フランス、脱炭素水素の生産支援制度で初の採択案件を発表
(フランス)
パリ発
2026年08月04日
フランス政府は7月22日、脱炭素水素(注)の生産支援制度について、初回公募で採択した3件のプロジェクトを発表した。合計161.4メガワット(MW)の水電解能力が支援対象となった。政府が掲げる1ギガワット(GW)の水電解設備導入目標に向けた第一歩となる。
フランスは2025年4月に改定した国家水素戦略(2025年4月28日記事参照)において、2050年のカーボンニュートラル達成に向け、産業の脱炭素化と水素技術の発展を柱とする方針を再確認している。今回の支援制度はその中核施策の1つで、製造業向け脱炭素水素の生産拡大に向けて約40億ユーロを投入する。
同制度では、脱炭素水素と天然ガス由来の水素とのコスト差を最長15年間補填(ほてん)することで事業者の投資を後押しする。対象は輸送・製油部門を除く産業用途で、脱炭素水素を基盤とした新たな産業バリューチェーンの形成を促す。
初回公募では次の3件のプロジェクトを採択し、総額7億7,800万ユーロを15年間にわたり支援する。今回採択された案件は化学、鉄鋼、肥料分野に関連するものとなった。
「イドロゼール(HydroZère)」プロジェクトは、仏エネルギー大手エンジー傘下のエンジー・ソリューションズH2が南部ロゼール県で進める5MWの水電解プロジェクト。鉄鋼大手アルセロール・ミタルの製鉄所に脱炭素水素を供給し、従来の天然ガス由来水素を代替する。
「エム・ローヌ(eM-Rhône)」プロジェクトは、水素・合成燃料製造のエリス・エナジー(Elyse Energy)が南東部イゼール県で進める脱炭素メタノール製造プロジェクト。同社の水電解設備で生産した脱炭素水素と、建設資材ラファルジュ(Lafarge)のセメント工場から回収した二酸化炭素(CO2)を原料にメタノールを合成する。メタノールは化学原料に加え、船舶燃料や航空向け合成燃料の原料として利用される。設備全体の水電解能力は210MWだが、このうち化学用途向けメタノール生産に充てる61.1MW分のみが産業向け脱炭素水素生産支援制度の対象となる。
「フェルティソンム(FertHySomme)」は、肥料メーカーのフェルティハイ(FertigHy)が北部ソンム県で進める低炭素窒素肥料の製造プロジェクト。将来的に200MWの水電解能力を計画しているが、このうち95.3MW分が今回の支援制度の対象となった。電解装置で製造した脱炭素水素を原料にアンモニアを合成し、さらに硝酸アンモニウム肥料へ加工する。アンモニアは窒素肥料の基礎原料だが、通常は天然ガス由来の水素を用いて生産されるためCO2排出量が大きい。政府は同プロジェクトを、脱炭素水素由来のアンモニアから低炭素窒素肥料を生産する国内初の取り組みと位置付ける。肥料の輸入依存低減や食料・農業主権の強化につながることを期待している。
(注)フランス政府は脱炭素水素について、「低炭素電力または再生可能電力を利用し、水の電気分解によって製造できる水素」と説明している。
(山崎あき)
(フランス)
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