米商務省、カナダ産針葉樹材にAD関税も暫定適用

(カナダ、米国)

トロント発

2017年07月03日

米商務省は6月26日、カナダ産針葉樹材に対して4.59~7.72%のアンチダンピング(AD)関税を適用する仮決定を下した。預託金として4月から徴収されている相殺関税と合わせると平均約27%の関税が課せられることになり、カナダ連邦政府は反発を強めている。

相殺関税と合わせ平均約27%

米商務省は4月に発表した相殺関税(2017年5月15日記事参照)と合わせて、カナダ製材企業の米国への針葉樹材輸出に際して以下の暫定AD関税率を適用すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(表参照)。

表 対象企業名と暫定AD関税率、暫定相殺関税率 (単位:%)
企業名 暫定AD関税率 暫定相殺関税率
(4月24日仮決定)
合計暫定
関税率
ウエスト・フレイザー・ミルズ〔ブリティッシュ・コロンビア(BC)州〕 6.76 24.12 30.88
キャンフォー(BC州) 7.72 20.26 27.98
トルコ・マーケティング・アンド・セールス、トルコ・インダストリーズ(BC州) 7.53 19.50 27.03
レゾリュート・ FP ・カナダ〔ケベック(QC)州〕 4.59 12.82 17.41
JDアービング〔ニューブランズウィック(NB)州〕 6.87 3.02 9.89
その他 6.87 19.88 26.75

(出所)米商務省プレスリリース

また、JDアービングとその他企業に関しては、相殺関税と同様にAD関税についても「緊急事態」の仮決定を行い、暫定AD関税の適用開始日から90日間遡及(そきゅう)して預託金の支払いを求めている。米センサス局によると、カナダからの暫定AD関税適用品目の輸入額は、2015年の45億2,012万ドルから2016年には25%増の56億5,534万ドルに拡大している。

なお、ニューファンドランド・ラブラドール、ノバスコシア、プリンス・エドワード・アイランドのカナダ東部3州は、相殺関税の適用対象となっていたが、今回の仮決定では相殺関税、AD関税とも対象外となった。ただ、3州からの米国への2016年の針葉樹材輸出額は全体の1.6%未満にすぎない。

米政府に対し撤回を働き掛け

米商務省の発表に対し、カナダのジム・カー天然資源相とクリスティア・フリーランド外相は「政府は訴訟を含め、カナダの針葉樹材産業を積極的に擁護し、(仮に提訴した場合には)これまでと同様に勝訴を見込んでいる。今後も米国政府とは継続的に協議を続け、不当な通商措置を撤回するよう働き掛けていく」と連名で声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した(カナダ連邦政府プレスリリース6月26日付)。

連邦政府は6月1日には、相殺関税適用で影響を受ける労働者や地方行政区を対象に、市場の多様化などを目的とした総額8億6,700万カナダ・ドル(約746億円、Cドル、1Cドル=約86円)の支援プログラムを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしたばかりだった。

米商務省のAD関税の最終決定は9月7日ごろの予定で、両国政府の動向が注目される。

(飯田洋子)

(カナダ、米国)

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