ガーナの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2024年のGDP成長率は5.7%を記録するも、通貨安と高インフレが継続。
  • 貿易は輸出入ともに増加。金、カカオの国際相場高騰を受け、大幅な貿易黒字を達成。
  • 対ガーナ投資額は引き続き減少し、過去5年で最低を記録。
  • 対日貿易は輸出入とも増加。輸出の約9割をカカオが占める。

公開日:2025年11月27日

マクロ経済 
GDP成長率は5.7%を記録も、通貨安と高インフレは継続

ガーナの2024年の実質GDP成長率は5.7%であった。金の取引価格高騰などの要因により、デフォルトに陥った2022年来の3%台の低成長から回復し、高成長を記録した。産業別の伸び率を見ると、農業部門はカカオがマイナス21.4%と不振で、2.8%(前年は5.9%)の成長にとどまった。カカオ価格は高騰したが、生産量の落ち込みにより輸出額が減少した。工業部門では、金が25.1%、建設が9.6%の高い伸びを記録し、7.5%(マイナス1.7%)の成長を牽引した。サービス業部門では情報・通信が15.8%、教育が44.5%と好調で、5.7%(5.7%)の成長となった。

2024年も引き続き通貨安と高インフレが課題だった。通貨ガーナセディ(以下セディ)は2024年を通じて対ドルで下落を続け、ガーナ中央銀行(以下、中銀)が発表する月平均の対ドルのインターバンクレートは2024年1月の11.9344セディから12月には14.7805セディとなり、23.8%下落した。

セディ安は、燃料や原料を多く輸入しているガーナにとって物価への影響も大きく、2024年12月時点の物価上昇率は前年同月比23.8%を記録した。2024年を通じて前年同月比で20%を下回った月は無く、中銀発表の目標値である8%(±2%)とは程遠い数字であった。分野別では特に、「食品およびアルコールを除く飲料」が27.8%、「家賃・水道光熱費・燃料」が26.3%と高騰し、家計の負担となっている。

ガーナは2022年のデフォルト後、2023年5月に承認されたIMFの融資プログラム(3年間で約30億ドルを供与)を順調に実施している。2024年には合計で約13億8,500万ドルの融資が実行された。債務の再編も進み、ユーロ債に関しては90%以上の再編が完了した。債務の対GDP比率も2023年末の72.6%から2024年末には61.8%に改善している。

貿易 
貿易黒字は大幅増、金の輸出が急増

中銀の年次報告書によると、2024年の貿易は輸出入ともに増加した。輸出額は204億9,130万ドルで前年比22.7%増、輸入額は153億9,150万ドルで9.9%増だった。この結果、貿易黒字は50億9,980万ドルとなり、2023年の26億9,450万ドルから89.3%増と大幅に拡大した。

最大の輸出品目である金は116億4,130万ドル(構成比56.8%)で前年比53.2%増の大幅増となり、以下、原油は38億6,820万ドル(18.9%)で0.8%増、カカオおよび製品は19億3,840万ドル(9.5%)で9.9%減だった。上位3品目で輸出総額の85.1%を占めている。

ガーナ統計局の貿易レポートで主要輸出先の構成を見ると、アラブ首長国連邦(UAE) が前年のスイスを抜いて首位(構成比20.4%)、続いてスイス(20.2%)、南アフリカ共和国(以下、南ア)(12.2%)の順となった。主要品目別に輸出先をみると、金はスイス(構成比36.5%)とUAE(36.5%)が同率で並び、南ア(18.0%)が続いた。鉱物性燃料および石油は中国(30.8%)、カナダ(15.9%)、南ア(12.0%)が上位を占めた。カカオ豆および製品はオランダ(29.3%)、米国(11.5%)、マレーシア(7.6%)、スペイン(7.5%)に続き、日本(4.7%)は5番目であった。

中銀報告書で輸入を品目別にみると、石油・ガスが前年比3.5%増の46億3,340万ドルで最大(構成比30.1%)だった。石油・ガス以外は、ブルドーザーやセメント原料など小口の製品である。

前述の統計局レポートによれば、輸入相手国の上位3カ国は中国(構成比22.7%)、UAE(8.8%)、英国(7.6%)だった。

なお、アフリカ域内貿易をみると、域内輸出は全体の20.2%を占めた。輸出先上位は南ア(アフリカ内構成比60.5%)が最大で、ブルキナファソ(12.4%)、コートジボワール(6.6%)が続く。アフリカ域内からの輸入は全体の11.0%を占め、上位相手国は南ア(19.0%)、エジプト(15.3%)、ナイジェリア(15.0%)だった。

対内直接投資 
対内直接投資額は前年に続き減少、過去5年で最低水準

ガーナ投資促進センター(GIPC)によると、2024年の対内直接投資件数は140件、総投資額は6億5,172万ドルだった。このうち、外国からの直接投資額(FDI)は6億1,761万ドル、外資との合弁を通じたガーナ企業の国内投資額は3,411万ドルとなっている。直接投資件数は前年の122件から増えた一方、FDIに限った投資金額は前年に続き4.9%減少し、過去5年間で最低水準となった。主な要因としては、デフォルトに伴う信用格付けの引き下げによる投資先としての敬遠や、現地通貨セディ安基調にともなう為替リスクの高まりが挙げられる。

投資件数140件のうち、外国企業単独のプロジェクト数は107件(総額3億4,165万ドル)、ガーナ企業と外国企業による合弁事業のプロジェクト数は33件(3億1,007万ドル)(注)であった。セクター別では、製造業(66件)、サービス業(40件)、貿易業(24件)、観光業(4件)、農業(3件)、建設業(2件)、金額ベースでは、サービス業(2億8156万ドル)、製造業(2億2,062万ドル)の順となる。国別に見ると、外国からの直接投資件数は、1位中国(49件)、2位インド(12件)、3位米国(8件)が上位を占め、投資金額では、1位オランダ(2億6,553万ドル)、2位エジプト(9,601万ドル)、3位スペイン(7,641万ドル)となる。このうち、オランダの主なプロジェクトはタコラディ港湾開発・運営事業、エジプトの主なプロジェクトはグラスファイバー製造工場設立が挙げられる。

(注)
合弁事業の出資総額3億1,007万ドルの内訳は、ガーナ資本3,411万ドル、外国資本2億7,596万ドル

対日関係 
日本の輸入はカカオ豆を中心に大幅増、輸出も輸送用機器が好調

日本の財務省貿易統計(通関ベース)によると、日本のガーナからの輸入は前年比51.2%増の2億1,534万ドルであった。輸入額全体の91.1%はカカオ豆が大半を占める食料品であり、前年比69.0%増の1億9,621万ドルであった。カカオ豆の輸入量は前年の3万1,231トンから2024年は2万2,894トンと大幅に減少しているが、カカオ豆の取引価格の高騰で、輸入額は増加した。

日本の対ガーナ輸出は、前年比19.1%増の1億2,054万ドルであった。最大の輸送用機器(構成比41.8%)が好調で47.9%増の5,040万ドルだった。このうち乗用車は68.9%の増加、二輪自動車も21.2%の増加を記録した。しかし、その他の品目では不振が目立ち、2位の原料別製品(20.5%)は13.1%減少した。特に鉄鋼の全減、ゴム製品の8.2%減が影響した。

表1-1 日本の対ガーナ主要品目別輸出(FOB) [通関ベース](単位:1,000ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
輸送用機器 34,066 50,400 41.8 47.9
階層レベル2の項目自動車 26,315 41,145 34.1 56.4
階層レベル3の項目乗用車 18,243 30,814 25.6 68.9
階層レベル3の項目バス・トラック 8,051 10,330 8.6 28.3
階層レベル2の項目自動車の部分品 1,078 1,134 0.9 5.2
階層レベル2の項目二輪自動車 1,203 1,458 1.2 21.2
原料別製品 28,447 24,722 20.5 △ 13.1
階層レベル2の項目鉄鋼 5,081 0 0.0 全減
階層レベル2の項目金属製品 829 349 0.3 △ 57.9
階層レベル2の項目ゴム製品 22,364 20,531 17.0 △ 8.2
一般機械 13,650 16,862 14.0 23.5
階層レベル2の項目原動機 5,680 6,800 5.6 19.7
階層レベル2の項目電算機類(含周辺機器) 200 114 0.1 △ 43.0
階層レベル2の項目ポンプ・遠心分離機 1,090 2,194 1.8 101.3
階層レベル2の項目建設用・鉱山用機械 5,772 6,412 5.3 11.1
階層レベル2の項目荷役機械 139 147 0.1 5.8
原料品 9,887 8,913 7.4 △ 9.9
化学製品 8,274 12,560 10.4 51.8
階層レベル2の項目有機化合物 532 1,445 1.2 171.6
階層レベル2の項目医薬品 0 0 0.0
階層レベル2の項目プラスチック 309 3,212 2.7 939.5
電気機器 2,827 2,681 2.2 △ 5.2
階層レベル2の項目重電機器 1,197 1,925 1.6 60.8
階層レベル2の項目通信機 711 3 0.0 △ 99.6
階層レベル2の項目電気計測機器 162 63 0.1 △ 61.1
階層レベル2の項目電気回路等の機器 164 303 0.3 84.8
食料品 538 1,413 1.2 162.6
合計(その他含む) 101,189 120,536 100.0 19.1

〔出所〕 財務省「貿易統計」(通関ベース)を基に作成

表1-2 日本の対ガーナ主要品目別輸入(CIF) [通関ベース](単位:1,000ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
食料品 116,102 196,212 91.1 69.0
階層レベル2の項目カカオ豆およびその加工品 115,054 195,229 90.7 69.7
階層レベル2の項目魚介類 616 419 0.2 △ 32.0
階層レベル2の項目野菜 10 8 0.0 △ 20.0
階層レベル2の項目果実 71 54 0.0 △ 23.9
原料別製品 16,048 6,709 3.1 △ 58.2
階層レベル2の項目非鉄金属 15,984 6,661 3.1 △ 58.3
階層レベル2の項目織物用糸・繊維製品 56 45 0.0 △ 19.6
原料品 4,301 8,804 4.1 104.7
階層レベル2の項目木材 441 556 0.3 26.1
電気機器 2,815 2,338 1.1 △ 16.9
階層レベル2の項目重電機器 3 0 0.0 全減
衣料品 3,175 1,265 0.6 △ 60.2
階層レベル2の項目衣類・同付属品 15 25 0.0 66.7
階層レベル2の項目バッグ類 48 37 0.0 △ 22.9
合計(その他含む) 142,449 215,339 100.0 51.2

〔出所〕 財務省「貿易統計」(通関ベース)を基に作成

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2022年 2023年 2024年
実質GDP成長率 (%) 3.8 3.1 5.7
1人当たりGDP (米ドル) 2,229.9 2,383.9 2,405.8
消費者物価上昇率 (%、期末) 54.1 23.2 23.8
失業率 (%、第4四半期) 11.3 14.0 13.1
貿易収支 (100万米ドル) 2,654.7 2,694.5 5,099.8
経常収支 (100万米ドル) △ 1,740.6 1,407.1 3,647.5
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 6,252.7 5,923.0 8,982.5
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 29,185 30,137 28,300
為替レート (1米ドルにつき、ガーナセディ、期末レート) 8.58 11.88 14.70


貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
出所
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、貿易収支、経常収支、外貨準備高(グロス)、対外債務残高(グロス)、為替レート:ガーナ中央銀行
1人当たりGDP:IMF
失業率:ガーナ統計局