モロッコの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2024年の実質GDP成長率は3.8%。非農業部門が成長を牽引。
  • 輸出では自動車・関連部品と電気機械などが上位。主に欧州へ輸出。
  • 対内直接投資は前年比10.2%増。業種別では製造業、国別ではフランスが最大。
  • 日本の対モロッコ貿易は輸出(前年比15.3%増)、輸入(8.2%増)とも拡大。

公開日:2025年12月16日

マクロ経済 
非農業部門が成長を牽引も、前年に改善の農業部門は落ち込む

モロッコ高等計画委員会によると、2024年の実質GDP成長率は、好調な非農業部門(4.5%増)の成長に支えられて3.8%と前年(3.7%)をわずかに上回った。第二次産業が4.2%増と、前年の0.8%増から大きく伸び、特に鉱業が前年の4.2%減から、2024年は13.0%増となった。第三次産業については、前年の5.0%からやや減速したものの、4.6%の成長を記録した。宿泊・サービス業は前年の23.5%増からは鈍化したが、9.6%増と高い成長を維持した。一方、第一次産業は前年の1.8%増から、2024年は4.5%減に落ち込んだ。背景には、農業部門の成長率が前年の1.5%増から2024年には4.8%減のマイナスに転じたことに加え、漁業部門の成長も前年の6.9%から2024年は2.6%に大幅に鈍化したことがある。輸出産業でもある農業は、依然として干ばつが課題となっている。貯水池の整備は進んでいるものの、水不足が続いており、対策として淡水化した海水を灌漑用水に利用するプロジェクトも始まっている。

需要項目別では、民間最終消費支出の伸び率が前年の4.7%増から3.2%増へと鈍化し、政府最終消費支出も前年の6.1%増から5.6%増へと鈍化した。一方、総資本形成は前年の2.3%増から12.8%増へと大きく拡大した。財・サービスの輸出は8.0%増、輸入は11.6%増となった。

2024年の消費者物価上昇率は0.9%で、前年の6.1%から大きく低下した。品目別では食品・非アルコール飲料が前年比で0.6%上昇した。内訳を見ると、肉類(9.4%増)、魚介類(9.3%増)、油脂(1.4%増)、牛乳・チーズ・卵(0.4%増)などが上昇した。一方、野菜類は11.0%、果物類は4.4%下落した。 食品以外では、レストラン・ホテル(3.4%)、住宅・水道・ガス・電気など(2.6%)、教育(2.1%)、衣類・靴類(2.0%)などで上昇した。

2024年4月には、法定最低賃金の引き上げを目的とした法令が採択された(2024年5月8日ビジネス短信参照)。 これにより、2025年1月以降、非農業部門の産業間最低保証賃金(SMIG)は5%引き上げられた。 さらに、専門職向けの最低保証賃金(SMIG)は、2021年から2025年の間に累計で15%上昇した。農業部門では、2025年4月に農業最低保証賃金(SMAG)が改定され、同期間で合計20%増加した。

2024年の失業率は13.3%(前年13.0%)に上昇した。特に、若年層(15~24歳)は36.7%、学卒者は19.6%、女性は19.4%と高く、雇用機会の創出は引き続き政府にとり重要な政策課題である。また、地域間の就労環境格差や初等教育のドロップアウト問題などへの対応も求められる。

貿易 
自動車・同部品の輸出は高い伸びも、貿易赤字は拡大

2024年の貿易(通関ベース)を見ると、輸出が前年比6.1%増の4,563億4,200万モロッコ・ディルハム(MAD、約7兆6,202億円、1ディルハム=約16.7円)となった。輸入は6.4%増の7,612億7,200万MAD(約12兆7,121億円)で、貿易赤字は3,049億3,000万MADと前年から6.8%拡大した。

輸出品目別では、自動車、トラクター、自転車、陸上車両が前年比6.4%増の859億3,500万MADで最大だった。次いで、電気・記録機械、装置、機器が4.4%増の815億8,800万MADとなった。いずれも主要輸出先はスペインやフランスなど欧州である。肥料は14.3%増の632億3,100万MADで3位を維持した。

輸入品目別では、鉱物燃料、鉱油、歴青質材料が1位で、前年比6.7%減の1,138億4,400万MADだった。前年3位の自動車、トラクター、自転車、陸上車両は13.8%増で2位に上昇した。一方、電気・記録機械、装置、機器は1.5%増にとどまり3位に後退し、小麦などの穀類も8.5%減少した。

国・地域別に輸出先を見ると、過去2年と同様に、スペインが最大の相手国だった。主な輸出品は電気・記録機械や装置および機器、衣料品、自動車・同部品だった。2位のフランス向けの主な輸出品は自動車・同部品、電気・記録機械や装置および機器、航空機部品となっている。スペインとフランスの合計が輸出総額の41.2%を占めた。 アフリカ域内への輸出は総額の6.9%を占め、前年同様ジブチが最大の相手国であった。コートジボワール、モーリタニア、セネガル、ガーナ、ベナンなどフランス語圏の西アフリカ諸国がこれに続いた。主要輸出品目は肥料、電気機械・電気器具・録音機器、魚類・甲殻類・軟体動物・その他の水生無脊椎動物、砂糖・菓子類、肉類・魚介類加工品だった。

輸入についても、輸出同様にスペインが最大の相手国となった。主な品目は石油・天然ガス・石炭・電力、ボイラーおよび機械類関連品、自動車・同部品で、前年同様の傾向を示した。中国も前年と同様に2位となり、輸入額は前年比18.7%と大きく増加した。主な品目は電気・記録機械や装置および機器、ボイラーおよび機械類関連品、自動車・部品だった。3位のフランスからは、自動車・同部品、電気・記録機械や装置および機器、ボイラーおよび機械類関連品などを中心に輸入した。輸入総額では、スペイン、中国、フランスの上位3カ国で全体の36.9%を占めた。一方、アフリカ域内からの輸入は総額の3.2%にとどまり、主要相手国は、エジプト、チュニジア、南アフリカ共和国、ナイジェリア、リビアだった。主要品目は鉱物燃料・鉱物油・瀝青質物質、食用果実・かんきつ類またはメロンの果皮、動物性または植物性油脂・ワックス、コーヒー・茶・マテ茶・香辛料、プラスチック材料およびその製品、電気・記録機械や装置および機器などである。

表1‐1 モロッコの主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万MAD、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
自動車、トラクター、自転車、陸上車両 80,737 85,935 18.8 6.4
電気・記録機械、装置、機器 78,179 81,588 17.9 4.4
肥料 55,308 63,231 13.9 14.3
ニット製品以外の衣類および衣類付属品 29,530 29,615 6.5 0.3
食用果物、かんきつ類、メロンの果皮 18,011 20,674 4.5 14.8
食用野菜、植物、根菜、塊茎 19,061 19,901 4.4 4.4
魚類、甲殻類、軟体動物、その他の水生無脊椎動物 17,095 16,931 3.7 △ 1.0
航空機および宇宙船 12,783 16,193 3.5 26.7
無機化学物質 13,781 15,526 3.4 12.7
塩、硫黄、石、石膏、石灰、セメント 10,957 11,234 2.5 2.5
ニット製品および衣類付属品 8,937 9,124 2.0 2.1
合計(その他含む) 430,209 456,342 100.0 6.1

〔注〕2023、2024年は暫定値。
〔出所〕モロッコ為替局

表1‐2 モロッコの主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万MAD、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
鉱物燃料、鉱油、歴青質材料 122,022 113,844 15.0 △ 6.7
自動車、トラクター、自転車、陸上車両 66,101 75,199 9.9 13.8
電気・記録機械、装置、機器 73,774 74,891 9.8 1.5
原子炉、ボイラー、機械装置 64,252 74,710 9.8 16.3
プラスチック材料およびその製品 30,316 33,260 4.4 9.7
穀物 30,351 27,783 3.6 △ 8.5
鉄鋼 18,295 20,524 2.7 12.2
航空機および宇宙船 15,201 18,267 2.4 20.2
その他の製品 12,610 15,924 2.1 26.3
鉄製品、鉄鋼製品 14,803 15,497 2.0 4.7
無機化学製品 12,347 14,138 1.9 14.5
合計(その他含む) 715,752 761,272 100.0 6.4

〔注〕2023、2024年は暫定値。
〔出所〕モロッコ為替局

表2-1 モロッコの主要国・地域別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万MAD、%)(△はマイナス値)
2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
スペイン (1) 96,966 100,650 22.1 3.8
フランス (2) 87,476 87,207 19.1 △ 0.3
イタリア (3) 22,307 23,706 5.2 6.3
ドイツ (5) 18,395 23,451 5.1 27.5
英国 (4) 19,172 20,622 4.5 7.6
インド (7) 12,335 14,602 3.2 18.4
米国 (6) 12,694 13,787 3.0 8.6
ブラジル (8) 12,197 13,173 2.9 8.0
トルコ (9) 11,833 11,648 2.6 △ 1.6
オランダ (10) 9,330 9,818 2.2 5.2
合計(その他含む) 430,209 456,342 100.0 6.1

〔注1〕2023、2024年は暫定値。
〔注2〕国名の横のカッコ内数値は2023年順位。
〔出所〕モロッコ為替局

表2-2 エジプトの主要国・地域別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万MAD、%)(△はマイナス値)
2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
スペイン (1) 112,197 118,813 15.6 5.9
中国 (2) 76,018 90,234 11.9 18.7
フランス (3) 75,624 71,354 9.4 △ 5.6
米国 (4) 60,316 70,771 9.3 17.3
ドイツ (6) 35,356 39,827 5.2 12.6
トルコ (5) 36,567 39,253 5.2 7.3
イタリア (7) 34,433 34,578 4.5 0.4
サウジアラビア (8) 23,702 24,818 3.3 4.7
ポルトガル (9) 16,653 19,814 2.6 19.0
インド (11) 15,001 15,732 2.1 4.9
合計(その他含む) 715,752 761,272 100.0 6.4

〔注1〕2023、2024年は暫定値。
〔注2〕国名の横のカッコ内数値は2023年順位。
〔出所〕モロッコ為替局

対内・対外直接投資 
対内直接投資は増加、アジア勢の順位が総じて上昇

モロッコ為替局によると、2024年の対内直接投資(報告・届け出ベース・フロー)は438億200万MADで、前年から10.2%増加した。業種別では、製造業が164億6,400万MAD(前年比15.4%増、構成比37.6%)と最も多く、中でも自動車製造への投資が、72億3,600万MAD(48.3%増)に達した。次いで不動産が96億4,400万MAD(28.9%増、22.0%)となり、この2業種で全体の約6割を占めた。

国・地域別では、フランスが首位を維持して135億5,800万MAD(前年比4.6%増、構成比31.0%)、次いでアラブ首長国連邦(UAE)が45億6,100万MAD(15.5%増、10.4%)で 前年同様に2位となった。前年5位だったドイツは、24億6,900万MAD(30,8%増、5.6%)で3位に上昇し、前年3位だったスペインは23億4,700万MAD(24.4%減、5.4%)で4位に後退した。アジアでは、特に電池産業や自動車関連分野などで投資プロジェクトが進む中国が20億8,600万MAD(2.2倍、4.8%)で9位から5位へと大きく順位を上げた。さらに、香港は15億7,200万MAD(16.0倍、3.6%)で31位から8位に急上昇した。台湾も9億7,800MAD(前年実績なし、2.2%)で14位に浮上した。その他、シンガポールが5,500万MAD(89.0%増)、インドが1,970万MAD(61.5%増)、韓国は350万MAD(90.3%減)、日本は350万MAD(49.3%減)となった。

自動車など製造業やインフラ開発で新規・拡張投資の発表が相次ぐ

主な投資事例を見ると、主要産業である自動車関連での案件が引き続き堅調である。ステランティス(Stellantis)のケニトラ工場やルノー(Renault)のタンジェ工場の生産能力拡大に加え、電気自動車(EV)分野の成長が要因として挙げられる。2025年7月には、ステランティスのケニトラ工場が増築され、エンジン年産能力は35万台に達した。これに先立つ5月には新世代マイルドハイブリッド(MHEV)エンジンの第1段階の組み立てが開始され、2026年11月には第2段階となるエンジンの機械加工が予定されている。同社はモロッコで環境負荷の低い移動手段を提供するマイクロモビリティソリューションの開発も進めており、2025年1月からシトロエン・アミ、オペル・ロックス-e、フィアット・トポリノの生産能力を年間2万台から7万台に増強した。さらに、2025年7月には新型の100%電動三輪モビリティデバイスの生産を開始し、年間6万5,000台の生産が見込まれている。加えて、ケニトラ工場では20万4,000基の充電ステーションの製造も開始した。

2024年1月、ドイツのコスタル(KOSTAL)は、タンジェメッド工業プラットフォームに自動車部品を製造する新工場を開設した。中国企業もモロッコへの投資を積極的に進めている。モロッコ政府は2025年3月に、中国のサンライズグループと23億MAD規模の協定を締結し、スキラトとフェズでの工場設立を通じて、繊維、糸、織物、衣料品生産の強化を図る計画である。同じく中国のリチウムイオン電池製造大手の国軒高料(GOTION High-Tech)は2025年時点で、ケニトラに20ギガワット時(GWh)規模のバッテリー工場を建設中である。また、中環新能源( Central New Energy Holding Group)は同工場向けに7.63メガワット(MW)の太陽光発電パネルを納入した。同社にとり北アフリカ初の輸出となる。

世界的な航空機需要の高まりを受け、関連する部品産業でも投資が進んでいる。航空機用エンジン製造のプラットアンドホイットニー・カナダ(Pratt & Whitney Canada)は2024年5月、モロッコのカサブランカで新たな製造施設プラットアンドホイットニー・マロック(Pratt & Whitney Maroc、PWM)の建設を開始した。本施設では航空機エンジン(PT6を含む)向けの高精度な静的・構造部品を製造する。

淡水化分野では、モロッコ政府は2024年10月、フランスのエマニュエル・マクロン大統領の訪問に際し、フランスの環境サービス大手ヴェオリア(Veolia)と、アフリカ最大、世界2位の規模となる海水淡水化プロジェクト(施設)の独占開発を目的とした戦略的パートナーシップに関する覚書を締結した。このプロジェクトは、1日あたり82万2,000立方メートル、年間3億立方メートルの造水能力を持ち、ラバト=サレ=ケニトラおよびフェズ=メクネスの両地域で、約930万人に飲料水を供給する計画である。本施設は主に再生可能エネルギー(再エネ)による脱炭素電力で稼働し、持続可能性を重視した設計となっている。

2025年5月に延長建設工事が開始されたケニトラ~マラケシュ間の高速鉄道(LGV)では、対内投資を促す複数の入札が実施された。 モロッコ国鉄(ONCF)は2024年10月、分岐器関連施設工事の入札結果として、高速鉄道用はドイツのフォスロー・コギファー(Vossloh Cogife)が7,762万MADで、在来鉄道用は中鉄山橋集団(CRSBG)が2,634万MADで落札と発表(2024年10月22日ビジネス短信参照)した。2025年2月には総額29億MADを投じて168両の新型車両を調達する契約を締結した。落札企業は、フランスのアルストム(ALSTOM、高速鉄道用18車両)、スペインのCAF(インターシティー用40車両)、韓国の現代ロテム(Hyundai Rotem、都市近郊鉄道用110車両)であった。また、既存の鉄道網の混雑緩和に加え、モロッコがスペイン、ポルトガルと共催する2030年サッカーワールドカップ期間中の公共交通需要のさらなる高まりを見越して、地域急行鉄道(RER=Réseau Express Régional)建設プロジェクトも進められている。対象地域はカサブランカ=セタット、ラバト=サレ=ケニトラ、マラケシュ=サフィの3区間となっている。

欧州に加え、アフリカ地域にも積極的に進出するモロッコ企業

対外直接投資は 前年比13.8%減の270億4,900万MADであった。投資先は前年同様フランスが136億7,800万MAD(前年比23.9%減、構成比50.6 %)で首位となり、イタリアが33億6,400万MAD(12.0倍、12.4%)と大幅増でこれに続いた。具体的な事例としては2024年9月に、モロッコの王族系財閥グループ企業アル・マダ(Al Mada)がイタリアの食品メーカー、ヌッカオ(Nutkao)を約4億5,000万ユーロで買収したことが報じられている。以下、マリ(14億600万MAD、4.3倍、5.2%)、コートジボワール、スペイン、米国、セネガルと続く。

業種別では、製造業が198億3,000万MAD(前年比11.4%減、構成比73.3%)と最大で、中でも自動車産業が126億8,900万MAD(25.5%減、46.9%)を占めている。次いで、食品が46億6,300万MAD(4.3倍、17.2%)、情報通信が21億8,400万MD(2.0倍、8.1%)、金融保険業が19億8,100万MAD(19.6%減、7.3%)となっている。情報通信では電気通信が17億3,600万MAD(2.5倍、6.4%)、金融保険業の中では 金融サービス業が17億2,000万MAD(21.1%減、6.4%)で中核を占める。

農業、保険、IT、建設、医薬品流通などの分野で事業を展開する複数の大手モロッコ企業は 、アフリカ諸国への進出を目指している。フランスのアフリカ政治経済誌ジュヌ・アフリック(Jeune Afrique)の2025年の「アフリカチャンピオン500」ランキングに、モロッコ企業は54社がランクインした。アティジャリワファ銀行(Attijariwafa Bank、9位)、モロッコ国営リン鉱石公社(OCP、10位)、ロイヤル・エア・モロッコ(Royal Air Maroc、91位)などのグループは本ランキングの常連であるが、新たな企業も台頭している。2025年には、民間企業39社を含むモロッコ企業54社がアフリカ地域において推定559億ドルの売上高を達成すると見込まれている(2025年3月19日付「Le360」)。

対日関係 
貿易赤字は減少、輸出では輸送用機器が最大

日本の貿易統計(通関ベース)によると、日本の2024年の対モロッコ貿易は、輸出が前年比15.3%増の3億1,068万ドル、輸入が8.2%増の3億2,586万ドルであった。日本の対モロッコ貿易は輸入超過傾向にあるが、2024年の赤字額は1,518万ドルと、前年の3,170万ドルからさらに縮小した。

品目別の輸出では、輸送用機器が1億3,878万ドル(前年比15.5%増、構成比44.7%)で最も多く、自動車や同部品が主となっている。電気回路などの電気機器が6,305万ドル(3.0%減、20.3%)で続いた。輸入では、食料品(主に魚介類)が1億4,221万ドルで最も多く(9.0%増、43.6%)、次いで52.6%と高い伸びを示した化学製品が5,684万ドル(17.4%)、衣類・同付属品が5,316万ドル(2.8%増、16.3%)で続いた。前年3位だった原料品(11.4%減、10.5%)は4位に後退した。

2024年9月、日系海上物流大手で川崎汽船、商船三井、日本郵船が出資するオーシャンネットワークエクスプレス(Ocean Network Express、ONE)は、モロッコにおいて、ONE(シンガポール)とユニバーサル・シッピング(Universal Shipping、モロッコ)の合弁会社ONE Moroccoを開設すると発表した(2024年8月27日ビジネス短信参照)。

2024年11月、モロッコのカリム・ジダン投資・公共政策統合・評価担当特命相が訪日し、武藤容治経済産業相(当時)と会談、「投資・貿易促進に関する協力覚書」に署名した。このパートナーシップは、自動車産業、航空、農業食品、再エネなどの主要分野での日本企業の投資促進を目的としている(2024年12月6日ビジネス短信参照)。2025年2月には、ジェトロがモロッコでラバト、タンジェ、ケニトラなどの主要都市を訪問する自動車エコシステム促進を目的としたミッションを実施し、関連業種などから日系企業や団体など22社が参加した。(2025年3月3日ビジネス短信参照)。

表3-1 日本の対モロッコ主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:1,000ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
化学製品 8,271 9,525 3.1 15.2
階層レベル2の項目有機化合物 2,505 3,577 1.2 42.8
階層レベル2の項目プラスチック 2,268 1,221 0.4 △ 46.2
原料別製品 24,833 27,767 8.9 11.8
階層レベル2の項目鉄鋼 5,453 5,062 1.6 △ 7.2
階層レベル2の項目非鉄金属 798 1,141 0.4 43.0
階層レベル2の項目金属製品 1,967 2,297 0.7 16.8
階層レベル2の項目織物用糸・繊維製品 5,489 6,133 2.0 11.7
階層レベル2の項目ゴム製品 10,306 11,627 3.7 12.8
階層レベル2の項目紙類・紙製品 536 1,171 0.4 118.5
一般機械 24,660 36,815 11.8 49.3
階層レベル2の項目原動機 3,480 2,878 0.9 △ 17.3
階層レベル2の項目半導体等製造装置 5,546 2,501 0.8 △ 54.9
階層レベル2の項目金属加工機械 3,409 880 0.3 △ 74.2
階層レベル2の項目ポンプ・遠心分離機 1,728 2,601 0.8 50.5
階層レベル2の項目建設用・鉱山用機械 307 9,763 3.1 3,080.1
階層レベル2の項目荷役機械 3,419 3,064 1.0 △ 10.4
電気機器 64,992 63,054 20.3 △ 3.0
階層レベル2の項目半導体等電子部品 8,388 12,834 4.1 53.0
階層レベル2の項目電気計測機器 4,109 4,985 1.6 21.3
階層レベル2の項目電気回路等の機器 29,928 27,483 8.8 △ 8.2
輸送用機器 120,202 138,778 44.7 15.5
階層レベル2の項目自動車 73,748 82,667 26.6 12.1
階層レベル3の項目乗用車 36,396 38,560 12.4 5.9
階層レベル3の項目バス・トラック 37,352 44,107 14.2 18.1
階層レベル2の項目自動車の部分品 40,948 48,469 15.6 18.4
階層レベル2の項目二輪自動車 5,134 7,198 2.3 40.2
その他 26,416 34,740 10.8 31.5
階層レベル2の項目科学光学機器 6,656 13,523 4.4 103.2
階層レベル2の項目写真用・映画用材料 67 1,451 0.5 2,065.7
合計 269,374 310,679 100.0 15.3

〔出所〕 日本の財務省貿易統計

表3-2 日本の対モロッコ主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:1,000ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
食料品 130,502 142,211 43.6 9.0
階層レベル2の項目魚介類 109,787 121,972 37.4 11.1
階層レベル2の項目野菜 538 650 0.2 20.8
階層レベル2の項目果実 10,137 13,004 4.0 28.3
原料品 38,430 34,059 10.5 △ 11.4
化学製品 37,246 56,841 17.4 52.6
階層レベル2の項目医薬品 118 67 0.0 △ 43.2
原料別製品 17,857 9,278 2.8 △ 48.0
階層レベル2の項目非鉄金属 16,589 8,069 2.5 △ 51.4
階層レベル2の項目金属製品 146 65 0.0 △ 55.5
階層レベル2の項目織物用糸・繊維製品 218 205 0.1 △ 6.0
階層レベル2の項目非金属鉱物製品 205 226 0.1 10.2
階層レベル2の項目木製品等(除家具) 373 396 0.1 6.2
一般機械 258 409 0.1 58.5
電気機器 16,919 18,763 5.8 10.9
階層レベル2の項目半導体等電子部品 5,221 4,616 1.4 △ 11.6
階層レベル3の項目IC 326 1,074 0.3 229.4
階層レベル2の項目絶縁電線・絶縁ケーブル 5,941 7,765 2.4 30.7
輸送用機器 382 4,491 1.4 1,075.7
階層レベル2の項目自動車 8 3,910 1.2 48,775.0
階層レベル2の項目自動車の部分品 368 575 0.2 56.3
その他 59,484 59,809 18.4 0.5
階層レベル2の項目衣類・同付属品 51,694 53,155 16.3 2.8
階層レベル2の項目バッグ類 4,290 4,664 1.4 8.7
合計 301,078 325,860 100.0 8.2

〔出所〕 日本の財務省貿易統計

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2022年 2023年 2024年
実質GDP成長率 (%) 1.8 3.7 3.8
1人当たりGDP (米ドル) 3,571 3,901 4,157
消費者物価上昇率 (%) 6.6 6.1 0.9
失業率 (%) 11.8 13.0 13.3
貿易収支 (100万米ドル) △ 26,490 △ 25,107 △27,171
経常収支 (100万米ドル) △ 4,622 △ 893 △1,864
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 31,025.61 34,861.27 35,278.75
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 64,116 n.a. n.a.
為替レート (1米ドルにつき、モロッコ・ディルハム、期中平均) 10.16 10.13 9.94


貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
出所
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率、貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):モロッコ高等計画委員会
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF