閉じる

銀峯陶器株式会社

自社工場で一貫生産を続ける伝統工芸品「四日市萬古焼」で、土鍋を囲む団らんの時を世界に

伝統的工芸品「四日市萬古焼」などの耐熱食器を企画・生産。原料の選定から製土、釉薬の調合、成形、施釉、窯での焼き上げまで全工程を自社工場で行う。日本で一番スタンダードな土鍋と呼ばれる「花三島」土鍋は2021年に発売50年を迎える三重ブランド認定品。

三重県四日市市ウェブサイト

展開国・地域：: ・2020年度タイ、マレーシア
・2021年度米国、中国ほか
事業内容：: 陶器製品の企画・製造

常務取締役熊本貴子氏

土鍋の国内消費量が減少する中、海外輸出へ踏み切る

当社は三重県の伝統的な焼き物「四日市萬古焼」の土鍋をはじめ、耐熱食器を製造しています。国内市場の縮小に伴い、国内での土鍋の生産量が減少する中、2010年ごろから海外展開の必要性を認識していました。自社内には営業部がなく、国内販売も数軒の地元の問屋さんを通じて行っていましたが、海外販路開拓は自社で取り組もうと考えました。そこで、顔なじみであった名古屋の貿易商社に相談したところ、香港のお客様が弊社製品を気に入って下さり、取引が始まり、数年後には香港での展示会にも出展しました。日本と食文化が近い東アジア、東南アジアにて、ジェトロのさまざまな事業を活用しつつ顧客を増やす中で、シンガポールやタイで販売契約を締結し、直接貿易ができるようになりました。しかし、自力では東南アジアでの販路開拓に限界があり、新輸出大国コンソーシアムのハンズオン支援を2020年度より受けました。

成形と施釉は機械と人の手の両輪で行なっており、それぞれの製品に適したさまざまな方法がとられている

土鍋を使う食文化のない東南アジアでの販路開拓

シンガポールは低価格の中国製品に勝てず契約を解消しましたが、私的にも交流が続くタイの代理店での販売は伸ばしていきたい想いがありました。ハンズオン支援の専門家や地元金融機関の百五銀行にも助言、協力を仰ぎながらタイにおける販路開拓を進めていきました。土鍋を使う食文化がないタイへの輸出は、日本の土鍋を普及させたいという想いも抱きつつ進めました。自社の営業リソースに限りがある中で、企業への商談の同行やタイ以外にも、シンガポールの企業のリストアップ作成など、新出大国コンソーシアムの専門家によるハンズオン支援はとても心強いものでした。しかし、タイを含め東南アジアで日本の土鍋を購入できるのは一部の富裕層に限定されること、市場規模も限定的であることをハンズオン支援における調査を進める中で再確認したので、自社主導での東南アジアでの販路拡大は一旦諦め、需要がある市場へ集中することとしました。

伝統的な焼き物「四日市萬古焼」の土鍋

現地仕様の土鍋で、中国市場への展開を図る

これまで作り手一筋でやってきた弊社が、さまざまな支援を通じて、自社で海外販路を開拓したことで得られた知見や他社とのつながりは「大きな財産」となり、その経験を活かして、今は中国での展開を計画しています。日本同様に鍋料理の食文化がある中国は市場規模も大きく魅力的ですが、そのまま参入すると並行輸入品との価格競争になるという厳しさもあります。そこで、現地の陶磁器企業と合弁会社を設立し、形状や用途、人数、希望サイズなど、土鍋に対する現地顧客のニーズを反映させ、カスタマイズした現地仕様の土鍋を製造、販売することを計画しています。そして、製品を中国向けにGINPOブランドで発信しながらブランド認知を高め、現地の方の食生活がより豊かに、健康的になるよう、土鍋を通じて貢献していきたいと考えています。高品質な土鍋を作り、健康的な食生活を提案し、海外でも家族や親しい友人らと土鍋を囲む、「団らんの時間」を生み出していきたいです。

専門家からのポイント

コロナ禍の影響で同社とはオンライン面談による支援に終始しました。また現地出張ができない中、タイおよびマレーシアのバイヤーともオンライン商談での推進を余儀なくされました。マレーシアのバイヤーとは有償サンプル出荷の見込みまで漕ぎつけましたが、同地におけるコロナ禍の影響でバイヤー候補の現地での活動が極端に制限され、難しい状況が続いています。このような紆余曲折を経ながら、同社が中国向け案件を推進されていることはご同慶の至りです。

ご利用いただいたジェトロのサービス

新輸出大国コンソーシアム
日本企業の海外展開を支援する全国のあらゆる支援機関が結集し、海外展開にご関心をお持ちの中堅・中小企業の皆様へワンストップの支援サービスを提供します。