BOIが新投資奨励策の草案を発表−2013年央に施行へ−

(タイ)

バンコク事務所

2013年01月23日

タイ投資委員会(BOI)は1月14日、2013〜2017年の新投資奨励策の草案を発表した。現行の奨励策との大きな違いはゾーン別の恩典制度を廃止し、特定産業を奨励する制度に変更することだ。BOIの恩典を得られる業種は減り、政府が重要視する業種に対して恩典を厚くする案になっている。BOIは今回の案に対する意見・質問を2月28日まで募集する。なお、新制度運用開始後も既に現行制度で承認を受けている恩典は期限終了まで維持するとしている。

<奨励対象をゾーン別から業種別に切り替え>
BOIは2013年1月14日、バンコク市内で2013〜2017年の新投資奨励策の草案を発表し、同時に新戦略に対するパブリック・ヒアリングも開催した。新制度ではこれまでバンコクから離れるほど法人税免税などの恩典を厚くしていたゾーン制を廃止し、特定業種に対して奨励恩典を付与するとしている。

新制度で法人税の免除を受けられるのは「タイの経済構造改革にとって非常に重要」としてグループAに分類される101の業種(表参照)。また、この中でも最大8年間の法人税免除を受けられるのは32業種に限られる。法人税の免除を受けられないが、機械や輸出のための原材料の輸入関税の免税恩典または非税制面での恩典を受けられる事業はグループBに分類される(23業種)。これまで奨励されていた業種であっても、政府が投資を促進する必要がないと判断し、奨励対象から外れる業種はグループCに分類される(約80業種)。

新制度では、これまでの地域別ゾーン制は廃止される。従って、例えば表のA3に属する事業を東北地方などのゾーン3で行った場合、現行制度では法人税免税期間は最大で8年(さらに5年の法人税半減)だったが、新制度施行後は国内どこに立地してもこれまでのゾーン1(工業団地内)と同様の3年となる。

なお、A1、A2、A3のグループについては、売り上げに対する研究開発(R&D)費用の割合や金額に応じて1〜3年の法人税免税恩典が追加される。そのほかにも、ISO 14000などBOIが認めた基準認証を受けた場合、奨励対象の工業団地や工業区内へ立地した場合にはそれぞれ1年の法人税免税恩典が追加される。

BOI新恩典制度の概要

<地方での産業クラスター形成を打ち出す>
BOIはゾーン分けを廃止する代わりに、新たな地方への産業誘致策として地方での産業クラスター形成を打ち出した。国境地帯や各地方の特色に合わせた産業クラスターを形成することを奨励する。このためにインフラと工業地域の整備、公共料金の割引、人材育成、財政および税制面での支援を行うとしている。現在、案として食品加工、ハラール食品、ゴム、ファッション、航空機などの産業クラスターが挙げられているが、具体的なクラスターを形成する産業の選定や、対象地域、投資奨励恩典など支援方法は「地方新産業クラスター開発推進小委員会」を設立して議論するとしている。

<対象業種はBOIのウェブサイトで確認を>
新制度で奨励される業種はこれまでと同様に、a.農業および農産品からの製造業、b.鉱業、セラミックス、基本金属、c.軽工業、d.金属製品、機械、輸送機器、e.電子・電気機器、f.化学、製紙およびプラスチック、g.サービス・公共事業の7分類になる。しかし、新制度では奨励から除外、恩典が減る業種が多数あることに注意が必要だ。詳細は、以下のBOIのウェブサイトに記載されている。

○農業および農産品加工業(8、9ページ)、軽工業(10、11ページ)
英語(PDF)
タイ語(PDF)

○鉱業、セラミックス、基本金属(7〜9ページ)、金属製品、機械および輸送機器(10〜13ページ)
英語(PDF)
タイ語(PDF)

○電子・電気機器(7〜9ページ)
英語(PDF)
タイ語(PDF)

○化学、製紙、プラスチック(7〜8ページ)、サービス・公共事業(9〜12ページ)
英語(PDF)
タイ語(PDF)

<2月28日まで意見・質問を受け付け>
企業が最も注目するのは、これからタイでの投資を考えている事業が、今後も奨励業種に該当するのかどうか、また、奨励業種となるのであればどの程度の恩典が与えられるかだ。しかし、バンコクでのパブリック・ヒアリングでは、奨励業種から外れる事業をさらに拡張する際の恩典の有無について質問があったものの、ウドム・ウォンウィワットチャイBOI長官は「追って回答する」と明確な回答を避けるなど、総論に関する部分でも不明な点が残る。BOIには、恩典を受けて操業している企業に対する影響を把握し、それに対する検証・対応が求められる。

今後、バンコクで開催されたのと同様の新投資奨励策の草案の発表会およびパブリック・ヒアリングが地方都市で以下のスケジュールで開催される。

(1)1月24日:チョンブリ
(2)2月4日:チェンマイ
(3)2月11日:ナコーン・ラーチャシマ
(4)2月18日:スラタニ

バンコクで開催されたパブリック・ヒアリングでは、電子・電気機器分野の地場企業から「(電子・電気機器分野の)A3−10にエアコン、冷蔵庫、洗濯機、ドライヤーと書かれているが、当社はこれらに属さない家電部品を製造している。その場合、B1に分類され法人税免税恩典を受けられない。従って、A3−10には個別製品を記載するのではなく、家電製品と変更して欲しい」といった要望が上がっていた。パブリック・ヒアリング期間中はこういった要望を行うことができる。また、2013年2月28日までであれば「strategy@boi.go.th」にメールを送ることでBOIに意見表明や質問をすることができる。なお、バンコク日本人商工会議所は、会員企業から質問・意見をまとめ、2月末までに提出する予定。BOIは聴取した意見を基に、3月には新投資奨励戦略と基準を公式発表し、2013年中ごろ(早ければ6月)から施行する予定だ。

(長谷場純一郎)

(タイ)

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