緊縮財政路線継続、ユーロ離脱は回避−国民議会再選挙の結果−
ミラノ発
2012年06月19日
ギリシャ国民議会(一院制、定数300、比例代表制)の再選挙が6月17日投開票され、「ユーロ残留」を掲げた新民主主義党(ND)が5月の選挙に引き続き第1党となった。ギリシャのユーロ圏離脱の事態はひとまず避けられる見通しとなったが、緊縮財政の見直しを訴えた急進左翼進歩連合(SYRIZA)も5月を上回る得票率を獲得した。ギリシャでは緊縮財政に対する国民の不満は着実に高まっており、経済界は「変革は全ての政党の責任で、与野党の協力が必要」との認識を示すなど、新政権はさらに難しい運営を迫られることになる。
添付ファイル:
資料( B)
<緊縮財政路線に支持>
再選挙は5月6日の国民議会選挙の結果、連立の枠組み協議がまとまらなかったことから実施された。
内務省によると、投票率は62.47%で、前回の65.10%から2.63ポイント下がった。各党の得票率は、前回選挙で18.85%を得て第1党だったNDが29.66%を獲得し、第1党の地位を維持した。同党は2013〜14年としていた117億ユーロの歳出削減の期限を、2年延長して16年とする公約を掲げており、国民が緊縮財政路線を支持したかたちとなった(添付資料参照)。
しかし、IMF、欧州中央銀行(ECB)、欧州委員会の3機関(トロイカ)との第2次支援のためのメモランダム破棄を訴えるなど、緊縮財政路線の見直しを掲げたSYRIZAの得票率も、前回(16.78%)を上回る26.89%に達した。NDと2.77ポイント差に迫る勢いで第2党の地位を確保した。09年10月の選挙で43.92%の得票率を得て第1党だった全ギリシャ社会主義運動(PASOK)は12.28%にとどまった。
議席数では、ND129議席、SYRIZA71議席、PASOK33議席で、もともと連立与党を構成していたNDとPASOKが合計162議席で過半数を上回ることになり、ユーロ圏離脱の事態は当面避けられる見通しとなった(表参照)。
<経済界は「与野党協力の必要」>
投開票から一夜明けた6月18日のアテネの市民生活は、普段と変わらない様子だった。
ジェトロがアテネ市内で複数の有権者に聞いたところ、旅行・観光業部門に勤務する50代の男性は「公的部門で働く人々が既得権益にばかり目を奪われている状況を改革しなければ何も変わらない」と公的部門の改革を訴えた。この男性は「国民はもっと現実的にならないといけない」と、厳しい経済環境が続く現状をさらに厳しく捉えることが必要だと訴えた。民間部門に勤務する40代の女性は「ギリシャが良くなって欲しいという思いでNDに投票したが、組閣がどうなるかまだ分からない」として、政局の混乱が続くことに不安を示した。また、小売店で勤務する男性は「数ヵ月後をみないと分からない」と、不安や不透明感を訴えた。
また、現地の「タ・ネア」紙電子版(6月18日)によると、ギリシャ企業連盟(SEV)は選挙結果を受けて声明を発表した。SEVはギリシャは経済の閉塞、財政赤字、高失業率、社会の分裂へのカウントダウンの中にあると指摘。国、生産モデル、社会理念を変化させることは全ての政党の責任、課題だとし、難局を乗り越えるためには与野党の協力が必要だとの認識を示した。
(三宅悠有、野嶋生代)
(ギリシャ)
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