見本市レポート メゾン・エ・オブジェ・パリ2015年1月展

20周年を迎えた世界最高峰のインテリア&デザイン見本市

ジェトロ参加報告

フランス・パリ
2015年1月23日(金曜)~27日(火曜)

メゾン・エ・オブジェ・パリ2015年1月展

世界最高峰のインテリア・デザインの総合見本市「メゾン・エ・オブジェ」が2015年1月23日~27日にフランス・パリにて開催された。同見本市は毎年1月と9月に開催され、今年で20周年を迎える。ジェトロは11年目の参加となった今回も、海外での販路開拓を目指す日本企業39社・団体の出展を支援した。そのうち13社は初出展であったが、仏大手百貨店や有名ブランドをはじめとする多数のバイヤーから受注するなど高い成果を上げ、会期中の成約金額(見込含む)は1億6,000万円近くに上った。メゾン・エ・オブジェは華やかなイメージをもつ「インテリア業界のパリコレ」と言われて久しいが、有用な商談の場でもあり、成果をあげるため、出展に際しては相応の準備が求められる。

デザインで「魅せる」見本市

欧州で開催されるインテリア・デザイン関連の見本市は複数あり、新商品の発表の場というだけでなく、商談の場として積極的に活用されている。メゾン・エ・オブジェ以外にもアンビエンテ(ドイツ・フランクフルト、毎年2月開催)やホーミ(旧称マチェフ、イタリア・ミラノ、毎年1月・9月開催)等が挙げられる。国際性が高いことや、調達決定権のあるバイヤーが来場することは、各見本市に共通する点であるが、メゾン・エ・オブジェはよりデザイン性を重視し、空間全体でブランドの世界観を「見せる/魅せる」ことにこだわりのある見本市であるといえる。来場するバイヤーは百貨店、セレクトショップ、ミュージアムショップ、ファッションブランド、レストランまで多岐にわたる。主催者発表によると、最も多いのは小売店で、今回は78,200人の来場者のうち34%を占めた。最近は主催者の積極的な誘致によって、建築家やホテル・レストラン等商業施設向け事業者の来場も多く、今回は来場者の32%を占めた。ジェトロが支援した日本企業からは、仏大手百貨店や有名ブランド、ミュージアムショップと成約したという報告の他、ホテル等の内装材として受注の見込がついたという報告が寄せられた。内装材等は商談の進捗がプロジェクトの計画次第のためすぐには成約に結びつかないことも多いが、「建築家やデザイナーは予算に比較的余裕があり、他との差別化を図るため圧倒的なオリジナリティを持つ素材や技術を求めている」という印象を持った出展者もいた。
会場は商材や特性により複数のホールに分かれている。具体的には、ホール1はエスニックな要素のあるインテリア装飾品、ホール2は寝具やタオル等のテキスタイル、ホール3はキッチン・テーブルウェア、ホール4・5A・6はインテリア雑貨やギフト小物と続き、ホール8は特にデザイン性に優れた商品、といった具合だ。それぞれのホールにより来場するバイヤーが異なってくるため、出展場所は成果を左右する重要な要素であるが、これを決めるのは主催者であるSAFIだ。出展の可否、ホール、ブースの位置まで全てを主催者が指定する。希望するホールに出展するためには、申込時に主催者に提出する資料の中で、商品のデザイン性や機能性をアピールするだけでなく、自社ブランドの目指すイメージを限られた空間の中で最大限表現するブースプレゼンテーションが重要だ。出展を検討されている方は、可能であれば事前に会場を視察して雰囲気を体感し、どのホールにどのようなブースを構え、何の商品を誰に向けてどのように見せたいか、熟考を重ねた上で出展することが望ましい。なお、ジェトロが出展を支援する場合でも、本見本市ではジャパン・パビリオンとしてまとまったスペースを1ヶ所に設けるのではなく、各企業がそれぞれ異なるホールにブースを構える形式となる。

20年の節目にものづくりの原点へ回帰

メゾン・エ・オブジェ20周年記念の企画として、ホール7には、有田焼とベルナルドの洋食器を用いたインスタレーション”ESPACE teamLab”がチームラボにより演出された。プロジェクションマッピングの技術により、器をテーブル上で移動させると、そこを起点として、器の絵柄と同じ花や鳥などがテーブルや壁に映し出され模様が広がっていく。人の動きにも反応し、その瞬間にしかない絵が出来上がる。お茶や焼き菓子も提供され、未来のカフェやレストランをイメージしたという幻想的な空間は、連日多くの来場者で賑わっていた。また、今年のメゾン・エ・オブジェにおけるデザイナー・オブ・ザ・イヤーは、nendo(代表:佐藤オオキ氏)で、ホール8には特別ブース”Chocolatexture Lounge”が設置された。ブース内のインテリアだけでなくそこで販売されるチョコレートまでnendoがデザインし、チョコレート色の空間が訪れた人々を楽しませていた。どちらも大胆な発想と細部までこだわった空間設計が人々に驚きと感嘆を与え、デザイン業界における日本の存在感を示すものとなった。
メゾン・エ・オブジェでは主催者が毎回インスピレーションテーマを設定し、そのテーマに基づくトレンドブースを設置している。今年のテーマは”MAKE”で、「ネイチャー・メイド」「ヒューマン・メイド」「テクノ・メイド」の3つの切り口での展示があり、そこには「職人技の本質的な美しさと混じりけのない素材という、ものづくりの原点に立ちかえることが究極の贅沢である」というメッセージが込められていた。
今回ジェトロを通じて出展した企業の中で、特に多くの成約を獲得した商品に共通している点は、まさに今回のテーマである”MAKE”のコンセプトに合っているものが多いことであろう。例えば、精密機器組立の技術を活かした無垢材の木製ブロックを出品した企業は、会場で「グリーン・アイテナリー賞」(※)を受賞し、現地のメディアにも取り上げられ、フランス国内外のセレクトショップから教育機関まで多くの成約を獲得した。他にも、自然素材を利用した文具、木製食器、照明器具等のブースも非常に人気を集めた。これらに共通するのは、モダンなデザインで海外のライフスタイルに合っているのはもちろんのこと、天然・自然素材を利用し、人間の手が感じられる温かみがありながらも、精巧で緻密な確かな技術に裏打ちされていることだ。ただし、素材感を生かしたナチュラルな風合いとグレイッシュな配色は、もはやトレンドではなく一種のスタンダードといえるかもしれない。メゾン・エ・オブジェ会期と同時期に、パリ市内の有名セレクトショップMERCIでは”TAK - a day in Copenhagen”(TAKはデンマーク語で「ありがとう」の意味)と題して、デンマークのインテリア雑貨やキッチンウェア、食品を選りすぐった企画が行われていた。ここでも素材感や自然との共生がキーワードとして取り上げられ、メゾン・エ・オブジェのMAKEに通じる精神を感じさせた。

※「グリーン・アイテナリー賞」は、ローカルの製品、エコなデザイン、リサイクル資材、資源の最大活用、エコ・コミュニケーションをキーワードとして、審査員(メゾン・エ・オブジェのパートナープレスのジャーナリスト)が選定する。2011年より始まり、今回は3,000以上の出展者の中から9社に贈られた。

継続出展による自社ブランドの確立

自社ブースへいかにしてバイヤーに足を止めてもらい、どれだけのことを伝えられるかが展示会での成功の要になる。売りたい商品が何なのかひと目でわかるよう、展示する商品のラインナップを思い切って減らし、すっきりとしたブースレイアウトを心がけるのも一案である。また、ある出展者は「ブース内では常に自社製品の製造工程を動画で流していたため、興味を持って足を止めて商品をじっくり見てくださる方が非常に多く、商談に繋がるケースが多かった」という。このような取り組みは、送料や関税等によってどうしても価格が高くなってしまう日本の商品が、いかに優れていてその値段に見合った商品であるかということをバイヤーに実感してもらうためにも有効である。
今回初めて出展した日本企業には、様々な「出会い」による発見があったようだ。ある出展者は、「短時間で相手の情報をまとめ、需要を察知し、即座に提案できる準備、柔軟さが必要」と分析する。日本国内の展示会との違いについても実感する部分は大きく、「決定権を持つバイヤーがスピード感を持って『買いに来ている』ということを実感した。」とのコメントが多かった。一方で、米国の展示会に出展経験のある企業からは、米国に比べると欧州の展示会のほうが成約までに若干時間を要するとの声も聞かれた。しかし来場者の国際性という点では、欧州のほうがバイヤーの国籍が多様で市場の大きさを感じるという感想を持ったようだ。
欧州の高級カトラリーメーカーとのコラボレーションに成功したある出展企業の社長は、今回3回目の出展を終えて、「自社の目指す販売とブランドの確立にまた一歩近づいたと感じている。職種を問わず、自社ブースに来場するバイヤーの質が確実に向上している。出展を継続して、販路開拓・ブランドPRにさらに努めていく」と意欲的だ。一度きりの受注で終わらせず、リピートオーダーを入れてもらうことに苦慮する企業は多いが、継続出展している企業からは、確実に手ごたえを感じている様子が見られる。
メゾン・エ・オブジェへの出展自体がある種のステイタスにもなっているが、出展のみならず、そこで成果を上げるためにはしっかりとした準備が必要不可欠である。ジェトロでは、展示会の出展申込から会期終了後までの長期間にわたって、出展にかかる諸手続きだけでなく、価格設定や商談準備等についての事前相談など、初めて海外見本市に挑む企業にも役立つサポートを行っている。
メゾン・エ・オブジェはいまやパリだけでなく、アジア、アメリカにも舞台を広げている。昨年はシンガポールで「メゾン・エ・オブジェ・アジア」が始まり、ついに今年の5月には、中南米への入口でもあるマイアミで「メゾン・エ・オブジェ・アメリカ」が幕開けとなる。次回のメゾン・エ・オブジェ・パリは9月展が2015年9月4日~8日、1月展が2016年1月22日~26日の予定。

(デザイン産業課 高橋彩)

メゾン・エ・オブジェ・パリ2015年1月展
メゾン・エ・オブジェ・パリ2015年1月展
メゾン・エ・オブジェ・パリ2015年1月展
見本市データ
見本市名 メゾン・エ・オブジェ・パリ2015年1月展
(MAISON&OBJET PARIS)
開催期間 2015年1月23日(金曜)~27日(火曜)
9:30~19:00(最終日は18:00まで)
初回開催年/開催頻度 1995年/年2回(1月と9月)
次回
2015年9月展:2015年9月4日~8日
2015年1月展:2016年1月22日~26日

【以下参考】
 メゾン・エ・オブジェ・アジア(シンガポール):2015年3月10日~13日
 メゾン・エ・オブジェ・アメリカ(マイアミ):2015年5月12日~15日
 ※会期は変更する場合もあるため、必ず主催者サイトでご確認ください。
開催場所 パリ ノール・ヴィルパント見本市会場(PARIS-NORD Villepinte)
出展商品内容 インテリア全般、家具、キッチン・テーブルウェア、テキスタイル、ギフト、雑貨、文具、内装材等
出展者数 3,194社(うち、フランス国外企業55%)

ジェトロが支援した日本企業39社のカタログ(1.4MB)(1.4MB)
来場者数 7万8,200人(うち、フランス国外からの来場者51%)
http://www.maison-objet.com/en/paris/news/flash-info-mo-paris-january-2015
入場料 45ユーロまたは60ユーロ(事前申込)、70ユーロ(現地購入)
主催者 SAFI(サフィ)
住所:4, passage Roux - 75850 Paris cedex 17 - France.
TEL:+33(0)1-44-29-02-00
FAX:+33(0)1-44-29-02-01
E-mail:info@safisalons.fr
事務局連絡先 メゾン・エ・オブジェ日本オフィス
住所:東京都港区南青山5-4-6 パレロワイヤル南青山308  (株)デアイ内
Tel:03-3409-9495
Fax:03-3409-9684
E-mail:m-ojapon@deai-co.com