8月の米雇用統計、雇用環境の停滞改善を示唆も賃金上昇の影響は限定的

(米国)

ニューヨーク発

2026年09月07日

米国労働省労働統計局(BLS)は9月4日、2026年8月の雇用統計を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。失業率は低水準に保たれており、内容も雇用者数の増加や労働参加率の上昇が確認されるなど、このところの雇用環境(2026年8月14日記事参照)の停滞が改善に向かっていることを示唆している可能性がある。ただし、賃金の伸びは物価の伸びと同程度であり、成長のエンジンとなるほどではない点に留意が必要だ。

就業者数(前月差56万9,000人増)、失業者数(同11万5,000人増)、労働参加率(61.6%、前月から0.2ポイント上昇)を踏まえた、8月の失業率は4.1%(注1)と、7月(4.1%)から変化がなかった(添付資料表1、図1参照)。失業率は表面上変化がなかったが、内容をみると、就業者数および失業者がともに伸びる中で労働参加率が上昇しており、このところ停滞していた労働市場の改善を示唆しているようにみえる。広義の失業率(注2)は7.7%(7月7.9%)と、前月から0.2ポイント低下した。一方、平均失業期間は26.3週(7月24.9週)と前月から伸びた。

事業所調査(注3)の結果も労働市場の堅調さを示している。非農業部門の新規雇用者数については、16万2,000人増と市場予想(5万3,000人増)を大きく上回った。また、3カ月移動平均では7万1,000人増とダラス連銀が試算する外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます「ブレーク・イーブン(注4)」である約3万人を十分に上回る水準となっている。

内訳では、政府部門が3万5,000人増、民間部門が12万7,000人増だった。業種別では、娯楽・接客業(6万2,000人増)、教育・医療(2万9,000人増)、建設業(2万2,000人増)、製造業(1万6,000人増)、商業・運輸・倉庫業(1万6,000人増)などの増加が主たる要因となっている(添付資料表2、図2参照)。情報業(2万3,000人減)および金融業(1万1,000人減)は減少したものの、幅広い業種で雇用増加が確認された。

賃金に関しても前月比増を示しているが、伸びの大きさには留意が必要だ。平均時給は37.8ドル(7月37.7ドル)、前月比0.3%増(7月0.2%増)、前年同月比3.8%増(7月3.1%増)と伸びは高まり、市場予想(前月比0.3%増、前年同月比3.0%増)と同程度か上回る結果となっている。また、労働省や民間機関が発表している求人に関する統計では、引き続き低調ながら労働需要は下げ止まりの傾向もみられる。ただし、賃金の伸びは消費者物価指数(CPI)の伸びと同程度となっており、実質的な購買力を大きく押し上げるほどとは言えない点に留意が必要だ。

8月の結果は、一部に留意が必要な点もみられるものの、おおむね、このところの雇用環境の停滞が改善していることを示唆する結果となった。次回以降の連邦公開市場委員会(FOMC)で、連邦準備制度理事会(FRB)が労働市場の動向よりもインフレリスクにより注目する根拠を提供したといった見方が報道されている。

(注1)公式統計を基にジェトロが計算。小数点第2位までの数値で比較すると、8月は4.14%と前月(4.09%)から0.05ポイント上昇。

(注2)失業者に加え、「現在は仕事を探していないが、過去12カ月の間に求職活動を行った者」と「フルタイムを希望しているものの、非自発的にパートタイムを選択している者」を合わせて算定した数値。

(注3)雇用統計は失業率などを含む家計調査と、非農業部門新規雇用者数や平均賃金などを含む事業所調査の2種類の統計から成り立っている。

(注4)失業率が上昇しないために必要と考えられる新規雇用者数を指す。バイデン前政権下の緩和的な移民政策のもとで外国人労働力が大きく増加した2023年のブレーク・イーブン雇用者数は約16万人だったが、トランプ政権下では外国人労働力を中心に労働供給が大幅に減少した結果、数値は大きく低下している。

(當麻江美)

(米国)

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