世界の見本市ビジネストレンド

東西の架け橋として、ユーラシアでの見本市大国を目指すトルコ

アレクサンダー・キュフネル氏
Hannover Fairs Turkey Fuarcılık A.Ş

General Manager, Mr Alexander Kuhnel
アレクサンダー・キュフネル氏

トルコの展示会ビジネスは、中東・北アフリカ諸国の政情不安や、2013年に起こった国内での反政府デモなどで厳しい状況にあった(表1参照)。しかし長期的にみると、2008年から2012年までに出展面積は22%拡大し、2014年の国際展示会件数は2008年比で135%増の188件となる見通しだ。 そこで、トルコにて、機械分野でシリーズ化された総合見本市『WIN(World of Industry)』など大型国際展示会を手がけるHannover Fairs TurkeyのGeneral Managerであるアレクサンダー・キュフネル氏に、トルコにおける見本市ビジネスに状況及び今後の展望についてインタビューした。

表1.トルコ及びイスタンブールでの展示会開催の推移(2008年および2012年~2014年)

トルコ国内 2008 2012 2013 2014
展示会件数 431 409 437 411
うち国際展示会件数(注1) 80 115 129 188
出展社数 56,758 35,352 NA NA
うち海外からの出展社数 5,265 4,459 NA NA
出展面積(平方メートル) 2,296,877 2,811,103 NA NA
うち海外からの出展社による出展面積 97,435 15,1331 NA NA
来場者数 NA 15,894,454 NA NA
うち外国人来場者数 NA 466,495 NA NA
イスタンブール 2008 2012 2013 2014
展示会件数 199 186 229 241
出展社数 33,444 37,743 NA NA
うち海外からの
出展社数
3,941 NA NA NA
出展面積(平方メートル) 1,355,130 1,659,939 NA NA
うち海外からの出展社による出展面積 82,335 128,624 NA NA
来場者数 NA 5,860,778 NA NA
うち外国人来場者数 NA 361,011 NA NA

出所:トルコ商工会議所連合(TOBB)

(注1)国際展示会の定義は、TOBBの規定によると過去7年間で3回以上、同じ展示会主催者によって同じ展示会名、セクターで展示会が行われており、かつスタンド・エリアの10%以上、もしくは来場者数の2.5%、展示企業の15%が外国企業である場合。
(注2)2014年の数値は予定を含む。

トルコの国際展示会の開催件数(2008年~2014年)

Q1.Hannover Fairs Turkeyの事業概要、及びトルコ市場参入の経緯について教えてほしい。
A1. 『ハノーバー・トルコ社Hannover Fairs Turkey Fuarcılık A.Ş)は、ドイツメッセ社(Deutsche Messe)により、その100%出資の子会社(subsidiary)として、1996年にトルコに設立された。参入当初は、トルコ市場での経験が少なかったため、4つの現地企業と50%ずつ出資し、合弁会社を設立した(表3参照)。その後投資を拡大に伴い、出資比率を引き上げ、現在はトルコ市場にて15年の経験を有し年間18件の展示会事業を運営している。』

表3.Hannover Messeのトルコへの投資動向

ドイツ側企業 現地での合弁企業 参入時の出資比率 現在の出資比率
Hannover Messe ANKIROS Fuarcılık 50%/50% 65%/35%
Bilişim 50%/50% 90%/10%
SODEX 50%/50% 100% HM
Interpro 50%/50% 100% HM

Hannover Fairs Turkey Fuarcılık A.Şへのジェトロ聴き取りによる

(注1)出資比率は、左からドイツ側で右側が現地企業によるもの。
(注2)「HM」は、Hannover Messeの略。「100%HM」はHM社100%出資となったことを意味する。

Q2.近年のトルコでの見本市ビジネスはどのような状況か?
A2. 『トルコの見本市市場は、短期的には中東・北アフリカ諸国といった周辺諸国の情勢不安や、国内での反政府デモ、そして自国通貨リラ安などにより大きな打撃をうけた。しかし、弊社はトルコ市場をブリックス(BRICS)と並ぶ重要市場として位置付けている。
その最大の理由は、トルコ政府が2023年の共和国建国100周年までに、世界第10位の経済規模、及び年間輸出額5,000億ドルという目標を打ち立て、そのための様々な施策や支援策を行っているためである。機械分野の輸出目標額は約200億ドルで、トルコ総合機械見本市WINはこの目標達成のための重要なプラットフォームとしての役割を担っていると自負している。』

Q3.トルコで見本市を開催する利点、特色やPRポイントは何か?
A3. 『最大の特徴としては、地理的優位性およびそれを活かした地域総括機能が挙げられよう。我々がトルコでターゲットとしているのは、中東、北アフリカといった周辺諸国だ。これらの国は欧州への渡航ビザ取得が難しい一方、トルコ政府との友好外交政策によりトルコへのビザ無し渡航が可能となっている国が多い。その結果、トルコはドイツや中国で開催される見本市とは、異なった来場者ポートフォリオを形成するにいたっている。例えばWIN来場者の90%が、「イスタンブール以外では、機械関連の見本市には参加していない」と回答しており、トルコの見本市はこういった国へのゲートウェイとして大変有意義である。アクセス面でも、現在イスタンブールには2つの国際空港があるが、今後世界最大規模の第3空港を建設する計画がある。これが実現すれば、トルコへのアクセスが向上し、周辺諸国からの来場者増加にもつながるだろう。』

Q4.貴社の立場から、今後のトルコでの見本市・展示会ビジネスのトレンドや有望分野などを教えていただきたい。
A4. 『第一に、トルコの機械分野は向こう10年間、政府の政策や支援による成長が期待される有望市場と言える。例として、WIN(World Of Industry)見本市は過去7年間で展示会面積が2倍に、来場者数は2倍以上へ急増し、伸長する需要に対するスペース不足から、展示会を2回に分けて開催するまでに至っている。第二はエネルギー分野で、産業発展を支える上で重要な基盤であり、今後成長余地が大きい分野である。
第三はIT・情報技術・テレコミュニケーションなどが有望分野と言える。また、教育レベルの高い豊富な若年人口は、産業を支える労働者としてのみならず、消費者としての可能性も秘めている。過去10年間での所得レベルは3倍近く増加しており、トルコの小売市場も、今後有望分野となるだろう。』

Q5.日本企業がトルコで、Winのような機械分野の総合見本市に出展参加する場合、トルコや海外出展企業・来場企業とどのような形でビジネス関係を構築できるか?可能な範囲で、出展(来場含む)に際してのワンポイントアドバイスを頂きたい。
A5. 『最も重要なのは、面談したいトルコ企業をリストアップし、招待状を送るといった事前準備や、通訳アレンジが挙げられる。展示会会社としてもプロモーション、マーケティングを行っているが、自身が商談したい企業と事前にコンタクトすることは重要で、当社によるアンケート結果によると75%の来場者が招待状を受けて来場している。企業・製品情報を載せるパンフレットも、できればトルコ語・英語の併記が望ましい。
また、期間中においては、トルコ式ビジネススタイルを理解することも大切になる。トルコ人ビジネスマンはまずお茶やクッキーなどを相手に勧め、家族やサッカーなど身近な話題から互いの距離を縮め、その後商談に入るのが一般的。あせらず時間をかけて、信頼関係を築く必要がある。トルコ語の挨拶を、最低限10個ほど覚えるなども、効果的だろう。イスラム教の国なので、もてなしの際には酒類を避けるなどの宗教的配慮も必要となろう。この他、来場者を引き付けるための工夫としては、緑茶をサービスするなど日本文化的な要素を取り入れると好いのでは。いずれにせよ、一過性の付き合いではなく、あせらず時間をかけた信頼関係を築く必要があろう。』

(聞き手・執筆・取りまとめ:
ジェトロ・イスタンブール事務所 淺川 真帆、エミネ・ギョンジュ)

主催者様へ

J-messeの「見本市・展示会データベース」に見本市の情報を登録できます。 登録は無料! ぜひご登録いただき、PRにご活用ください。

お問い合わせ

個別の見本市・展示会に関する詳細情報は、各主催者への直接のお問い合わせをお願いいたします。

※お問い合わせいただく前に「よくある質問(FAQ)」および「見本市・展示会情報のご利用について」をご覧ください。