「スマートシティーエキスポ」にジャパンパビリオンを初出展-市民・企業・行政の協力でより良い街づくりへ-

(スペイン)

マドリード発

2018年01月25日

スペイン・バルセロナ市でモノのインターネット(IoT)を活用した、より良い街づくりのためのソリューション提案を行う展示会「スマートシティーエキスポ・ワールドコングレス2017」が2017年11月14~16日に開催された。ジェトロは初めてジャパンパビリオンを設置、14の企業・団体が出展し、日本各地の取り組みや都市課題の解決に向けたソリューションを紹介した。

初のジャパンパビリオン設置で14社・団体が出展

スマートシティーとはIoTを利用し、データを収集・分析することによって効率化されたより良い都市づくりを目指す都市を指し、EUのIoT市場を構成する主要分野の1つとして位置付けられている。このような都市づくりを実現するためのソリューションを提案する展示会「スマートシティーエキスポ・ワールドコングレス2017」がスペイン・バルセロナ市で開かれた。

本展示会は今回で7回目の開催となり、スマートシティー分野の展示会では世界最大規模となっている。バルセロナ市、ニューヨーク市などの自治体、オランダ、イスラエル、日本など国単位での出展をはじめ、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)や米国マイクロソフトなどの大企業も出展しており、120カ国超の国々から出展企業675社(前年:591社)、来場者1万8,754人(1万6,688人)が参加した。カタルーニャ独立問題の影響が懸念されていた中、出展者・来場者ともに前年度を上回る結果となった。

ジェトロは本展示会に初めてジャパンパビリオンを設置し、14社・団体が出展した。高速画像処理技術の活用によって監視カメラの映像を分析し、都市の状況をリアルタイムに把握するソフトウエア、導電性のある繊維を利用して製造された衣類型ウエアラブルデバイス、データ統合技術により組織のオープンデータの作成・管理・公開を行うシステムなど、多種多様な出展物が並んだ。ジャパンパビリオンには各国の自治体の担当者が多く立ち寄り、「他国の技術とは異なっていて面白い」「すぐにでも取り入れたい」などと、積極的なコメントが寄せられた(展示会当日の様子はジェトロの国際ビジネス情報番組「世界は今JETRO Global Eye外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで視聴できる)。

写真 ジャパンパビリオンの様子(ジェトロ撮影)

本展示会の特徴は、来場者がバイヤー、出展者が販売者という位置付けがないことだ。出展者間の交流も活発で、互いに自社の提案を紹介し、フィードバックし合う場として活用されている。そのため、出展者同士で横のつながりができ、新たなビジネスパートナーとなり、翌年に共同出展するという例も見受けられる。

また、この展示会のもう1つの特徴は、コングレス(世界会議)が毎日数多く行われていることだ。6つのコングレス会場で毎日20以上のセッションが行われ、各都市の市長やスマートシティー分野の責任者、関連企業の担当者による事例の紹介、スマートシティーの課題について観客を巻き込みながらの議論を行った。日本からは高島宗一郎・福岡市長と森雅志・富山市長がこのコングレスに参加し、各都市のスマートシティー事例について紹介した。

日本の中小企業にも進出のチャンスあり

スペイン北部のサンタンデール市でのプロジェクトをはじめ、スマートシティー分野で存在感を示す日本企業のNECは毎年、本展示会に出展している。スマートシティーエキスポの変化について担当者は「以前はIoTにフォーカスしており、センサーやプロダクトを提供する企業が多かったが、最近では都市生活にITをいかに活用し、生活の向上、市民の問題解決を行っていくかに焦点が変わってきている」と語る。

開催地のバルセロナ市のパビリオンのテーマは「リンキング・タレント」(つながる才能)だった。「スマートシティーとは市民・企業・行政が協力し合うことが非常に重要だ」と担当者のジョアン・バッリェ氏は話す。同市は市民の声を集約するため、「デシディム(Decidim)」というプラットフォームを作成し、市民生活における問題集約を図っている。ここに寄せられた市民の声を分析し、移動性、環境、市民参加型、住居、デジタルインフラという、同市のスマートシティー政策の5つの柱を策定した。

中小企業や海外企業の参入チャンスも十分にある、とバッリェ氏は語る。バルセロナ市では中小企業が協力して市の入札に参加できるよう、マーケットプレイス(取引プラットフォーム)を作成した。自治体の入札は規模が大きく、中小企業が単独で参加するのは難しい。しかし、このマーケットプレイスを利用することにより、中小企業が互いの特徴を知り、協力関係を築いて入札に参加することが可能となる。

ある都市が抱える問題は、世界のほかの都市でも同様に発生し得る。同じ課題を抱える都市と協力して解決していくことにより、技術の統合や経費の節約になる、とバッリェ氏は指摘する。バルセロナ市はニューヨーク市と共同で、視覚障がい者に優しい歩道づくりを進めている。このように、スマートシティーは単独で築き上げるものではなく、大小の企業・団体がイニシアチブを取って、進化させていくものだ。日本の中小企業のスマートシティー分野での活躍に期待したい。

(内川未来)

(スペイン)

ビジネス短信 791c9f1d656a7871