広東省、外資の積極利用に関する10措置を発表-新エネ車製造の出資比率制限緩和などを実施-

(中国)

広州発

2018年01月18日

広東省政府は2017年12月1日、「広東省の対外開放をさらに拡大し、外資を積極的に利用するための若干の措置」を発表した。ビジネス環境の改善や、企業にとって公平な競争環境の整備を目的として、外資企業の市場参入、土地、金融、人材、知的財産保護などに関する10分野の措置を定めた。新エネルギー車製造における外資出資比率規制の緩和や、研究開発機関設立に対する財政支援などが盛り込まれている。

外資による投資制限を一部緩和

広東省は、国務院が2017年1月に発表した「国務院の対外開放拡大と外資積極利用に関する若干の措置」(2017年2月16日記事参照)を推進するため、「広東省の対外開放をさらに拡大し、外資を積極的に利用するための若干の措置」(粤府[2017]125号、注)を公布した(表参照)。

表 「広東省の対外開放をさらに拡大し、外資を積極的に利用するための若干の措置」の内容
項目 内容
(1)市場参入分野のさらなる拡大
  • 外資の参入制限の緩和を推進する。
  • CEPAの枠組みの下で広東省自由貿易試験区の香港・マカオのサービス業に対する開放を深化する。
(2)外資導入に対する財政面の奨励の増加
  • 新しい外資プロジェクトに助成を与える。
  • 外資の増資、生産拡大を奨励する。
  • 地域統括本部の立地集積の発展を支持する。
  • 省政府などによる財政的な支援を奨励。
(3)土地利用の保障の強化
  • 製造業の外資プロジェクトにおける土地利用の保障を強化する。
  • 外商投資企業の三旧(古い都市・町、工場建屋、村落)の改造を支持する。
  • 企業本部を設立する際の土地利用の保障を強化する。
  • 外資プロジェクトの土地利用コストを引き下げる。
  • 外資プロジェクトの工業用土地のフレキシブルな譲渡を奨励する。
  • 外資プロジェクトの賃借形式での土地利用を支援する。
(4)研究開発イノベーションの支援
  • 外資の研究開発機関の設立を支援する。
  • 外資の研究開発イノベーション環境を最適化する。
  • 外資の研究開発成果の産業化を支援する。
(5)金融面の支援の強化
  • 産業発展ファンドへの支援を強化する。
  • 金融管理、サービスにおけるイノベーションを進める。
  • 外資企業による地域内での直接金融による資金調達を支援する。
(6)人材への支援の強化
  • 高度人材に対する優遇政策を強化する。
  • 高度人材の奨励措置を強化する。
(7)知的財産権の保護の強化
  • 知的財産権の保護システムを整備する。
  • 知的財産権サービスシステムを整備する。
(8)投資・貿易円滑化の水準の向上
  • 外資に対する審査・批准(届出)事項の権限をより下級の政府に委譲する。
  • 外商投資の関連サービスを最適化する。
  • 貿易をさらに円滑化させる。
(9)重点園区の外資誘致環境の最適化
  • 重点園区に対する政策の連動を強化する。
  • 園区発展の奨励措置を強化する。
(10)外資利用の保障システムの整備
  • 企業、資本誘致のための政府機能を強化する。
  • 外資誘致の奨励システムを整備する。

(出所)広東省人民政府「広東省の対外開放をさらに拡大し、外資を積極的に利用するための若干の措置」(粤府[2017]125号)

そのうち、(1)「市場参入分野のさらなる拡大」においては、製造業では、特殊車両、新エネルギー車製造の外資の出資比率制限を緩和する。サービス業では、船舶の設計、リージョナルジェットおよび汎用(はんよう)航空機の修理、人材サービス機関、国際海上輸送業者、鉄道旅客輸送業者、ガソリンスタンド建設・経営に対する外資の出資比率制限を撤廃し、インターネット利用サービスを行う場所やコールセンターへの外資による投資を認める。また、外商単独資本の興行マネジメント機関の業務範囲の制限を緩和する。金融分野では、外資投資銀行、証券事業者、証券投資基金管理業者、先物取引業者、生命保険会社の外資の出資比率制限および業務範囲の制限を緩和する。これにより、「外商投資産業指導目録(2017年版)」において外商投資が制限されている35項目の3割に当たる11項目について、規制が緩和されることになる。

香港とマカオに関しては、CEPA(中国本土と香港、中国本土とマカオの経済連携緊密化取り決め)の枠組みの下で、中国(広東)自由貿易試験区の香港・マカオのサービス業に対する開放を深化するとしている。具体的には、自由貿易試験区内で、a.香港・マカオと中国本土の弁護士事務所が受理または引き受けることができる法律業務の範囲を拡大すること、b.香港の土木工事の管理方式を試行すること、c.香港・マカオの海運・航空路線を中国国内の特殊路線として管理すること、などが挙げられている。広東省商務庁長の鄭建栄氏は「これらの開放措置は、香港・マカオに対してのみ、CEPAの補充協議として実施する。今後は広東・香港・マカオ間の人の移動の円滑化、物流の効率化、金融の相互連結システムの構築、安全で効率の良い情報ネットワーク構築を推進し、広東・香港・マカオの市場一体化のレベルを向上させる」とした(「21世紀経済報道」紙2017年12月5日)。

大企業やR&Dに取り組む企業へ重点的に財政支援

また、(2)「外資導入に対する財政面の奨励の増加」では、2017~2020年の期間中、広東省で投資実行額(株主貸し付けを含まない)が年間5,000万ドルを超える新プロジェクト(不動産業、金融業および金融関連産業のプロジェクトを除く)、3,000万ドルを超える増資プロジェクトおよび1,000万ドルを超えるグローバル企業の本部または地域統括本部の設立に対して、投資実行額の2%以上、最大で1億元(約17億円、1元=約17円)を助成する。また、外資系グローバル企業の本部または地域本部による広東省への年間納税額が1億元を超えた時に、金額の30%、最大で1億元を助成する。

さらに、(4)「研究開発イノベーションの支援」では、2017~2020年の期間中、省レベルの新型研究開発(R&D)機構として認定された外資R&D機構に最大1,000万元、博士研究員、両院(中国科学院と中国工程院)院士(大学や研究所における高級な称号)の勤務先として認定された外資R&D機構に最大100万元、審査を通過した外資R&D機構の省レベル企業技術センターイノベーション建設プロジェクトに最大200万元を助成する。この財政支援は、「フォーチュン500」に入るような世界的大企業が、広東省において設立する法人資格を有する研究開発機関が重点対象となっている(「21世紀経済報道」紙2017年12月5日)。

より高水準の対外開放を目指す

中国国際経済交流センター副理事長の魏建国氏は「米国の減税実施による対米投資の増加と米国製造業の国内回帰により、中国はある程度の影響を受ける。しかし中国にとっては、サプライサイド構造改革の推進、生産効率の向上、企業コストの削減を加速し、より高水準の開放型経済を発展させることが一層重要になる」との見方を示している(「南方日報」紙2017年12月5日)。

(注)原文は広東省人民政府ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで閲覧が可能。

(黄冬瑩)

(中国)

ビジネス短信 54e06a812a435448