パリ司法裁判所、トタルに温室効果ガス排出の「スコープ3」考慮命令、注意義務法の解釈拡大
(フランス)
パリ発
2026年07月03日
フランスのパリ司法裁判所は6月25日、パリ市および4つの環境NGOがフランス石油大手トタルエナジーズ(TotalEnergies)を相手取り、注意義務法〔調査レポート(2021年8月)参照〕に基づく気候対策の強化を求めた訴訟で、同社の注意義務計画(注)は不十分であるとの判断を下した。裁判所は、顧客による製品使用時の温室効果ガス排出(スコープ3)を同計画に組み込むよう命じ、6カ月以内の修正を求めた。一方、具体的な排出削減目標の設定は認めなかった。
原告であるNGOとパリ市は、同社の計画が自社事業に伴う排出(スコープ1・2)に偏り、排出の大半を占めるスコープ3を十分に考慮していないと主張した。そのため、スコープ1~3を対象とした包括的なリスク分析と対策の実施に加え、2050年のカーボンニュートラル達成やパリ協定の1.5度目標に整合する削減措置の導入を求めていた。
これに対しトタルエナジーズは、気候変動は一企業だけの責任にできる問題ではなく、スコープ3は顧客の行動によるもので自社の管理下にないと反論した。また、注意義務法は企業に具体的な削減目標や事業戦略の策定まで義務付けるものではなく、司法は経営判断に介入できないと主張していた。
裁判所は、スコープ3も同社の事業活動に起因する気候リスクに含まれると認定し、現行の同社の計画は法令上の要件を満たしていないと判断した。その上で、スコープ1~3を含めたリスク分析を同計画に反映するよう命じた。
一方で、注意義務法の下で企業が講じる措置の具体的内容は企業の裁量に委ねられるとし、司法が削減目標や事業戦略を定めることはできないと明示した。このため、原告が求めた1.5度目標に沿った削減措置の策定は退けられた。
トタルエナジーズは同日、企業責任の範囲や事業戦略の決定権に関する裁判所の判断を評価し、注意義務計画へのスコープ3の反映について対応する方針を示した。具体的には、同社が企業持続可能性報告指令(CSRD)に基づくサステナビリティー報告書で示した電力・バイオ燃料事業の拡大や、顧客の排出削減支援策などを計画に反映する考えを明らかにした。
今回の判決は、2017年制定の注意義務法の解釈を広げ、企業に対してスコープ3まで考慮することを求めた重要な判断として注目される。今後、フランスの大企業の注意義務計画や気候関連訴訟に広範な影響を与える可能性がある。
(注)注意義務法に基づき、大企業が策定・公表しなければならないリスク管理計画。注意義務計画は、人権、基本的自由、健康・安全および環境に対する重大な侵害を特定し、防止するための合理的な注意義務措置を含まなければならない。
(山崎あき)
(フランス)
ビジネス短信 9aced7aa22d1b14b





閉じる