大同メタルと阪和興業、非自動車産業向けの製造投資相次ぐ

(メキシコ)

調査部米州課

2026年08月07日

大同メタル工業と阪和興業は8月3日、それぞれメキシコでの生産能力増強や新拠点稼働を発表した。いずれも北米市場を見据えたサプライチェーン強化が狙いで、自動車産業以外の需要拡大を取り込む動きとして注目される。

大同メタル工業は、ハリスコ州にある「大同メタルメキシコ」で、データセンター向け発電機用エンジン軸受の生産能力を増強する。北米のディーゼルエンジンメーカーとの生産コミットメント契約に基づき、2027年度までに約40億円を投じ、新工場建屋を建設する。2026年秋に着工、2028年の生産開始を予定する。これにより、同社のデータセンター向け軸受のグローバル生産能力は現状比で1.5倍に拡大する(同社プレスリリース8月3日付PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。同社は、生成AI(人工知能)普及などを背景にデータセンター市場が拡大し、非常用発電機に加え、系統電力の不足を背景とした常用発電エンジン向けの需要も伸びていると説明している。今回の投資により、2030年には中高速エンジン向け軸受の売上高を2025年実績比で約1.6倍、うちデータセンター向けを約4.8倍に拡大する計画だ。

阪和興業は、バハカリフォルニア州ロサリト市にコイルセンター「ハンワ・スチール・サービス・ティファナ(HSTJ)」を設立し、8月から本格稼働を開始した。薄板鋼板の切断加工・販売を行う。同社グループのメキシコ国内加工拠点としては、グアナファト州に続く2拠点目となる。

ティファナ、メヒカリなどメキシコ北部国境地域は、米国向け製造業が集積する薄板鋼材の需要地。阪和興業は従来、米国側のサンディエゴ近郊にあるサンディエゴ・ビスタ・スチール・サービス(SDV)から同需要に対応してきたが、昨今の激動する外部環境に対応し(注1)、メキシコ側で供給体制を構築する。SDVのコイルセンター機能は2026年8月末をもってHSTJへ移管され、SDVは営業拠点として事業を継続する(同社プレスリリース8月3日付PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。SDVのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、電気・電子機器、空調機器、住宅設備、産業機械、医療機器など多様な産業向けに冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、塗装鋼板、ステンレス、アルミといった多様な薄板を供給している。バハカリフォルニア州はメキシコ国内でも、医療機器、電子機器、電子機器受託製造(EMS)、通信機器、航空機関連の集積地として知られており、HSTJはこれらに向けた多品種対応型サービス拠点として位置付けられる。

北米AIデータセンター需要にメキシコから対応

大同メタル工業の投資は、北米のAIデータセンター(AIDC)需要に対応した日本企業のメキシコでの拡張投資として、タムラ製作所の工場増強(2026年7月29日記事参照)に次ぐ2番目の案件だ。タムラ製作所はメキシコ工場を「北米AIDCの最前線」と位置付けている。台湾企業も北米AIDC需要にメキシコから対応し、鴻海、廣達、英業達などEMS大手がここ数年でハリスコ州、チワワ州、ヌエボレオン州にAIDC向けサーバー組み立てラインを新設、米国向けに輸出している(注2)。

(注1)プレスリリースに具体的な記述はないが、アジアなどから米国に鋼板を輸入し、米国側で加工して在メキシコ顧客に鋼板を供給する場合、外国貿易地域(FTZ)を利用している場合を除き、米国で1962年の通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウムに関する追加関税を支払う必要がある。他方、米国を経由せずにメキシコに直接輸入し、メキシコでスリット加工した上で顧客に供給すれば、顧客が生産する対米輸出製品が鉄鋼・アルミ派生品とみなされる場合を除き、追加関税の負担を免れることができる。

(注2)米国商務省の貿易統計によると、米国の2026年上半期(1~6月)のサーバー(非携帯情報処理装置:HTS8471.50.01.50)の輸入額は、前年同期比3.7倍の約1,417億ドルに達する。メキシコは台湾に次ぐ米国のサーバー輸入相手国・地域であり、メキシコ製品は同品目輸入額全体の42.6%を占め、前年同期比75.8%の伸びを見せている。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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