ブラジルのフラビオ・ボルソナーロ上院議員、次期大統領選に向けたマニフェストを発表

(ブラジル)

サンパウロ発

2026年08月26日

ブラジルのフラビオ・ボルソナーロ上院議員(注1)は8月13日、10月4日に実施される大統領選挙に向けたマニフェスト「ブラジルが停滞を克服するために」を高等選挙裁判所(TSE)に登録した。マニフェストは9つの重点分野で構成され、全76ページに及ぶ。第1項の「恐れのないブラジルへ」では、治安対策を政権の第一の課題に掲げている。具体的には、国内の犯罪組織を麻薬テロ組織に指定して取り締まりを強化することや、刑事責任年齢を18歳から16歳に引き下げること、有罪判決を受けた性犯罪者(児童への性的虐待の加害者を含む)に対する化学的去勢制度(注2)の導入などを盛り込んでいる。

第3項の「行列のないブラジルへ」では、ビジネス環境の改善に向け、会社設立などの行政手続きの簡素化・デジタル化を推進する。これにより、企業経営者が、より重要な業務に専念できるようになり、ブラジルへの投資拡大につながるとしている。

第4項「家計にやさしいブラジルへ」では、電力料金や燃料に係る税負担の軽減を打ち出している。また、2023年12月に公布された消費税制簡素化に向けた憲法改正法の見直しも掲げている(2024年3月12日付地域・分析レポート参照、注3)。マニフェストでは、同改正に基づく新制度において軽減税率や非課税措置の対象となる財・サービスが多数設けられた結果、付加価値税(IVA)の標準税率が30%程度と経済協力開発機構(OECD)平均の19%を大幅に上回る見通しになったとして、例外措置の縮小と標準税率の引き下げが必要だと主張している。

第7項の「成長するブラジルへ」では、現状で関係が悪化している米国、アルゼンチン、イスラエルとの関係修復に取り組む一方、中国や欧州を含む各国・地域との協力強化を進める方針を示した。また、中断しているOECDへの加盟プロセスの再開を最優先課題に位置付け、その必須条件として外国為替取引に係る金融取引税(IOF)の段階的廃止を掲げている。

第8項の「憲法を厳守するブラジルへ」では、大統領の再選制度の廃止を掲げた。ボルソナーロ上院議員は3月2日、同趣旨の憲法改正案(PEC 4/2026)を上院に提出している(注4)。

第9項の「逆戻りしないブラジルへ」では、近年続く高金利環境を問題視するとともに、財政面での取り組みが伴わない限り、利下げは困難になるとの認識を示している。その上で、現行財政ルールの見直しによる公的債務の安定化と削減、基礎的財政収支の黒字化、国庫資金を用いた補助金付き融資の制限などを推進するとしている。また、国営企業の民営化プログラムの実施も掲げている。

現地誌「ベージャ」(8月14日)によると、財政支出の抑制や民営化を通じて小さな政府を目指す姿勢は、政府主導の経済運営を重視するルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領のマニフェスト(2026年8月13日記事参照)との主要な相違点の1つとされる。しかし、いずれのマニフェストについても、具体的な政策の詳細が十分に示されておらず、より踏み込んだ内容は投資家との会合で説明されていると指摘されている。

(注1)ジャイール・ボルソナーロ前大統領の長男。最大野党の自由党(PL)に所属する。主要世論調査では、現職のルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領に次ぐ支持率2位につけている。

(注2)性犯罪の再犯防止を目的に、抗アンドロゲン薬などの投与により男性ホルモンの分泌を抑え、性衝動を低減させる措置。外科手術を伴わず、投薬を中止すれば効果は失われるとされる。一部の国・地域で導入例があるが、人権や医療倫理の観点から議論がある。

(注3)税制改革法は2026年1月から施行されたが、2026年は移行準備期間と位置付けられており、企業に実質的な税負担は生じない。2027年から段階的な移行が開始される。

(注4)法案では、再選制度が存在する限り、大統領が必要な政策の実施よりも再選を優先する可能性があると指摘している。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル)

ビジネス短信 88290abe43ae6e99