古橋酒造株式会社
城下町の小さな造り酒屋の挑戦―津和野から世界へ―

農林水産物・食品

明治11年創業以来、津和野を代表する酒蔵として、「厳冬の冬」「良質の仕込み水」「良い米」に育まれた地酒を精魂込めて造り続けている。代表銘柄は「初陣(ういじん)」。同社酒蔵の初代が17歳のとき、広島藩士お馬廻りとして鳥羽伏見の戦いで「初陣」を飾ったことに由来する

島根県鹿足郡ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

代表銘柄「初陣」

明治の文豪 森鴎外がつないだドイツとの縁

「山陰の小京都」とも呼ばれる島根県津和野町は、年間100万人の観光客が訪れる、県内でも有数の観光地です。城下町であった文化や歴史を今なお残し、白壁の土塀を背景に花菖蒲が咲き、その花陰に泳ぐ色とりどりの鯉がまるで絵巻のような美しい町並みを作り上げます。

当酒蔵はその町の中心にある「殿町通り」の隣の「本町通り」にあり、そのちょうど四つ角に位置することから、「角酒場」の愛称で地元の人々に昔から親しまれてきました。

販売は主に地元津和野とその周辺、また観光客相手が中心でしたが、そんな当酒蔵が海外を目指すきっかけになったのは津和野町で幼少期を過ごした文豪、森鴎外でした。森鴎外がかつて留学していたベルリンと津和野町は姉妹都市提携を結んでおり、その縁でドイツでの販売の話が持ち上がったのです。

地元のためにも、当酒蔵のためにも、本格的に輸出に取り組みたいと思いましたが、英会話も不慣れで、現地へ渡航するにしても、そもそも商談相手となるインポーターをどのように探せばいいかも分からず、何から手を付けていいのか困っていました。

専門家と二人三脚、共に切り拓いた海外市場

そこでジェトロ松江に相談したところ、まずは海外の情報を少しでも得る必要性を感じ、ジェトロメンバーズに加入しました。その他、ジェトロの様々なサービスを活用することでインポーターのリストアップやマッチング支援を受けられることを知り、専門家が輸出戦略の策定から契約締結まで一貫してサポートするジェトロの輸出有望案件支援サービスに申し込み、2015年6月に採択されました。

専門家からは、事前にインポーターの企業情報に関するアドバイスも受けることができ、大いに参考になりました。外国語でのコミュニケーションに不安がありましたが、渡航時にはドイツまで専門家に同行してもらい、適切なサポートのもと、商談に臨むことができました。

一口に商談と言っても、商習慣や文化が異なる海外が相手なので、国内と同じようにはいきません。帰国後のアフターフォローについてもアドバイスをもらいながら商談を進めるようにしました。

輸出が決まったら、次に待ち構えていたのが貿易実務でした。直接輸出を試みることにしたのですが、当酒蔵では貿易書類など今まで扱ったこともなかったため、書き方を一から専門家に教えてもらいました。専門家の豊富な経験に基づくアドバイスでノウハウを学び、今では自力で書類を作成できるようになりました。輸出有望案件支援サービスは、一気通貫で専門家のフォロー受けることができるため、商談そのものにしっかり集中することができました。

結果的には無事ベルリンでインポーターが見つかり、念願だったベルリンでの販売を開始することができました。現在は、ドイツだけでなく台湾へも同じように取り組み、輸出を進めています。

輸出有望案件支援サービスの支援期間の2年間で、ドイツには2回、台湾には3回、専門家と足繁く通うことで、相手側との信頼関係をしっかり構築することができました。

海外展開に取り組んだことで、当酒蔵としても輸出経験を得ることができただけでなく、海外へ輸出しているという実績が製品のブランド力向上にもつながっています。会社として大きな一歩を踏み出せたと思っています。

今後は、ドイツ、台湾への輸出を維持・拡大していきたいと考えています。ドイツの取引先からは当酒蔵に訪問したいとの申し出も受けているところで、そういった受け入れなどを通じて相手との関係をより深化させていけたらと思います。将来的には、他国にも輸出を広げていきたいです。

輸出有望案件支援サービスの支援期間が終了した後も、新輸出大国コンソーシアム事業を活用することで、引き続きジェトロのサポートを受けています。

ジェトロのアドバイスを得ながら、今後も腰を据えて取り組んでいきたいです。

ジェトロ活用のメリット

経験豊富な専門家と地元のジェトロ事務所が一体となり、些細な相談から現地への営業同行まで、段階に合わせたサポートが受けられました。また、渡航時には、ジェトロ現地事務所のサポートも受けることができ、現地ならではの情報を得ることができます。

ジェトロ 輸出有望案件発掘支援専門家 福田啓から

私の「初陣」、初めての支援企業が古橋酒造株式会社でした。古橋社長はとても真摯に輸出に取り組まれ、侍のように堂々と、そして何時も愛くるしい笑顔で商談されました。

写真 ジェトロ 輸出有望案件発掘支援専門家 福田啓

古橋酒造株式会社 代表取締役 古橋貴正

ご利用いただいたジェトロのサービス

  • 海外コーディネーターによる輸出支援相談サービス
    ジェトロが海外に配置する各分野の専門家(海外コーディネーター)が、海外ビジネス展開に関するお問い合わせに、現地の感覚・目線でお答えします。
  • 輸出有望案件支援サービス
    輸出戦略の策定から契約締結まで専門家がお手伝いします。優秀な製品を持っていながらこれまで輸出経験がない、あるいは輸出ビジネスを躊躇している中小企業が対象です。

古橋酒造株式会社

島根県鹿足郡津和野町後田口196
Tel:0856-72-0048
URL:http://uijin.net/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
代表者:代表取締役 古橋 貴正

従業員:6名
資本金:1,000万円
事業内容:清酒醸造・販売業
目的 :輸出
対象国・地域:ドイツ、台湾

2018年7月

関連情報

ご相談・お問い合わせ

現地日系企業の皆様

最寄りのジェトロ事務所にご連絡ください。