見本市レポート Tech In Asia Singapore 2018

月間ページビュー数1,000万以上のウェブメディアTech in Asiaが主催

ジェトロ参加報告

シンガポール
2018年5月15日(火曜)~16日(水曜)

24社がデモを行ったジャパン・パビリオン

Tech In Asia Singapore 2018が、2018年5月15日~16日、シンガポールで開催された。初めて日本政府としてカントリーパビリオンを設け、24社もの日本発スタートアップがデモブースを展開、メインステージでのピッチを行った。

成熟に向かうシンガポールのスタートアップ・シーン

シンガポールに拠点を置くハイテク系スタートアップの数は10年前と比べて約2倍に増加し、4社のユニコーンを輩出している。この事実は、シンガポールのエコシステムの成熟、その中心にいる政府のビジョン、そしてそれらをつなぐコミュニティを抜きにしては語れない。
まずエコシステムの成熟について。米調査会社スタートアップ・ゲノム社が2017年3月に発表した「グローバル・スタートアップ・エコシステム・レポート2017年版」によると、シンガポールのエコシステムは第12位とASEANでトップランクだ。例えば、同国のスタートアップが行った資金調達額(2012~2017年9月までの累計額)でみると、72億1,800万米ドルとなり、こちらもASEANでトップランク。2位インドネシア(同46億4,000万米ドル)、3位マレーシア(同13億米ドル)を大きく引き離している。
シンガポールは東南アジア最大の金融センターであり、7,000社以上の大手多国籍企業が拠点を置く。同国のビジネス環境に対する評価は元々世界的にも高く、企業誘致やビジネス環境の整備において政府が強力なリーダーシップをとってきた。このリーダーシップはスタートアップ・シーンでも多くみられる。例えば、起業間もないスタートアップに、認定投資家と共に共同投資するスキームを導入し、起業初期のスタートアップを短期間で育成するアクセラレーター・プログラムへのインセンティブも導入している。
そして、様々なエコシステムの住民をつなぐコミュニティの存在がある。その代表の一つが、アジア各国のテック系スタートアップにフォーカスしたウェブメディアであるTech In Asiaだ。同社自身も2015年に米国の名門アクセラレーターであるYコンビネーター卒業のスタートアップだ。今ではウェブメディアの月間ページビュー数は1,000万以上、スタートアップ企業データは4万社以上、そしてシンガポール、ジャカルタ、東京の3都市で毎年カンファレンスを行っており、アジア最大級のテックコミュニティとなっている。

デモブース×マッチング×ピッチ

Tech In Asia Singapore2018への来場者は4,219人だった。うちわけはスタートアップ1,130人、大企業669人、投資家215人で、国別ではシンガポール、インドネシア、マレーシアの順で多かった。
日本政府がカントリーパビリオンを設けたのは今回が初めてだ。パビリオンには合計24社もの日本発スタートアップが参加し、同イベント史上過去最大級のボリュームとなった。AI、Fintechなどのディープテックや、物流やドローンなど幅広い分野のスタートアップが1日ずつ入替りでデモブースを展開した。デモを行った日本企業からは「単独で出展する機会と比べ、JAPANの名前が前面に出て来場者に与える安心・信頼が高く、その影響でブースに立ち寄ってもらえる客が多かった」といった声もあり、1日で100人以上のコンタクトリーチを得ている企業もあった。

来場者が立ち寄りやすいデモブース

同イベントではデモブースを設けて待っているだけではない。Speed Datingというマッチングプラットフォームを活用し、事前にベンチャーキャピタル(VC)とのアポイントを取ることができる。2017年まではイベント当日に各VCのテーブルの前で並びさえすれば面談できる仕組みだったが、商談の質を高めるため今年から事前マッチング制に変更になった。事前のスライドデッキ作成の精度や、ビジネスモデルの見せ方に、より工夫が必要になったと言えるだろう。
さらに500人規模のメインステージで1時間のJAPANセッションを企画し、日本のスタートアップエコシステムや、その中心にいるスタートアップをコミュニティに強く印象づけた。Tech In Asia日本代表のデイビット・コービン氏をモデレーターに、スタートアップ、VC、そして日本政府から合計3名のパネリストが登壇し、それぞれの観点でパネルディスカッションを実施。その後パビリオンでデモブースを展開するスタートアップ4社からピッチを行い、積極的なPRを行った。

Tech In Asia主催ピッチバトルで史上初めて日本発スタートアップが優勝

Tech In Asia社が主催するアリーナ・ピッチは、アジア各国から集まる6社が競うピッチバトルだ。会期最終日夕方、メインステージで行われ最も観客が多いこの目玉イベントで、日本から選ばれた株式会社Empathが日本企業として史上初めて優勝した。同社は、音声データをもとに、「喜び」「落ち着き」「怒り」「悲しみ」といった4種類の感情をリアルタイムで分析・可視化できる感情分析AIを開発・提供している。
言うまでもなく、こういったピッチバトルはスタートアップのメディア露出と信頼度を飛躍的に向上させるものだ。ピッチはスライドデッキの作り方、話し方、英語の言い回し、時間の使い方など様々なポイントがある。そのため今回の参加24社に対しては英語ピッチのノウハウを伝えるトレーニングメニューを事前に受けられる仕組みも用意した。デモブースだけでなく、ピッチバトルの機会をぜひ活用いただきたい。

アリーナ・ピッチで優勝したEmpath社

イノベーション促進課 田中井 将人

見本市データ
見本市名 Tech In Asia Singapore 2018
開催期間 2018年5月15日(火曜)~16日(水曜)
9時00分~18時00分
初回開催年/開催頻度 2012年/年1回
開催場所 Suntec Singapore Convention & Exhibition Centre
出展商品内容 Eコマース、Fintech、SaaS、ヘルスケア、物流、ビッグデータ、AIなど
出展者数 217社(22カ国・地域)
うち日本29社(パビリオン24社+単独出展5社)
来場者数 4,219人(39カ国・地域)
入場料 Startup Pass 247USドル、General Pass 397USドル、 Investor Pass 697USドル
主催者 Tech In Asia
事務局連絡先 Tech In Asia Japan
E-mail:japan@techinasia.com