2022年のGDP成長率は5.3~6.3%、中銀が予測を下方修正

(マレーシア)

クアラルンプール発

2022年04月05日

マレーシア中央銀行は3月30日に発表した2021年の年次報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、2022年の実質GDP成長率を5.3~6.3%と予測した(添付資料表参照)。2021年の3.1%からは加速するものの、地政学的リスクなどを背景に、2月時点の見通し(5.5~6.5%)からわずかに下方修正した。

GDPを産業別にみると、特にサービス業で6.9%増の高い伸びが見込まれる。国境再開や移動制限解除に伴う観光や消費分野の回復が経済成長を牽引するとみられるためだ。製造業も、世界的な半導体需要の高止まりや一次産品関連の製造の堅調さから、前年に続き底堅い成長(5.2%)が予測されている。

中銀は経済成長を牽引する要素として、外需の拡大や、新型コロナウイルス関連の封じ込め措置の解除(国境再開も含む)、高いワクチン接種率、労働市場の改善などを挙げた。他方で、リスク要因としては、ワクチンへの耐性を持つ新型コロナウイルスの新たな変異株の出現や、ウクライナ情勢の緊迫化による地政学リスクの高まりとこれによるサプライチェーンや貿易の混乱、コスト上昇圧力の継続による景況感の悪化を指摘した。

2022年のインフレ率は2.2~3.2%と予測

今回の見通しで、中銀は2022年のインフレ率を2.2~3.2%と予測した。2021年の物価上昇をもたらした燃料価格の高騰は2022年には減速するとし、生鮮食品の価格も政府の価格統制により上げ幅は一定程度抑制されると分析した。中銀は、エネルギー価格や食品価格を除いた2022年のコアインフレ率を2.0~3.0%と見込んでいる。

ノル・シャムシア・ユヌス中銀総裁は3月30日の記者会見で、政府が発表した最低賃金の引き上げについて「マレーシアの経済成長を妨げず、インフレ圧力を高めないかたちで、秩序立てて行われるべき」との考えを表明した。所得増に向けた議論が活発化すること自体は歓迎しつつも、国が「新型コロナ禍」からの回復途上にあり、かつ、地政学的リスクによる世界経済の不確実性が高まる中、賃金については明確で透明性あるロードマップの必要性を指摘した。政府は先に、5月1日以降の最低賃金を現行の月額1,200リンギ(約3万4,800円、1リンギ=約29円)から1,500リンギへ引き上げることを発表し、25%もの上昇幅に産業界からは困惑の声が上がっていた。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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