温室効果ガス排出削減の政府目標達成に厳しい見通し

(オランダ)

アムステルダム発

2019年11月22日

オランダ環境評価局(PBL)は11月1日、「気候とエネルギー見通し(KEV)2019」を発表した。KEVはオランダのエネルギー供給と消費、温室効果ガス排出など、気候とエネルギーに関する調査で毎年実施される。

KEV2019では、温室効果ガスの総排出量(CO2相当)は、1990年の222メガトンから2018年は189メガトンに減少(1990年比15%減)、2030年には144メガトン、1990年比では35%減(予測範囲:28~39%)になると予測している(表1参照)。排出削減量が多いのは電力部門で、2018年比でみた2030年の排出量減少(CO2相当約45メガトン)のうち、3分の2は電力部門によるとされている。

その要因は石炭火力発電の段階的停止と風力、太陽光発電の増加だ。石炭、天然ガス発電所の容量は2014年の28ギガワットをピークに下がり続け、2020年から石炭火力発電所の廃止が順次開始される。2030年には天然ガス発電所だけとなり、容量は13ギガワットまで低下するとみられる。2030年にはオランダの電力生産の3分の2以上を風力と太陽光発電が占め、天候などにより電力供給が減少する際にガス火力発電所が稼働することになる。

表1 国内およびセクターごとの温室効果ガス排出量

石炭火力発電の段階的停止と風力、太陽光発電の増加は、最終エネルギー消費に対する再生可能エネルギーの比率を引き上げ、2018年の7.4%から2020年に11.4%(予測範囲:10~12%)、2030年には25.0%(予測範囲:21~26%)に達するとみる(表2参照)。

表2 資源価格とエネルギー

6月に政府が策定した「国家気候協定」(注)には、2030年までに温室効果ガスを1990年比で49%削減する目標が盛り込まれているが、KEVの予測ではこれに届かず、今後10年でこれまでの倍以上の削減をしなければならない。また、EUの「再生エネルギー指令」(2009年)に基づき、オランダは2020年までに最終エネルギー消費に対する再生可能エネルギーの比率を14%とすることを目標としているが、KEVの予測ではこれにも届かず、達成が困難な見通し。温室効果ガスの排出量削減は進んでいるが、野心的な目標を達成するにはさらなる努力が必要な状況だ。

(注)オランダ経済・気候政策省が温室効果ガス排出削減策をまとめたもので、オランダの温室効果ガス排出を2030年までに1990年比で49%削減、2050年には95%削減させ、パリ協定の履行をめざす。

(高橋由篤)

(オランダ)

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