投資環境整備の取り組みをアピール-東京で「カザフスタン・ビジネスセミナー」開催-

(カザフスタン、日本)

欧州ロシアCIS課

2016年11月29日

 11月6~9日のナザルバエフ大統領の訪日に合わせ、11月8日に東京のジェトロ本部で「カザフスタン・ビジネスセミナー」が開催され、カザフスタン投資発展省などが日本企業に投資を呼び掛けた。また、消費市場としての魅力や、2017年6月に開催予定のアスタナ国際博覧会の紹介もあった。セミナーの概要を報告する。

<民営化する国営企業への出資者を募る>

 セミナーでは投資発展省のエルラン・ハイロフ次官が、カザフスタンと日本の経済関係と展望について講演し、両国の間では投資協定が既に締結されているほか、日本に対しカザフスタンでの短期滞在にはビザを免除していること、ナザルバエフ大統領が訪日中の117日に両国間の直行便開設で合意したことを明らかにした。

 

 ハイロフ次官によると、過去10年間の日本からの直接投資額は51億ドルに上り、丸紅、住友商事、トヨタなど日本企業との共同事業が50件以上存在する。700以上の国営企業の民営化を計画しており、カザフスタン政府は出資者となる日本企業を探しているという。

 

 聴衆から、カザフスタンでは2016年にテロ事件が2度起きたことから、国内の治安について質問が出た。これに対しハイロフ次官は、テロ事件は世界の至る所で起きており、カザフスタンも例外ではないとした上で、「伝統的な宗教と異なる過激な集団が原因とみている。社会情勢を研究する宗教・市民社会問題省を設立するなど必要な措置を取っている」と対策をアピールした。

 

 続いて、輸出振興や投資誘致を担うカズネクスインベストのボリスビー・ジャングラゾフ社長が、カザフスタンは投資環境の整備に取り組んでおり、世界銀行などがまとめる「ビジネス環境の現状」2017年版で総合順位が35位と、前年より順位を16上げた。今後もさらに上位を目指す考えだと説明した。

 

 ジャングラゾフ社長は、税負担が小さい点も投資に有利な点として挙げた。例えば、法人税率は20%、付加価値税率は12%と近隣のロシアや中国と比べて低く、投資事業が優先プロジェクトに指定されると、同事業で雇用する外国人労働者は雇用枠(クオータ)や労働許可の対象外になるという。

 

 カザフスタンは2017年末までの措置として、日本を含む19ヵ国に対し滞在期間15日を上限とするビザ免除措置を導入しているが、ジャングラゾフ社長は「2017年にはビザ免除の対象国をOECD加盟国などに広げる計画がある」と明らかにした。カザフスタン首相府の発表(1028日)によると、滞在上限期間も30日に延長される計画があるという。

 

<日本企業の資源採掘設備投資に期待>

 カザフスタン開発銀行(DBK)のボラト・ジャミシェフ総裁はDBKの活動を次のように紹介し、日本企業に投資プロジェクトへの参画を呼び掛けた。

 

 カザフスタン開発銀行の使命は、製造業や鉱工業インフラ分野のプロジェクトに長期的融資を行い、カザフスタン経済の多様化に貢献することだ。2,000万ドル以上のプロジェクトに1,000万ドルから融資を行う。「ノル・ジョル(光の道)」という工業化プログラムに従って、インフラ、輸送、エネルギー関連の投資プロジェクトがある。

 

 日本とは、国際協力銀行(JBIC)や大手銀行と11,500億ドルに上るクレジット協定を結んでおり、日本貿易保険とも協力関係にある。日本企業が設備を輸出する場合、DBKも融資を行える。プロジェクトに融資する際は、まず借款を確保し、プロジェクトファイナンスあるいは設計・調達・建設(EPC)契約という条件を付けている。資源採掘設備に関し、この分野で優れた技術を持つ日本企業の投資を望んでいるとのことだ。

 

1人当たりGDP1万ドル超の消費市場>

 ジェトロ・タシケント事務所の下社学所長は、消費市場としてのカザフスタンをショッピングモールの写真などを示しつつ、次のように説明した。

 

 カザフスタンは1人当たりのGDP1万ドルを超え、消費市場としても有望。IMFの予測では2016年のGDP成長率はマイナス1%などとなっているが、実体経済との乖離を感じる。特に都市部では大型スーパーマーケットやショッピングモールも多数出店しており活況を呈している。近年、市民の健康・本物志向が強まっている。

 

 日本製品への信頼感は高いが、課題は各種承認・輸入許可の取得、広告宣伝費の負担、物流網の確保などだ。小売業者は面倒なことを嫌がる。許認可手続き、広告宣伝の経費などは、メーカーの負担を期待している。また、日本の約8倍という広大な国土において配送を安全・確実に行える業者の確保が肝要だ。

 

 最後に、2017年アスタナ国際博覧会陳列区域日本政府代表の中村富安氏が、博覧会への参加、日本館のテーマについて、次のように述べた。

 

 201769月にカザフスタンで開催されるアスタナ万博のテーマは「未来のエネルギー」。日本館の出展テーマは「Smart Mix with Technology」だ。エネルギー資源に乏しい日本は、多様なエネルギーの利用を通じて、安全性や環境に配慮しながら、低コストで安定的なエネルギー供給を目指してきた。人類が共通して抱えるエネルギーの課題解決に向け、そうした日本の技術や取り組みを発信したい。同時に、この取り組みの背景にある日本の社会・文化・自然を印象的に紹介したい。

 

(浅元薫哉、今津恵保)

(カザフスタン、日本)

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