アルゼンチンの国営YPF、シェール・ガス輸出事業で大規模投資奨励制度(RIGI)を申請

(アルゼンチン、マレーシア、イタリア、アラブ首長国連邦)

ブエノスアイレス発

2026年08月25日

アルゼンチンの国営石油会社YPFは8月13日、バカ・ムエルタ・シェール層の天然ガスを浮体式液化天然ガス生産設備(FLNG)で液化し輸出する事業について、大型投資奨励制度(RIGI、注1)の適用を申請したと発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。事業は「アルヘンティーナLNG」と命名されたもので、2022年からマレーシアのペトロナスと共同で事業を開始、その後ペトロナスは離脱したが、イタリアのENI、アラブ首長国連邦(UAE)のXRGが参画し、事業内容が現在のかたち(注2)となり進められている。

具体的には、アルゼンチン南西部ネウケン州に位置するバカ・ムエルタ・シェール層で生産される非在来型の天然ガスを、南東部リオ・ネグロ州の大西洋岸プンタ・コロラド港までパイプラインで輸送し、同港が位置するサン・マティアス湾沖合に係留する2基のFLNGまで海底パイプラインで輸送して液化、そこからLNG(液化天然ガス)船に積み込んで輸出するというもの。

YPFの声明によると、事業の投資総額は510億ドルで、うち290億ドルが2031年までに実行される計画。290億ドルのうち、50億ドルは坑井の掘削など天然ガスの生産拡大に充てられ、残りの240億ドルはパイプラインの敷設、港湾の整備、関連複合施設の整備、2基のFLNG新設などに充当される。FLNG2基の合計処理能力は年間1,200万トン。完成すれば、向こう20年間で年間100億ドル相当の輸出が見込まれ、国の外貨収入にも大きく貢献するとYPFは説明する。

ガスとオイルの二刀流でエネルギー供給国に

8月23日付現地紙「インフォバエ」(電子版)によると、ガス・パイプラインは管径48インチのものが全長527キロメートルにわたり敷設され、輸送能力は日量約1億立方メートル。また、非営利組織のアルゼンチン石油供給者グループ(GAPP)の公式サイトによると、このガス・パイプラインは、同じバカ・ムエルタで産出されるシェール・オイルの輸送手段として先行して敷設作業が進んでいるVMOS(バカ・ムエルタ・オイル・スール)パイプラインと、83%を同じルートで並走するという。

バカ・ムエルタではシェール・オイルも生産され、同じプンタ・コロラド港の沖合から超大型タンカー(VLCC)で輸出される事業が進んでいる(2026年5月26日記事参照)。米国エネルギー情報局(EIA)の推計では、バカ・ムエルタ・シェール層の技術的回収可能埋蔵量はシェール・ガスで世界2位、同オイルで世界4位。

アルゼンチンのエネルギー産業は以前よりそのポテンシャルこそ認識されていたが、「あっても運べない」という課題が一方で指摘されてきた。RIGIという制度的後押しもあって輸送と輸出のインフラ整備が進むことで、単なるポテンシャルの段階から「確固たるプレゼンスを示す段階」に差し掛かってきたといえそうだ(注3)。

(注1)RIGIは鉱業、エネルギー、石油・天然ガス、インフラなど8つの分野で2億ドル以上の投資を実施する案件に対し、法人税や関税の減免、資本取引規制の例外措置などの恩典を30年間保証して与える制度。

(注2)当初はFLNGに加え陸上LNG設備の建設が想定されていたが、2024年末にペトロナスが離脱した後はより建設コストの低いFLNGのみとなった。

(注3)民間のパン・アメリカン・エナジー(PAE)の主導でYPFなども参加する別のシェールガス・パイプライン敷設事業(サン・マティアス・パイプライン事業)も、アルヘンティーナLNGに比べ規模は小さいが2026年6月にRIGIの承認を得て先行して進行中。バカ・ムエルタからサン・マティアス湾北部のサン・アントニオ・オエステ港まで敷設するもので、同じくFLNGで液化し、2027年中の輸出開始を目指している。

(峯村直志)

(アルゼンチン、マレーシア、イタリア、アラブ首長国連邦)

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