エチオピアの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 外国為替制度改革が進展、消費者物価上昇率は26.6%に減速。
  • 地方では武力衝突が継続し、治安状況は依然として不安定。
  • 輸出は増加に転じるも、輸入の伸びが上回り、大幅な貿易赤字が続く。
  • 対日貿易は輸出入ともに前年から1割超増加。日本側の入超が継続。

公開日:2026年1月30日

マクロ経済 
実質GDP成長率は8.1%も、地方の治安は改善せず

エチオピア国立銀行(NBE、中央銀行)は、同国の2023/2024年度(2023年7月8日~2024年7月7日)の実質GDP成長率を8.1%と発表した。産業部門別では、農業(7.0%)やサービス業(7.7%)、工業(9.2%)が高い伸びを示した。工業については、製造業部門に加え、道路や住宅の建設、ナイル川上流のグランドエチオピアルネッサンスダム(GERD)建設(2025年7月完工、9月操業開始)など、建設部門が成長を牽引した。

また、消費者物価指数(CPI)上昇率は前年度の32.5%から2023/2024年度には26.6%へと減速した。衣類・履物(14.6%)、家具・家庭用品(22.2%)、レクリエーション・文化(0.3%)など、主に非食料品(24.4%)の価格上昇圧力が緩和された。一方、食料品(28.1%)では、魚介類(マイナス8.7%)、油脂類(3.0%)、果物(17.4%)の上昇率が前年度から低下したものの、主食のパン・穀物(38.5%)はエチオピア通貨切り下げによる輸入価格の上昇、国内紛争でのサプライチェーン断絶による供給不足などで依然として高い上昇率となった。

2年続いた北部紛争は2022年11月、エチオピア政府とティグライ人民解放戦線(TPLF)との間で停戦合意に至ったものの、その後も国内の治安は不安定な状況が続いている。アムハラ州では2023年8月4日、武装勢力と治安部隊の衝突を受け、連邦政府が同州全域に非常事態宣言を発出し、オロミア州でも同様の衝突が断続的に発生している。さらにティグライ州では2025年3月11日以降、TPLF内部の派閥間で政治的緊張が高まり、議長派による自治体庁舎の占拠や職員の拉致などがメケレ市を含む複数地域で発生している。こうした状況により、国内での移動や活動は依然として大きな制約を受けており、ビジネス環境にも影響を与えている。

政府は2023年12月、2024年末に償還を迎える10億ドルの国債について利払いを履行しなかったため、債務不履行(デフォルト)に陥った。デフォルトに先立ち、2023年11月には公式債権者委員会(OCC)を通じて2国間債務の一時返済停止の合意が発表されていた。2024年7月29日、IMFはエチオピアに対し、今後4年間で34億ドルの資金支援を行うことを発表した。これに合わせて、同日にエチオピア国立銀行(NBE)もプレスリリースを行い、外国為替制度の変更や政府による外貨保有ルールの撤廃、2022年10月より実施されてきた38品目の輸入時のL/C発行停止措置撤廃、非銀行系の外貨両替所の導入など、外貨規制の大幅な緩和を発表した。これを受け、それまで管理変動相場制の下、1ドル=57ブル程度で維持されていた為替レートは直後に約30%下落し、1カ月後の8月末には約50%下落して110ブル前後となった。その後もブルの下落は止まらず、2025年12月時点で、為替レートは1ドル=150ブル台にある。外貨準備高(輸入月数単位)も深刻な状況が続いている。IMFによると、2021/2022年度は0.8カ月分、2022/2023年度は0.5カ月分、2023/2024年度は0.7カ月分と、極めて低い水準で推移している。

IMF融資の進捗としては、経済改革の進展が評価され、2024年10月18日に中期与信制度である拡大クレジットファシリティー(ECF)の第1回レビューが完了し、3億4,070万ドルの追加融資が承認された。さらに、2025年7月2日に第3回レビューが完了し、2億6,230万ドルの追加融資が承認、12月10日には第4回レビューについて事務レベルで合意に達し、理事会承認後に2億6,100万ドルの追加融資が実行される見通しだ。

貿易 
輸出の伸びを上回る輸入増で、貿易赤字は拡大

NBEによると、2023/2024年度の貿易は、輸出が37億9,870万ドル(前年度比4.8%増)、輸入が184億4,110万ドル(7.5%増)となった。貿易赤字は146億ドルに拡大したものの、GDP比では7.0%に縮小した(前年度は8.3%)。

輸出を品目別に見ると、最大のコーヒー豆は、輸出価格が前年度比で13.7%下落したものの、輸出量が23.7%増加したため、金額では6.8%増の14億3,080万ドルとなった。金は2.1倍の4億860万ドルと急増した。これは輸出量が21.8%増、輸出価格が70.2%上昇したことによる。このほか、油糧種子は29.2%増の3億3,320万ドル、電力も36.0%増の1億3,900万ドルと好調だった。一方、コーヒー豆に次ぐ花きは17.2%減の4億6,990万ドルと不振だった。輸出を国別に見ると、サウジアラビア(3億5,638万ドル、前年度比9.1%増)が最大の相手国である。次いでオランダ(3億3,042万ドル、16.9%減)、米国(2億6,551万ドル、16.3%減)、アラブ首長国連邦(UAE)(2億2,229万ドル、11.4%増)、ドイツ(1億6,609万ドル、18.2%減)などが主要な輸出先となっている。

品目別の輸入は、資本財が前年度比48.4%増の56億3,640万ドルと大幅に増加した。これは輸送機器(66.6%増)と産業資本財(46.4%増)の輸入増加によるものだ。半製品も16.7%増の38億230万ドルで、うち肥料が42.8%増の13億1,530万ドルとなった。一方、消費財は12.9%減の51億4,020万ドル、燃料は9.0%減の36億870万ドルと減少した。国別では中国(45億8,488万ドル、前年度比27.5%増)が引き続き最大の輸入相手国で、UAE(17億3,426万ドル、20.6%増)、サウジアラビア(11億8,882万ドル、18.2%減)、米国(6億7,462万ドル、36.4%減)、英国(5億1,045万ドル、2.6倍)が続く。

対内直接投資 
投資環境整備と大型案件が進行

2024年7月の外国為替制度改革を機に、エチオピアの投資環境改善に向けた取り組みが進展している。改革には、外国企業によるエチオピア証券取引所への参加許可、特別経済区域での外貨保有規制の緩和措置、外貨建て口座の開設要件緩和などが含まれる。さらに、2024年12月に新銀行業務法が可決され、2025年6月には外資銀行参入の具体的要件を定めた指針が発効した。外資の持ち分は49%以内に制限されるものの、最低資本金50億ブル(約53億円)で外資銀行の子会社設立や支店開設が可能となった。

投資環境整備が進む中、アフリカ域内からの大型投資が具体化している。2025年8月、エチオピア・インベストメント・ホールディングス(EIH)とナイジェリアのダンゴテ・グループは、投資総額25億ドルの尿素肥料工場建設に関する協定に署名した。完成すれば年間最大300万トンの生産能力を持つ世界最大級の肥料工場が稼働する。また、政府は2024年1月にガソリン・ディーゼル車の輸入を全面禁止し、電気自動車(EV)への移行を推進している。年間60億ユーロを超える燃料輸入費の削減と、再生可能エネルギーの活用を目指しており、EV輸入・国内製造への税制優遇措置の導入やEV製造業者の誘致と取り組んでいる。

通信分野では、ケニアの通信大手サファリコムが2022年からエチオピアで事業展開するサファリコム・エチオピアのユーザー数が、2025年7月までに1,000万人を突破した。同社には住友商事が出資している。エチオピアの通信市場では、国営のエチオテレコムが2024/2025年度上半期(2024年7月~12月)時点で加入者数8,050万人を擁している。

インフラ面では、2025年7月、ナイル川上流のグランドエチオピアルネッサンスダムが完工し、9月に操業を開始した。設備容量6,450メガワット(MW)、総工費50億ドル規模の同ダムの稼働により、エチオピアはケニア経由でタンザニアへの送電を試験開始(200MW)するなど、電力輸出のさらなる拡大を進めている。

また、エチオピア航空が主導するビショフツ国際空港プロジェクトも進行中だ。首都アディスアベバから南西約40キロメートルに位置する同空港は、第1期工事(2030年完成予定、投資額約125億ドル)で年間6,000万人の旅客処理能力を保有し、最終的には年間1億1,000万人を処理するアフリカ最大の空港となる計画だ。

対日関係 
日本の対エチオピア貿易は輸出入ともに前年から増加

日本の財務省貿易統計に基づくグローバル・トレード・アトラス(Global Trade Atlas、GTA)によると、2024年の日本の対エチオピア貿易(通関ベース)は、輸出が前年比11.7%増の5,169万ドル、輸入が14.2%増の1億2,997万ドルとなり、ともに増加に転じた。貿易収支は7年連続で日本の入超(輸入超過)となった。

輸出は、エチオピアの好調な内需、特に設備投資需要の回復に支えられた。貨物自動車が前年比2.1倍の1,451万ドルと大幅に増加し、全体の28.1%を占めた。バイクも39.6%増の573万ドル、乗用車も32.1%増の546万ドルと、自動車関連品目が軒並み好調だった。また、ゴム製空気タイヤが前年の41万ドルから7.8倍の324万ドル、自動車部品が45.0%増の285万ドルと、自動車分野の周辺品目も急増した。その他、航空機部品が47.2%増の267万ドル、診断用試薬が15.8%増の109万ドルと伸びている。

輸入を見ると、最大のコーヒー豆が前年比14.6%増の1億582万ドルと増加し、全体の81.4%を占めた。単価は下がったものの、輸入量が約3割増となったことで金額が伸びた。コーヒー以外の品目ではゴマを主とする油糧種子が79.5%増の1,686万ドルと大幅に増加した。日本にとりエチオピアは、コーヒー豆で世界5位、ゴマで7位の調達先(2024年)となっている。

表1-1 日本の対エチオピア主要品目別輸出(FOB)【通関ベース】(単位:1,000ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
貨物自動車 6,973 14,511 28.1 108.1
バイク 4,102 5,727 11.1 39.6
乗用車 4,128 5,455 10.6 32.1
ゴム製の空気タイヤ 413 3,244 6.3 684.8
自動車部品 1,964 2,849 5.5 45.0
航空機部品 1,811 2,665 5.2 47.2
建設機械 3,138 1,972 3.8 △ 37.1
殺虫剤 4,656 1,192 2.3 △ 74.4
鉱物処理機械 1,188 2.3 全増
診断用試薬 944 1,093 2.1 15.8
合計(その他含む) 46,279 51,685 100.0 11.7

〔出所〕 Global Trade Atlas

表1-2 日本の対エチオピア主要品目別輸入(CIF)【通関ベース】(単位:1,000ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
コーヒー豆 92,328 105,817 81.4 14.6
油糧種子(主にゴマ) 9,393 16,857 13.0 79.5
植物の葉・枝 4,559 2,732 2.1 △ 40.1
花き 3,559 2,689 2.1 △ 24.4
挿穂、接ぎ穂 776 736 0.6 △ 5.1
蜜蝋 444 286 0.2 △ 35.6
貴石・半貴石 403 243 0.2 △ 39.6
かばん・袋物 72 92 0.1 26.6
収集品・標本 97 88 0.1 △ 9.5
男子用ニットシャツ 54 0.0 全増
合計(その他含む) 113,825 129,969 100.0 14.2

〔出所〕 Global Trade Atlas

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2021/22年度 2022/23年度 2023/24年度
実質GDP成長率 (%) 6.1 7.2 8.1
1人当たりGDP (米ドル) 1,142.9 1,511.4 1,310.2
消費者物価上昇率 (%) 33.8 32.5 26.6
失業率 (%) n.a. n.a. n.a.
貿易収支 (100万米ドル) △ 14,027 △ 13,524 △ 14,642
経常収支 (100万米ドル) △ 5,145 △ 4,673 △ 5,917
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 1,192 2,028 3,784
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 27,953 28,249 28,795
為替レート (1米ドルにつき、エチオピアブル、期中平均) 48.57 53.28 55.96


年度はエチオピア財政年度(7月8日~翌7月7日)。1人当たりGDP、為替レートは暦年。失業率は未公表。貿易収支:サービスを除く財のみ。
出所
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス)、為替レート:エチオピア国立銀行2023/24年報
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス):IMF