外相理事会、ウクライナ問題で対ロシア追加制裁措置を決定
ブリュッセル事務所
2014年03月18日
EU外相理事会は3月17日、クリミア自治共和国での16日の住民投票実施を受けて、同自治共和国のセルゲイ・アクショノフ首相ら21人に対するEU域内への渡航禁止や資産凍結という制裁措置を決定した。これは、3月6日の臨時欧州理事会(EU首脳会議)での決定に沿った措置で、前日(16日)の欧州理事会常任議長と欧州委員会委員長による共同声明でも予告されていた。
<アクショノフ首相ら21人の渡航禁止と資産凍結を決定>
EU外相理事会は3月17日、同6日の臨時欧州理事会(EU首脳会議)の共同宣言に沿って(2014年3月7日記事参照)、ウクライナの領土保全と主権、独立、および関連する人々や組織・団体を傷つける、あるいは脅かす行動の責任を負う人々に対する制限的な措置を決定した。この制裁措置は3月17日付理事会決定(2014/145/CFSP)で規定され、同日付理事会規則(2014/269/EU)にて適用される。
上記措置に関し、クリミア自治共和国のアクショノフ首相やロシアのビクトル・オゼロフ上院国防安全保障委員長ら21人を、EU域内への渡航禁止と資産凍結の対象とした。
今回の追加措置は、6日の臨時欧州理事会で、ウクライナとロシアとの交渉を促し、決められた期限内に結果が出ない場合には、追加措置を決定するとしていたもの。ウクライナのクリミア自治共和国で16日にロシア編入に向けた住民投票が実施されたことを受けた措置となる。
<住民投票は違法で結果は認められないとの声明を発表>
欧州理事会のファンロンパウ常任議長と欧州委のバローゾ委員長は16日、翌17日の外相理事会に先駆け、クリミア自治共和国に関する共同声明を発表していた。
共同声明は、(1)ウクライナ領土の将来のステータスに関する住民投票の実施はウクライナ憲法に反しており、違法で、その結果は認められていない、(2)危機を解決するには、ウクライナ・ロシア両政府の直接協議が必要で、EUとしても、その実現にあらゆる協力を惜しまない、(3)ロシア軍の撤退と、危機前の状態に回帰する、(4)17日の外相理事会で、6日の臨時欧州理事会の共同宣言に沿って追加措置に関する決定を行う、などとしていた。
外相理事会が17日に発表した決議もほぼ16日の共同声明の内容に沿ったもので、クリミア自治共和国での住民投票は違法であり、その結果は受け入れらないと繰り返すとともに、ウクライナとロシアの建設的な対話の促進を支援する用意があることなどを強調する内容となっている。
<外相理事会はウクライナ支援をあらためて強調>
また外相理事会は、ウクライナの対EU輸出の関税を一時的に撤廃する欧州委の提案を歓迎し、その速やかな採択に期待感を示した。さらに、EUとウクライナとの連合協定のうち、政治規定についてはブリュッセルで21日に調印することや、同協定のその他の部分についても調印手続きを約束することにも期待を寄せた。これらは、EUとの政治連合や経済統合を追求しようとするウクライナの決定を確認するための一歩になるとした。
さらにウクライナに対して、経済・財政の安定化のため、強力な財政支援の提供を約束していることをあらためて強調し、欧州委が示している支援パッケージ(2014年3月7日記事参照)を速やかに実施していくとした。他方、ウクライナ政府に対し、汚職対策や財政支出の透明性強化を含む野心的な構造改革に早急に着手するよう求めた。
外相理事会は加えて、ビザ自由化行動計画の枠組みで合意した条件に沿ったビザ自由化プロセスを通じて、EUとウクライナ間の市民交流の強化をしていく約束を確認した。
(田中晋)
(EU・ウクライナ・ロシア)
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