米国標準技術研究所、量子技術の製造基盤強化に向けた新たな枠組みを構築
(米国)
シカゴ発
2026年07月08日
米国国立標準技術研究所(NIST、注1)は6月29日、量子技術の産業化を支える製造基盤の強化を目的とする「クオンタム・マニュファクチャリング・エンジニアリング・センター(Quantum Manufacturing Engineering Center、QMEC)」の発足を発表した。本取り組みは、NISTによる約2,000万ドルの初期投資の下、SRIインターナショナル(注2)と連携して進められる。
QMECは、量子技術分野の専門家や企業が参加し、研究開発や製造基盤の強化を進める新たな枠組みとして運営される。主な取り組みとして、量子チップや集積フォトニック回路の量産化に向けた製造プロセスの開発、量子技術に関する標準規格や品質管理手法の確立、材料・部品の国内調達を支えるサプライチェーンの構築などを掲げる。これらを通じて、研究開発段階にある量子技術の実用化・商用化を後押しする。
量子コンピュータは、0または1のいずれかで情報を表現する従来のコンピュータと異なり、量子ビットを用いて処理する。量子ビットは、重ね合わせや量子もつれなどといった特性(注3)を備えており、従来のコンピュータでは解決が極めて困難な問題に対して高い計算性能を発揮することが期待されている。一方、実用化に向けては性能向上だけでなく、量子デバイスの量産体制や品質の安定確保も重要な課題となっている。QMECには、研究開発と製造の両面で課題の解決を図るとともに、量子技術の市場導入や普及を後押しする役割が期待されている。
今回の取り組みは、量子コンピュータそのものの開発に加え、製造プロセスや品質管理、規格の標準化といった産業基盤の整備の重要性が高まっていることを示す動きと位置付けられる。NISTによるこうした取り組みは、量子技術分野における製造基盤や評価基準の整備を進めるだけでなく、国際標準化を巡る議論にも影響を与える可能性がある。今後、量子技術の実用化・産業化をどこまで後押しするかが注目される。
(注1)NISTは、米国商務省傘下の政府機関で、計測科学や技術標準の研究・策定を担う。技術標準の開発や国際標準化活動にも関与しており、原子時計による時間標準、ナノスケール計測、半導体製造分野の計測・評価技術などで知られる。
(注2)SRIインターナショナルは、1946年設立の米国の非営利研究機関。政府や企業向けの研究開発を幅広く手掛け、人工知能(AI)や量子技術などの先端技術分野で活動している。
(注3)重ね合わせとは、量子ビットが0と1の状態を同時に取り得る性質を指す。量子もつれとは、複数の量子ビットが強く相関し、一方の状態が他方の状態と連動する現象を指す。
(坂井愛子)
(米国)
ビジネス短信 ddb88c7c64838f1c





閉じる