古澤醸造合名会社

Sakeとは違う日本の焼酎文化を地道に世界に発信しながら、焼酎の価値を高めていきたい

明治25年(1892年)の創業以来、県内唯一の土蔵造りの醸造蔵と、こうじ室でこうじぶたを使い、気候、風土に生きた手づくりにこだわった本格焼酎を製造・販売。古老の味の代表作「八重桜」は熊本国税局酒類鑑評会に12年連続入賞している。

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展開国・地域:
・2020年度 フランス、米国
・2021年度 フランス
事業内容:
本格焼酎「八重桜」、「ひとり歩き」などの製造・販売。

代表社員 古澤 昌子 氏

事前の準備もせずに、焼酎を知らない国へ向かう

当社は、南国の太陽が照らす日南市で創業以来、本格焼酎を製造・販売してきました。海外展開が本格化したのは2016年。当時、台湾には輸出していたものの、県内所属団体によるニューヨークでのイベント出展が決まり、米国への輸出に挑戦することになりました。焼酎輸出を目的とした県内の7つの蔵元で発足した「7人侍」に加わり、3年計画で現地バイヤーの発掘を目標に臨むことになりました。「行けばなんとかなる」と事前に市場調査も行わずに臨みましたが、焼酎を知らない相手であることを前提とした仕込みや、ラベル登録への理解など、事前の準備が不足しておりました。また、コストや異なる商慣習など現地に行って初めて知ることばかりで戸惑いもありました。3年連続でイベントに参加していく中、7蔵のうち当社だけ現地バイヤーが見つからず、ジェトロからハンズオン支援を受けていた同業の蔵元からの紹介で、同事業に2018年度に申し込みました。

手作りにこだわった丁寧な作りがバイヤーに評価された

海外における日本酒と焼酎の認知度の格差を痛感

日本酒は「sake」という言葉もあるように、海外市場では理解が進んでいるものの、一方で焼酎は名前さえ知られていないのが現状です。日本酒と蒸留酒との違いも含めて、地道に焼酎の認知を広げていく必要性を痛感しました。また、単式蒸留では焼酎に色がつかないため、海外ではエイジング(熟成)が認められないとして、評価いただくまでに苦心しました。さらに日本とは異なり、米国では輸入商品でなければ無料の試飲もできないなど、法規制面での壁にも突き当たりました。さまざまな苦労と試行錯誤の末、2020年にようやく米国バイヤーとの成約に至ったときは、他の蔵元と共に喜び合いました。バイヤーとの契約に際しては、ハンズオン支援の専門家から多々アドバイスを頂戴し、当社の要望どおりの形で契約を締結できました。

米国の店頭に並ぶ様子

こだわりと柔軟に変更する部分とのバランスが大事

当社の焼酎は、「飲みやすく、味わいが他の蒸留酒と違って新鮮で個性的だ」と好評で、蔵の歴史や造りが見え、家族経営で小さい蔵ながら、手作りにこだわって良質で安定した商品を作っている点も海外バイヤーから評価されています。海外での実績は、自社のブランド力だけでなく、従業員の意識やモチベーションの面でもプラスの作用があり、当社焼酎が米国の店頭に並んでいる写真を従業員が普段目にする場所に貼って鼓舞しています。今回、米国に輸出した焼酎は、酒質に加え、ラベルにも高級感のある紙を使うなど、和をイメージしたデザインが特徴的な商品です。また蔵紹介のパンフレットも、機械的に言語を翻訳するのではなく、現地目線で一から蔵紹介を考えて作成しました。単式蒸留の文化や原料へのこだわりも含め、認知の低い焼酎は、飲み方も安定せずに評価されにくいのが課題ですが、焼酎文化を日本の食文化とともに地道に発信することで認知を広めていきたいと思います。

専門家からのポイント

米国挑戦での3年間の苦労が、古澤代表の人柄とも相まって、現地人脈構築につながり、強みである熟成酒にほれ込んだバイヤーとの長期契約に結実しました。日本国内でのアルコール消費量は頭打ちですが、世界に目を転じれば、若い世代を中心にクラフトスピリッツの需要は急増しており、その日本代表である本格焼酎の未来は明るいです。

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古澤醸造合名会社

宮崎県日南市
http://www.nichinan-yaezakura.jp/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
代表者:古澤 昌子
設立年:1892年
従業員:8名
事業内容:本格焼酎「八重桜」、「ひとり歩き」などの製造・販売。

2021年12月

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