世界の見本市ビジネストレンドハイブリット開催で新たな接点を提案するBioJapan

4度目の緊急事態宣言明けにリアルとオンラインを併用したハイブリット展示会BioJapanが2021年10月13日~15日、パシフィコ横浜で開催された。オンライン展示会をリード、ナーチャリングのツールと位置付ける株式会社JTBコミュニケーションデザイン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます事業共創部トレードショー事務局の長谷川 裕久 局長にハイブリット展示会の現状とコロナ禍後の見通しなどについて伺った。

株式会社JTBコミュニケーションデザイン
事業共創部トレードショー事務局 長谷川 裕久 局長

Q1:コロナ禍を振り返って
A1:コロナ禍の展示運営が、とてもしんどかったというのが正直な感想。緊急事態宣言明けの2021年10月に、当社主催のBioJapanなどのパートナリングイベントと、6月から延期した電子機器トータルソリューション展、同時開催展として光の展示会All about Photonicsなどを開催した。2022年1月にnano tech国際ナノテクノロジー総合展・技術会議などを開催すれば、2021年度は主催・共催の展示会22本をすべて開催したことになる。
ちなみに、2020年は上半期に予定していた展示会のほとんどが中止またはオンライン開催への変更を余儀なくされた。10月開催のBioJapanなどは、出展者オリエンテッドが当社の基本だと思っているだけに、リアルを熱望される出展者やスポンサーに応えようと、リアルとオンラインを併用したハイブリット形式で開催した。ただ、BioJapanなどはグローバルイベントに近い展示会なので、渡航制限で来日できなかった海外参加者の分だけ規模を縮小せざるを得なかったのは凄く痛手だった。
また、この2年間のBioJapanなどのハイブリット展示会を通じて、海外参加者もビジネスマッチングはオンラインではなく、日本に来て、日本の展示会で、日本の企業と商談をしたいとのニーズが確実にあるのだと感じた。なぜかというと、2020年はオンラインのビジネスマッチングのオープン時間をJST(日本標準時間)に合わせていた。2021年は24時間化することでビジネスマッチングの数が増えるじゃないかと思ってやってはみたものの、結局は海外参加者同士のマッチング数がほとんどなく、海外からのビジネスマッチングのオファーのほとんどがJSTに合わせていたので、日本の中でFace to Faceでビジネスマッチングしていた数の方がやっぱり多いということになった。
BioJapan 2021展示会場

(BioJapan 2021展示会場)

BioJapan 2021パートナリング会場

(BioJapan 2021パートナリング会場)

Q2:ハイブリット開催の手応えは?
A2:手応えはあるが、結局は展示会のDX化というところに納まるのではないか。展示会の魅力って、物を見ながら、人の顔を見たり、雰囲気を感じたりしながら商談していくところにある。それをデジタルで全部対応しようというのはちょっと無理があるのではないか。特に、JTBコミュニケーションデザインはリアルコミュニケーションを軸にやっていかないと、ITプラットフォーム会社のマッチングビジネスと差別化が難しい。リアルの商談にオンラインをサポートサービスとして如何に位置づけるか。本番に行く前の前夜祭のような要素を含めることができればと思っている。
Q3:オンライン商談に対する出展企業の声は?
A3:Wi-Fiなどのインターネットの環境が悪くないですかとか、これまでとはちょっと違う方向のご指摘を出展者から受けることがある。2020年まではオンラインミーティングをしている時に回線が落ちることが多かったけど、2021年はそれが結構少なくなっている。以前は仕方がないと思っていたことが、今はストレスと感じるようになっている。それがオンライン商談参加者にも表れているのではないか。あと準備段階がないというか、リアルだと移動とかの合間にこういうことを話そうといった下打ち合わせができるが、オンラインでは続けて商談を入れてしまうのでそれができない。若干でも準備していれば、もっと良い商談が出来たのではないか。効率的に30分刻みで商談を組むのが良いのか、考えないといけないとの声もある。
Q4:海外の来場者誘致はどのように進めていくお考えか?
A4:新型コロナの新たな変異ウイルス「オミクロン株」の影響で外国人の入国が停止されたが、期限の2021年12月末で解禁されるとは考え難く、2022年1月末の状況がどうなっているかが読み難い。当社のミッションとして、日本の産業人と海外の産業人がキチンと会えるようにしていきたいので、2023年のnano techには海外の人たちが来るような施策をコロナ禍でも準備しなくてはいけないと思っている。2022年1月のnano tech については、リアル展より2か月早く2021年11月26日にオンライン展示会をオープンした。コロナ禍とDXによって、展示会の長期化と接点の取り方が変わったことを海外の人たちにも発信していきたい。出展しない、来日しなくても知ってほしい。2023年の展示会には戻ってきてほしいことを含めキチンと情報発信しなければいけないと思っている。
Q5:オンライン展示会にはどのようなことが期待されているのか?
A5:大きく分けて2つあって、一つは広報媒体としてリード(見込み顧客)の獲得、もう一つはビジネス情報取得とマッチングツールとしてナーチャリング(顧客育成)の役割を担うことが期待されている。この2つによって、じゃあ本番でお会いしましょうというパターンもあれば、オンラインだけの出展者は本番にはいらっしゃらないので、資料をダウンロードした来場者にアクセスしていただくなど、いわゆるデータマネージメントというか、幅広くマーケット情報を集めたい参加者が有効的に活用できるじゃないかと考えている。
Q6:オンライン展示会の対象となる商材は?
A6:商材によって違ってくると思うが、ITリテラシーの高い企業であることも重要であると思う。nano techは最先端技術であり、ITリテラシーの高い企業も多いのでオンライン展示会が成り立つが、業界によっては、見たり、触ったりの五感が重視される商材だと、「オンラインなんかやらんでいい」という社長も実際にいるので、そうするとオンラインというよりもリアルが中心になる。でも、そこは諦めちゃいけないと思っていて、分かりやすいマニュアルを作ったり、電話口で操作方法を説明したりして、オンラインもちょっとやってみようと思ってもらえるようにお節介を焼いている。来場者データとか少しでも主催者に集まって、次の集客促進になれば良いので、出展者と一緒にやっていかなければいけないと思っている。
Q7:来場者にとって最適なオンライン展示会の規模はあるのか?
A7:来場者が見ることができる数というのは1日に10~20社程度ではないか。あと「ながら化」というか、セミナーで特定の出展者が紹介されると、空き時間にじゃあ見てみようかなとなる。ちょっと覗いて、すぐに離脱していくのがオンラインの特徴なので、2秒でも足踏みしたデータがあれば、興味あるのかなというのが分かって、ビジネスに繋げるキッカケを持てるのではないかと思う。
Q8:出展企業の商談の仕方、考え方に変化はあるか?
A8:一番大きな変化は、展示会に出展しないで、プライベートショーでマーケットを発掘しようとする企業が多くなったこと。もう一つが、来場者数は少なくても、ビジネスに繋がる商談ができれば良いと言ってくださる出展者、数よりも質を重視する出展者が多くなったことではないか。他方、10月のBioJapanの会場で顧客や関係者との再会を喜ぶ出展者の姿をいくつも見かけた。通路を歩いていても、やあ!やあ!といった挨拶が聞こえ、リアルでお会いする場所を提供するというのは、展示会会社として必要なのだと感じている。出展者が展示会を定期的な接点やコミュニケーションの場所と考えてくれるのであれば、我々も本望だし、出展者にとっても良いのではないか。これは是非伝えていきたいと思っている。
Q9:2022年の予測は?
A9:コロナとの付き合い方も分かってきて、皆さん割り切って臨機応変にビジネスをやっていくのではないか。今後、緊急事態宣言が出なければ、定期開催の展示会数とか、参加者数とかは増えてくるとみている。nano techで言えば、2019年の展示面積を100とした場合、2020年は2回に分けての開催で60、2022年が70、2023年が80、2024年から2019年並みに戻るとみている。でも、以前のように右肩上がりの時代が続くとも言い切れず、そこにジレンマがある。展示会のジャンボ機を飛ばすのか、小型中型機を飛ばし続けるのが良いのか、そこの選択が重要になってくるのではないか。
また、展示会を開催する時の基調講演とかのコンテンツがオンライン化に走ったために、大きな会場を用意してもあまり人が集まらなかったが、それは完璧に打破され、2022年からは会場に人が戻ってきてくれるのではないかとみている。当社主催の展示会のセミナーに登壇いただいた方から「オンラインの先に何百人といたけど、ビジネスに繋がる話は一切なかった。唯一あったのは、会場にいた3人のうちの1人がいろいろ問い合わせをしてきて、その会社と協業することになった。リアルの方がビジネス展開としては絶対正解なのだ」と言われたことが印象に残っている。
(市場開拓・展示事業部 主査 皆川 幸夫)

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