日本企業の投資・活動の拡大に期待−アフリカ・シンポジウム(1)−
海外調査部
2013年06月27日
ジェトロと経済産業省は5月31日、第5回アフリカ開発会議(TICAD V)の機会を捉え、アフリカビジネスに取り組む日本企業を招いた「アフリカ・シンポジウム」を横浜ベイホテル東急で開催した。その概要を4回に分けて報告する。1回目は、主催・共催機関からの出席者のほか、4人の来賓が行ったあいさつを紹介する。
添付ファイル:
資料( B)
<「信頼できるビジネスパートナーに」>
アフリカ・シンポジウムは、TICAD V(6月1〜3日開催)の公式イベントとして、ジェトロと経済産業省が主催、横浜市と世界銀行グループが共催、外務省、日本経団連、日本経済新聞社が後援し開催された。テーマは「アフリカ・ビジネスの新潮流〜アフリカの活力と企業の活力〜」。出席者は約400人と盛況だった。
ジェトロの石毛博行理事長は「近年のアフリカ情勢は大きく変化しており、アフリカは援助の対象からビジネスの対象になっている」と指摘した。また「世界各国、中でも中国や韓国、ブラジル、インドが存在感を高めており、日本も乗り遅れることなくアフリカとの経済関係を強化していく必要がある」とし、「ジェトロは、日本企業によるアフリカ投資の促進、双方の貿易拡大、日本企業のインフラビジネス参入、アフリカの地元産業・人材育成への貢献の4つの柱を中心に支援を強化する」と述べた。
経済産業省の上田隆之通商政策局長は「日本企業とアフリカ企業の関係が、さまざまな分野で深まりつつある」とした上で、「政府のさまざまな政策を総動員し、日本とアフリカの関係を一段高いレベルに向上させていきたい。そして、日本とアフリカが信頼できるビジネスパートナーになることを、TICAD Vに際しての目標にしたい」と述べた。
横浜市の林文子市長は、前回(2008年)のTICADを横浜で開催したことを契機に、横浜市がアフリカとの絆を着実に前進させてきたと述べた上で、市内の小中学校がアフリカ各国について学ぶ「一校一国運動」を展開し、未来を担う子どもがアフリカへの理解を深めてきた事例などを紹介した。また、豊かな資源と人材に恵まれたアフリカは「多様な可能性と希望に満ちている」とし、「市内企業のアフリカへの関心が高まっている」と今後のビジネス拡大に期待を寄せた。
世界銀行のマクタール・ディオップ・アフリカ地域総局副総裁は、近年のアフリカの目覚ましい経済発展の背景には、「アフリカ各国の指導者の努力があった」と指摘した。また、さまざまな課題があるとしながらも、適切な投資や政策により、「農業は大きく成長する可能性を秘めている」とした。さらにエネルギー・電力の整備が製造業の出現につながり、雇用の創出や貧困削減に結び付くため、日本企業による技術移転に期待を示した。
<製造業分野などへの日本企業参入に期待>
2013年1月からアフリカ連合(AU)の議長を務めているエチオピアのハイレマリアム・デサレン首相は、近年アフリカで世界各国の企業によるビジネス競争が激化している状況に触れ、日本からの投資のさらなる活性化を呼び掛けた。特に従来型の天然資源中心の投資だけでなく、付加価値の高い製造業分野などへの投資に期待を示した。そのためには「2国間および多国間の協定などを通じた政府の関与が重要」と述べた。加えて、これまでの日本企業のアフリカでの活動から明らかになった問題点を改善するとともに、日本企業のビジネス活動を円滑化するために、アフリカ各国の政府としても支援体制を強化する、と意欲を示した。
2011年にノーベル平和賞を受賞したリベリアのエレン・サーリーフ大統領は「この10年間、アフリカは高成長を維持しており、外国からの投資も拡大、インフラ整備や若者の雇用促進も着実に進んでいるが、まだ改善の余地はある」とした。日本からアフリカへの投資も増えているが、それが特定の国に集中している点に懸念を示し、ジェトロの支援によるアフリカ全土での日本企業の活動の拡大を求めた。アフリカは世界経済の成長に貢献する力を持ち、潜在力と可能性を秘めた大陸だとして、本シンポジウムを経てさらに協力関係が強化されると強調した。
マラウイのソステン・グウェングエ産業貿易相は「アフリカに必要なのは、質と量を備えた民間からの投資だ」とした。また自国の有望な分野として農業、鉱業、観光、エネルギー、インフラの5つの分野を挙げつつ、プロジェクト実施のためには「電力が必要で、エネルギー分野にも商機がある」として、強固なインフラとイノベーションを推進する力を持つ日本企業のアフリカ参入を訴えた。
日本・AU友好議員連盟幹事長で衆議院議員の三原朝彦氏は、シンポジウム開催への祝辞を述べ、国際社会がアフリカへの支援を削減する中、TICADが始まった1993年から日本がアフリカの重要性を認識し援助を続けてきた実績を紹介した。また「援助体制の拡充と貿易・投資の促進を中心とするビジネス関係強化の両輪で、アフリカとの関係を築くことが重要」「日本政府は政府機関などをフルに活用し、アフリカの発展に尽くすべきだ」と語った。
なお、あいさつは行わなかったが、ケニアのルト副大統領も来賓として出席した。
(水野嘉那子)
(アフリカ)
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