カナダ政府がトヨタの追加投資へ支援を発表

(カナダ)

トロント発

2018年05月10日

ジャスティン・トルドー首相とオンタリオ州のキャスリーン・ウィン首相は5月4日、トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・カナダ(TMMC)のケンブリッジ工場とウッドストック工場の14億カナダ・ドル(約1,176億円、Cドル、1Cドル=約84円)の追加投資に対して、連邦政府と州政府がそれぞれ1億1,000万Cドルの支援を行うことを発表した。

ケンブリッジ工場では、現在生産しているカローラの生産終了後、2019年初頭に「RAV4」の生産を開始するため設備を一新する予定となっている。今回の投資は、オンタリオ州南部に約8,000人以上の雇用を維持するだけではなく、450人の新規雇用機会を提供するとしている。さらに、TMMCは今後10年間に2億Cドルを研究開発に投資する予定だ。投資が完了すれば、カナダが北米における「RAV4」生産のハブ拠点となり、トヨタの北米における最大のハイブリッド自動車生産拠点になるとされている。

カナダ日本自動車工業会(JAMA)専務理事のデイビッド・ウァーツ氏は、今回の発表は現在行われている北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉には直接的には影響せず、むしろ労働組合を含めたCPTPP、いわゆるTPP11に反対の立場を取る人々に影響を与えるとの見解を示した。カナダの自動車関連労働組合は、CPTPPは北米から自動車分野の雇用を失わせ、日本からカナダへの無税での自動車輸入が増加すると考えている。ウァーツ氏は、労組は今回のTMMCの追加投資とカナダでの生産継続の意向に驚いているのではないかとの見解を述べた。

他方、カナダ自動車部品製造業協会(APMA)のフラビオ・ボルペ会長は、今回の発表はNAFTA再交渉に対する信頼を示すものの、CPTPPに対する懸念を払拭(ふっしょく)するものではないとの見解を示した。また、労働組合(ユニフォー)のジェリ-・ディアス委員長は、「この発表は歓迎すべきものだが、CPTPPに対する不安は依然としてある」との意見を述べた(「フィナンシャル・ポスト」紙5月4日)。

(伊藤敏一)

(カナダ)

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