JTEPAで自動車部品100品目の関税撤廃を決定−12年と14年の4月1日に実施−

(タイ、日本)

バンコク発

2011年05月27日

日タイ経済連携協定(JTEPA)の下で、ギアボックス、クラッチ、シートベルト、エンジン・同部品などの自動車部品計100品目の輸入関税が2012年と14年に撤廃される。タイ商務省貿易交渉局は、関税撤廃の対象となる100品目を関係機関に通知した。これらの品目は、関税撤廃の条件を「ASEAN自由貿易地域(AFTA)完成」としていた。関税撤廃は企業の投資判断を大きく左右するため、経済産業省や外務省など日本政府は「AFTA完成」の確認に奔走していた。

添付ファイル: 資料PDFファイル( B)

<関税撤廃はAFTA完成が条件>
JTEPAは07年11月に発効した。10年以内に日本からタイへの輸出の約97%、タイから日本への輸出の約92%の関税を撤廃、自由化する(04年財務省貿易統計ベース)。日本からタイに輸出する際に適用されるJTEPA協定税率は、協定書(英文版)の「Annex 1:Schedules in relation to Article 18」(関税譲許表)を確認する必要がある。

関税譲許表の第3欄(区分)は関税削減・撤廃分類、表4欄にはその注釈が付されている。第3欄は、A(即時撤廃)、Bn(協定の発効日から「n+1回」の毎年均等な関税引き下げ、基準税率から「n+1回」で撤廃)、Q(関税割り当て)、R(再交渉)、X(除外品目)、そして今回対象になるP(発効日から不均衡な関税引き下げ、または撤廃)とに分けられる。

今回対象になる区分「P」で、表4欄の注釈「13」はAFTA完成時期/関税撤廃時期が10年3月31日までならば6年目、10年3月31日以降ならばAFTA完成12ヵ月後に、また注釈「14」はFTA完成時期/関税撤廃時期が10年3月31日までならば8年目、10年3月31日以降ならばAFTA完成36ヵ月後に、当該品目の関税を撤廃することがそれぞれ約束されている。

HS8ケタベースで、注釈「13」はギアボックス、クラッチ、シートベルトなど80品目、注釈「14」はエンジン・同部品など20品目で、計100品目ある。ただしこれらは、自動車組み立て用部品または自動車の構成部品および付属品となる自動車部品に限られる。

10年8月25日に開催されたASEAN経済相会議では、先行加盟6ヵ国では10年1月に99.65%の品目で関税が撤廃され、AFTAが実現したことが経済相間で確認されている。仮に、タイ政府が「AFTAの10年1月完成」を認めれば、注釈「13」の80品目は12年4月1日に、注釈「14」の20品目は14年4月1日に、それぞれ撤廃されることになっていた(添付資料参照)。

<「AFTA完成」を確認>
AFTAが完成すれば、タイ政府は日本政府に対し協定に基づき通報することになっている。日本側はAFTAが完成したとみられる10年1月以降、物品小委員会などタイ政府と対話する機会をとらえて「AFTA完成」の確認をたびたび求めていた。12年4月、14年4月の関税撤廃実現の有無は企業の投資判断を大きく左右するため、日本政府だけでなくジェトロに対しても、関係企業から頻繁に問い合わせがあった。

タイ商務省貿易交渉局アジア・太平洋事務局はPorNor0605/Wor387号で関係機関に対し、JTEPAに基づき、12年4月1日と14年4月1日で関税が撤廃される自動車部品一覧情報を通知した。

ただし、これまでのところタイ政府はウェブサイトなどでの告知はしていない。タイ商務省貿易交渉局は、タイ税関による関税撤廃に関する告示を待って、同局のウェブサイトでも告知する予定。タイ税関による告示は関税撤廃直前に出される見込みで、正式な通知はしばらく待つ必要がある。これまで日本だけで製造している高付加価値部品を中心に、JTEPAによる関税削減・撤廃の恩典を享受できる品目が100品目拡大することになる。それらを製造する部品企業、また、自動車メーカーの双方が、JTEPA利用を通じて価格競争力を高めることになる。

(助川成也)

(タイ・日本)

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