国産車の品質向上へ、外国部品メーカー参入に期待

(イラン)

テヘラン発

2017年10月02日

イランの国産車は、過去の経済制裁などによりモデルチェンジや設備更新が十分に行われず、首都テヘランでは自動車の排ガスが深刻な大気汚染の一因とされるなど、品質向上が喫緊の課題となっている。そうした中、外国の自動車部品メーカーとイラン企業のビジネス提携も増えてきており、今後の国産車のレベルアップが期待されている。

国産車の多くは5段階で最低の評価

イラン標準品質検査会社(Iran Standard & Quality Inspection Company:ISQI)は、国産車の品質および安全性を検査し、5つ星から1つ星の5段階評価で車種ごとの「格付け」を毎月発表している。ISQIの最新の発表によると、主な車種の格付けは表1のとおりで、イランで生産される乗用車43モデルのうち15モデルが最低評価の1つ星で、2016年に最も生産台数の多かった地元メーカーのサイパの「プライド」シリーズも1つ星だった。フランス、韓国などの外国ブランドが高い評価を受ける一方で、国内ブランドのほとんどは1つ星だ。

表 イランで生産される主な乗用車の格付け

政府は数年間にわたって、大気汚染防止のため高濃度ガスを排出する低品質車の交通規制の導入を検討してきた。しかし、ISQIから最低評価を受けている大半の国産車が規制対象となってしまうことから、導入には至っていない。2017年度も、産業開発政策を担う産業開発革新公社(IDRO)から低品質車の生産中止勧告が出るなど、政府もこれまで以上に積極的に取り組む姿勢を示している。

欧州部品メーカーが地元企業と提携

しかし、全ての国産車の品質を直ちに改善することは難しい。経済制裁の解除以降、フランスのプジョーなど外国自動車メーカーのイラン市場参入が発表されてきたが(2017年3月21日記事参照)、品質の底上げを図るには外資部品メーカーの参入による技術移転も不可欠だ。政府はコンプリート・ノックダウン(CKD)生産用の部品の輸入関税を年々引き上げてきており、外国自動車メーカーがイラン国内で生産する際の現地調達率を向上させるよう働き掛けている。そうした状況の中、外国自動車部品メーカーがイラン企業とビジネス提携をする事例が増えてきている。経済制裁の解除以降に発表されている、外国自動車部品メーカーの主な動きは以下のとおり。

○フォルシア(フランス):アジン・ホドロと合弁会社設立で合意、内装部品などを製造予定。クルーズと合弁会社設立で合意、排気管理システムを製造する予定。

○メカプラスト(フランス):ライズ投資戦略拡張社(Rise Investment and Strategy Extension Company)と合弁会社の設立で合意、エンジンなどを製造予定。

○バレオ(フランス):エザム自動車部品グループ(Ezam Automotive Parts Group)と、点火コイルなどの電装部品製造での協力に合意。

○コンチネンタル(ドイツ):クルーズと合弁会社設立で合意、エンジンコントロールユニット(ECU)などを製造予定。

○ボッシュ(ドイツ):エザム自動車部品グループと、センサーなどの電装部品製造での協力に合意。

○パンチ・パワートレイン(ベルギー):産業開発革新公社(IDRO)と合弁でエンジンボックス製造工場を設立。

なお、国際自動車工業連合会(OICA)によると、イランの2016年の自動車生産台数は前年比18.6%増の約116万台で、世界18位だった。イラン自動車工業会(IVMA)によれば、2017年も順調に生産台数を伸ばしているという。政府は2025年までに「国内生産300万台、うち輸出100万台」という野心的な目標を掲げており、外国自動車部品メーカーの進出による品質向上・輸出競争力強化を推進していくことが求められている。

(藤塚理)

(イラン)

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