米ノースカロライナ州、PFAS汚染巡りケマーズなどと総額5億9,000万ドルで和解
(米国)
アトランタ発
2026年09月14日
米国ノースカロライナ州のジェフ・ジャクソン司法長官は9月10日、有機フッ素化合物(PFAS、注1)による環境汚染を巡り、化学メーカーのデュポンおよびケマーズなどとの間で総額約5億9,000万ドルで和解に合意したと発表
した。州政府と11の自治体への4億5,500万ドルの和解金の支払いに加え、ケマーズが将来的な浄化義務を履行できなくなった場合に備える1億3,500万ドルの保証基金の設置が含まれる。州当局は、今回の合意を州史上最大の環境損害回復案件として位置付けている。
和解は、ノースカロライナ州フェイエットビル近郊の工場からのPFAS排出に関する訴訟に加え、PFASを含む泡消火剤(AFFF)に関連する州側の請求などを対象とする。同工場では、半導体や電子機器向け部材、データセンター向け冷却材などに用いられるフルオロポリマーを製造している。
今回、PFAS汚染が発生した当時に工場を所有・運営していた旧デュポンのEIDP、および現在の操業主体であるケマーズとその工場運営子会社が和解当事者となった。さらに、旧デュポングループの企業再編後の承継会社であるデュポンとコルテバも和解当事者に含まれている。和解金の負担割合は、ケマーズが50%、デュポンが35.5%、コルテバが14.5%とされ(注2)、履行保証のための基金はコルテバとデュポンが提供する。汚染発生当時の主体であるEIDPも和解当事者に含まれたが、和解契約上、和解金や保証基金の負担主体とはされていない。
本件は、企業再編や事業譲渡を経た後も、過去の環境汚染を巡る責任が追跡され得ることを示す事例だ。米国では製造拠点ごとに法人を分離する手法が一般的だが、環境汚染案件においては現在の操業会社だけでなく、汚染発生当時の事業主体や企業再編後の承継会社にまで責任が及ぶ場合がある。このため、日系企業が米国でM&Aや工場を買収する際には、対象資産の環境デューディリジェンスや環境負債に関する補償条項の精査が重要となる。
PFASは耐熱性や耐水性などの特性から半導体、電子機器、自動車部品など幅広い用途で使用されている。一方で環境中において分解されにくいことから、米国では連邦・州レベルで規制や訴訟対応が進められている(2026年4月17日付地域・分析レポート参照)。
ノースカロライナ州では2023年11月、米国環境保護庁(EPA)がケマーズによるオランダからのPFAS含有廃棄物(GenX)の輸入承認を取り消しており(2023年12月5日記事参照)、州政府はPFAS対策を継続して進めている。同州では、ケマーズやデュポンなどに対するPFAS関連訴訟がほかにも続いており、今回の和解は工場に起因する汚染問題の一部の請求の解決につながるものの、PFASを巡る法的・環境対応は引き続き注目される。
(注1)有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物の総称で、1万種類以上の物質があるとされる。
(注2)ケマーズによると、2021年1月にデュポンおよびコルテバと締結した覚書により、和解金の同社負担割合は50%と決まっていた。
(紀井寿雄)
(米国)
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