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SAgri株式会社(Sagri, Inc.)

インド進出の決め手は巨大市場とその課題の大きさ

世界中の農地をデータ化して持続可能な農業基盤を作ることをミッションに、日本とインド南部のカルナータカ州都ベンガルールを拠点に事業を展開するSAgri株式会社。インド事業を担うために同社が設立したSagri Bengaluru Pvt.の最高戦略責任者(CSO)としてベンガルールに常駐する永田賢氏に、インドでの事業展開とジェトロ支援の貢献について伺いました。

展開国:
インド
事業概要:
衛星および農業データにより、農業を最適化するアプリケーション「Sagri」の開発、運営

(左から)永田賢IndiaCSO、坪井俊輔CEO

SAgri株式会社の事業内容について教えてください。

2018年6月の創業以来、日本では、さまざまなデータを元にした、農薬や肥料の最適なまき方や収穫に最適な時期がわかるアプリケーションを提供しています。最近では、茨城県や茨城県つくば市からの委託事業として、人工衛星のデータを用いて耕作放棄地を突きとめるサービスを制作しています。インドでは2019年9月にベンガルールに現地法人Sagri Bengaluru Pvt.を設立し、人工衛星の技術を応用したマイクロファイナンス事業をやっています。

マイクロファイナンス事業の内容は

インドの農家の方が信用力を高め、適正なレートで金融機関からお金を借りられるように、人工衛星などで取得した農業データを金融機関に提供しています。具体的には、金融機関はこの農業データから将来の農家の収入見込みと返済能力を予測できるので、融資に際して適正なレートを設定ができるようになります。

インド農村地区での活動風景

なぜそうした事業を行うのでしょうか?

2億6千万人以上いるインドの農家は、信用力のないことが大きな問題となっています。種もみや肥料、農薬など事前に購入する必要があるものが多いけれど資金がなく、金融機関への信用もないので、年利30%から50%と非常に不利な条件で貸金事業者からお金を借りることになり、結局はお金が返せなくなって、命を絶ってしまうといったケースも少なくありません。私が今いるカルナータカ州でも、毎年2,000から2,300人の農家の方々が資金繰りを苦にして自殺しています。

一方で、インドの金融機関から見ると、都市部での融資は競争が激しい状態です。インド政府は、2019年の独立記念演説でモディ首相が「農家の収入を倍増させる」と演説をするなど、農家に融資をするよう金融機関へ強く働きかけています。それでも、既存の金融機関が農村部まで行って融資をするには、与信や返済のチェックにオペレーションコストがかかりすぎるのが現実です。

そうした状況を踏まえ、われわれは金融機関に対して農家の信用力を高めるためのデータを提供し、農家の生活改善を図ろうとしています。

インドの企業とも協業しているのですか?

Freshokartzという、インド北部のラジャスタン州ジャイプールに本社があるベンチャー企業とMOUおよびNDAを結んで提携しました。Freshokartzは、わかりやすくいうと日本における「農協(農業協同組合)」のような企業です。約5万人の農家とつながっていて、農業と流通のネットワークを持っています。

われわれとの協業では、Freshokartzのインドの農家について蓄積しているデータとネットワークを活用します。弊社は農業データを元にしたマイクロファイナンスのスキームで農家に融資を実行して、Freshokartzはその資金を元に種もみなどを購入できるような担保をし、収穫した農作物を販売するところまで全部やっていく、といったスタイルになります。

インド農村地区での活動風景

インドで事業展開するうえでの秘策や優位点を教えていただけますか?この記事を読んだほかの企業にとっても参考となる情報をいただけたらと思います。

インドのアグリテックスタートアップを見ていると、育種→生産→加工→流通の農業バリューチェーンの中で個々のスタートアップがそれぞれの分野のみに特化して限定した地域のみで展開しており、全国的なサービスとなっている会社は少ないです。そこで我々がインプット部分での金融サービスを各スタートアップの持つ農家に提供できればWIN-WINな状況を作ることができると考えております。ですので我々にとって競合となるアグリテックスタートアップはあまりおらず、協業先だという認識でおります。

インド市場の魅力としては、人材のトップ層の幅がとても広いです。日本でも注目されているインド工科大学(IIT)だけではなく、さまざまな大学の学生とコミュニケーションを取りましたが、皆とても優秀ですね。打たれ強くて、自分を表現するの上手で、どんな状況であっても必ず結果を出してくる、というのが個人的な感想です。

そういった人たちでも、インドではいまだに新卒では仕事があまりないのが現状です。激しい競争を勝ち残ってきた人たちと一緒に仕事できるのは魅力ですね。

インドの魅力は人材ですか?

人材と巨大な市場です。課題と市場の大きさは段違いです。

インドでの事業展開にあたり、ジェトロからはどのような支援を受けましたか?

ジェトロ・ベンガルール事務所から、日印スタートアップ・ハブ*1という取り組みを通じて全面的な支援をいただきました。 SAgriインド現地法人を立ち上げる際、2019年の7月から10月までの3カ月無料のコワーキングスペースを活用させていただいたのも、そうした支援の一環でした。インドでは物件を探すのはかなり大変なので、3カ月無料でいられるのはとてもありがたかったです。

また、日印スタートアップ・ハブなどでジェトロ ベンガルール事務所の皆さんと定期的に情報交換したり、有益な情報をスピーディに共有いただいたり、専任のメンターの方と「壁打ち」をしたりして、幅広く情報収集することができました。正直、当初は政府系の動きにはあまり注視していませんでしたが、ジェトロの方からのアドバイスもあり、州政府の動きにもアンテナを張るようになりました。お蔭様で、ベンガルールがあるカルナータカ州政府はスタートアップ支援に力を入れていることを知り、州政府の方々とも積極的に情報交換するようになりました。

インド最大のスタートアップメディアYourstoryが主催するスタートアップイベント
TechSparksでのピッチ

ジェトロの支援でインド企業との協業も進みましたか?

TechSparks 2019(インド)という展示会イベントに昨年、ジェトロの支援で参加しました。TechSparksは、Yourstoryというインド最大のスタートアップメディアが主催する年次イベントです。ここでピッチ(出資者向けプレゼンテーション)やブース出展をして、現地のエコシステムの皆さんと情報共有をしました。先述のFreshokartzと出会ったのもこのイベントです。同社は、Techsparks主催者が会期中に発表するインドの有望スタートアップ「Tech30」にも選出されており、ジェトロがTechsparks会期中にアレンジしてくれた日本のスタートアップとTech30とのSpeed Dating(一回あたり数分間で一対一の自己紹介を次々と行い、ビジネス協業可能性を探る)でCEOにコンタクトできました。

今後の事業の展望を教えてください。

2020年、3月中にマイクロファイナンスの第1号が始まります。対象地域も、インド国内の各州に広げていこうと考えています。提携先となる金融機関を見つけて、どうやって回収するかという道筋も見えてきたので、引き続き注力していくことと、各州で有力なスタートアップとつながって付加価値を提供する形で、提携を進めていくことに重点をおく予定です。

ジェトロのムンバイ事務所にも、ハブサービスの一環であるイノベーション・ホットスポット※2が設置され、ブリーフィングやマッチングサービスを受けることができました。インドは街によって産業がまったく異なるので、こうした情報提供は大変助かります。ムンバイは港町で、タタやリライアンスなどの財閥系、證券会社が集積している金融都市です。
ベンガルールでは見つけることがなかなか難しい提携先としての金融機関を、今後はムンバイで探していく予定です。ジェトロ ムンバイ事務所には、提携先候補企業との面談をアレンジしてもらっており、4月以降、本格的にマッチングサービスを受ける予定です。
こうした提携先パートナー探しと並行して、大学との連携を通じた人材採用や共同研究にも注力していく予定です。インド国内に設置されている23校のインド工科大学(IIT)の中で最も親日と言われているIITハイデラバード校とも関係を強化し、更なるビジネス拡大に繋げていきたいと考えています。

※1 2018年5月、日印政府間で締結された共同声明に基づき、ジェトロ ベンガルール事務所に設置。情報交換、ビジネス連携、及び投資を促進するためのプラットフォームとして機能する。ジェトロが提供するグローバル・アクセラレーション・ハブのサービスも含みます。
※2 グローバル・アクセラレーション・ハブとして提供するサービス内容を簡素化し2019年開設。ムンバイでもベンガルール同様にハブサービスの提供を開始します。

ご利用いただいたジェトロのサービス

  • ジェトロ・グローバルアクセラレーションハブ
    海外のスタートアップ・エコシステムを活用したビジネス拡大を目指す日本のスタートアップに対し、ブリーフィングやメンタリング、マッチング等のサービスを無料で提供します。
  • ジャパンパビリオン出展
    海外の有力なスタートアップ関連イベントにジャパンパビリオンを設け、出展料補助や付随するイベント等を通じ、日本のスタートアップのグローバル展開を後押しします。

SAgri株式会社

兵庫県丹波市氷上町常楽725-1
http://sagri.tokyo/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
代表者:坪井 俊輔
設立年:2018年6月
事業概要:衛星および農業データにより、農業を最適化するアプリケーション「Sagri」の開発、運営

関連情報

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