域の開放拡大→4.)
  • 国外投資設立企業に対しては届出制を主とする管理方式を実施し、国外投資一般項目については届出制を実施し、上海市が届出管理を行う。
法制保障を整備する
(全体方案→二、主要任務と措置→(五)法制分野の制度保障を整備する→9.)
  • 試行内容について、係る行政法規と国務院文書の一部規定の実施を停止する必要がある場合、規定の手続きに従い取り扱う。
  • このうち、「中華人民共和国外資企業法」、「中華人民共和国中外合弁経営企業法」、「中華人民共和国中外合作経営企業法」規定の係る行政審査許可を一時調整し、2013年10月1日より3年間試行する。
投資促進の税収政策を実施する
(全体方案→三、監督管理と税収制度の環境作りをする→(二)試験区関連の税収政策を探索する→4.)
  • 試験区内に登録した企業又は個人株主は、非貨幣性資産での対外投資などの資産再編行為により発生した資産評価価値増加部分について、5年を超えない期間内において、所得税を分割して納付することができる。
  • 試験区内において企業が株式若しくは出資比率などの持分の形で企業のハイレベル人材及び稀少人材に与えた褒賞については、中関村などの地区で試行中の持分インセンティブ個人所得税分割納税政策を実行する。
貿易促進の税収政策を実施する
(全体方案→三、監督管理と税収制度の環境作りをする→(二)試験区関連の税収政策を探索する→5.)
  • 試験区内に登録しているファイナンスリース企業又は金融リース会社が試験区内に設立したプロジェクト子会社をファイナンスリース輸出税還付試行範囲に入れる。
  • 試験区内に登録した国内のリース会社又はリース会社が設立したプロジェクト子会社が、国の関係部門の許可を受け国外から無負荷重量25トン以上の飛行機を購入し且つ国内の航空会社にリースした場合には、係る輸入段階の増値税優遇政策を享受する。
  • 現行の政策枠組み下で、試験区内の生産企業及び生産型サービス企業が輸入した必要な機器、設備などの貨物については免税とするが、生活サービス業などの企業が輸入した貨物及び法律、行政法規、係る規定にて免税扱いされない旨明確にされている貨物は除く。
  • 積出港の税金還付試行政策を整備し、積出地、運送請負企業、運輸手段などの試行範囲拡大を適時研究する。
その他内容
【全体方案→二、主要任務と措置】
  • 貿易のモデルチェンジ・グレードアップを推し進める。
  • 国際運輸サービスのグレードを向上させる。
  • 金融制度の革新を急ぐ。
  • 金融サービス機能を増強する。

日系企業への影響

本法令では中国(上海)自由貿易試験区の改革の方向性を明確にし、金融、運輸、商業貿易、専門、文化及び社会の六つのサービス分野の開放政策を明確にしている。試験区内に登録した日系企業は開放措置を享受し、同時に区外の企業よりももっと多くの優遇政策と便宜措置を享受することになると思われる。

もっとも、本法令(全体方案)の規定は比較的原則的、概括的なものであるため、今後更に具体的な関連政策及び措置の公布が待たれるところである。従い、引続き動向に注目していくことをお勧めする。


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