次期フランス大統領選主要候補者7人による初の経済政策討論会開催、財政再建か成長投資か、違い鮮明に

(フランス)

パリ発

2026年09月01日

2027年の次期フランス大統領選に向けて8月27日、日本の経団連にあたる「フランス企業運動(MEDEF)」の年次大会(REF)で主要候補7人による初の本格的な経済政策討論会が開かれた。

討論には、ジャン=リュック・メランション氏(極左「不服従のフランス(LFI)」)、ラファエル・グリュックスマン氏(中道左派「プラス・ピュブリック」)、マリーヌ・トンドリエ氏(環境政党「エコロジスト党」)、ガブリエル・アタル氏(中道「ルネサンス」)、エドゥアール・フィリップ氏(中道右派「オリゾン」)、ブルーノ・ルタイヨ氏(保守右派「共和党」)、マリーヌ・ルペン氏(極右「国民連合(RN)」)の7人が参加し、公的債務、年金改革、雇用、再工業化、環境投資などをテーマに持論を展開し、違いが鮮明になった。

左派候補は国家による投資拡大と産業政策を前面に押し出した。メランション氏は、「環境計画」(国家主導で脱炭素化やエネルギー転換を進めるアプローチ)、法人税の累進化、金融取引に対する課税強化を柱とする包括的な政策を提唱し、国家主導の経済転換を主張した。グリュックスマン氏は環境革命、資産や相続に依存する社会ではなく「働く人々の社会」への変革、技術革新を柱とする国の立て直しに向けた「愛国的契約(社会契約)」を提唱し、フランスの産業基盤の再強化を訴えた。トンドリエ氏は法定最低賃金(SMIC)の月額2,000ユーロへの引き上げや中小企業向け支援策、脱炭素投資促進策を掲げた。

一方、中道・右派候補は財政再建と企業競争力強化を重視した。フィリップ氏は次期大統領の最優先課題として財政秩序の回復を挙げ、「まず予算を立て直すべきだ」と主張した。アタル氏は経済成長の重要性を強調し、企業負担の軽減や競争力回復を訴えた。ルタイヨ氏は減税と規制緩和を柱に、週35時間労働制の柔軟化や労働法の適用における企業の裁量権拡大を提案した。ルペン氏は、1,250億ユーロ規模の歳出削減計画を打ち出し、財政再建を重視する姿勢を示した。同時に、企業競争力の強化に向けて、企業付加価値負担金(CVAE)、企業不動産負担金(CFE)、企業連帯社会拠出金(C3S)について、単なる税率引き下げではなく廃止を主張したほか、不要・有害な規制を撤廃すべきだとの考えを示した(注)。

年金改革を巡って各候補の立場は分かれた。ルタイヨ氏は平均寿命に応じた受給開始年齢の調整を提案した。一方、ルペン氏は「20歳未満で就労を開始した人は60歳で退職できる」とした上で、将来的には「42年間の保険料拠出と法定退職年齢62歳」を基準とする制度へ段階的に移行すると主張。メランション氏とトンドリエ氏はマクロン大統領が実施した年金改革の撤回と退職年齢の60歳への引き下げを訴え、アタル氏は保険料納付期間を基礎とする新たな制度の導入を掲げた。

現地の報道によれば、討論会に出席した企業経営者からは、アタル氏やフィリップ氏を高く評価する声が聞かれた一方、グリュックスマン氏も具体的な数値を用いた説明が好意的に受け止められた。一方でルペン氏については、「期待されたほど印象的ではなかった」との声も聞かれた。

MEDEFが8月25日に発表した、6万5,872人の企業経営者を対象に実施したオンライン調査(実施期間:4月15日~7月15日)によると、82%が次期大統領の経済政策に悲観的な見方を示し、66%は現状が続けば自社経営が悪化すると回答した。次期政権への要望としては、企業負担の軽減(83%)、再工業化(81%)、規制・行政手続きの簡素化(75%)、公的債務と歳出削減(75%)が上位を占めた。MEDEFはこの調査結果を基に、企業の投資や雇用を促す政策を大統領選の中心議題とするよう要求し、各候補に経済再建策の提示を求めている。

(注)フランスの法人税やその他税制についてはジェトロウェブサイト「税制」を参照。

(山崎あき)

(フランス)

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