認定事業者制度を拡充、手続きを一層簡素化−通関分野の法改正と実務(1)−

(ロシア)

モスクワ事務所

2014年07月17日

ロシアでビジネスを行う企業にとって、通関手続きは「提出書類が多い」「時間がかかる」など悩みの種。しかし、一定の基準を満たすことで、通関手続きの簡素化などの優遇を受けることができるといった改善の取り組みも進んでいる。法律事務所DLAパイパーのアレクセイ・アロノフ通関グループ長が6月23日、在モスクワ日本企業との会合で講演した内容を2回に分けて報告する。

<法令順守の輸入事業者に優遇措置>
ロシアには約6万8,000の輸入事業者が存在し、約6万5,000人の税関職員が働いている。輸入に際しての税関への支払い(関税、付加価値税などの税金、通関手数料など)の52%程度は、約2,000の輸入事業者による。これら事業者は多額の関税をきちんと支払っているため、銀行保証による商品の通関や、事後の税関検査が許可されている。

6万8,000の輸入事業者のうち、a.輸入通関業務を1年以上行い、b.年間100件以上の申告書を提出する5,500社に対し、連邦税関局はリスクマネジメント・システムによりリスク評価を行っている。低リスクに分類される輸入事業者は、検査や鑑定、文書および資料照会の回数が削減され、商品が税関管理下にある期間が短縮される。基準のリストは2012年9月7日付連邦税関局規定第1809号で参照できるので、自社のリスク分類を把握するのに役立つ。

連邦税関局は、ロシア国内の投資プロジェクトに関わる大規模な製造業者や自動車製造業者を対象としたリスク分類、いわゆる「ホワイトリスト」も作成している。同リストは「グリーンセクター」(2014年6月5日記事参照)内の優良製造業者リストで、登録されると通関手続き時間の短縮といった優遇措置を受けられる。

<認定事業者制度による優遇も>
法令を順守している輸入事業者であってもロシア国内に製造拠点を有しない事業者(多国籍企業を含む)の場合、連邦税関局にホワイトリストへの登録を申請できる制度が存在しない。その場合は、一定の基準を満たす事業者に通関手続きの優遇措置を与える認定事業者(Authorized Economic Operator:AEO)制度を適用することができる。AEOとして登録された企業は、通関手続きの簡素化、貨物引き取りまでの時間短縮、保管と通関のコスト削減などの利点を得る。

AEO制度による優遇措置は以下のとおり。

(1)(保税倉庫のステータスを有しない)自社倉庫での商品の一時的な保税保管
(2)税関に申告書を提出する前に商品の通関が可能(商品の購入者への出荷や商品の生産投入が可能)
(3)全AEO事業者は、トランジットを含む通関手続きを事業者の敷地内で完了できる(以前、この優遇措置は製造業のAEO事業者にのみ適用されていた)
(4)税関申告の定期化(税関申告に関わる出費を抑えることができ、同時に税関申告を簡略化し、税関への支払いを最大40日まで延期することができる)
(5)税関への担保なしで商品のトランジット通関手続きが可能

<商品の通関に追加担保は不要>
2014年5月5日付連邦法第115−FZ号で、AEO制度に以下のような優遇条項が追加された。

(1)税関への申告書の提出前に通関可能な商品の数量は、税関への担保額に制限されない(以前は担保額を超える場合は追加担保が必要だった)。
(2)AEO事業者が1年間に数回行政罰を科された際、罰金が定められた期間内に納付済みで、その総額がAEO事業者が行政違反法で規定されている期間に支払った関税やその他輸入税の3%以内である場合、税関はAEO事業者からAEO認定証を剥奪できない。
(3)AEO登録手続きでの税関への担保(保証金あるいは銀行保証)の提供期間を登録仮決定の通知後30日以内から60日以内にし、登録申請に必要な資料リストを削減する。経済犯罪の前科の有無は、申請受領後に審査される。

(齋藤寛)

(ロシア)

ビジネス短信 53c5dc18ed8c8