2025年の世界の対内直接投資額は6.0%増、AI関連など戦略分野に集中、UNCTAD報告
(世界)
調査部国際経済課
2026年07月10日
国連貿易開発会議(UNCTAD)は7月7日、「世界投資報告2026
」を発表した。2025年の世界の対内直接投資(FDI)額(国際収支ベース、ネット、フロー)は前年比6.0%増の約1兆6,243億ドルとなった(注1、添付資料表参照)。ただし、回復は依然として限定的かつ脆弱(ぜいじゃく)で、国・地域や業種ごとの偏りが大きいと指摘している。
FDIの受け入れ地域別では、先進国・地域向けが7,235億ドルと前年比11.5%増だった一方、新興・途上国・地域は9,008億ドルと2.1%増にとどまった(別添表参照)。先進国・地域では、欧州において英国(前年比4.6倍)、ドイツ(3.6倍)、スウェーデン(39.2%増)で流入が増加した。一方、米国(2.3%減)は減少に転じたものの、技術集約型産業や大規模プロジェクトの投資受け入れが堅調だったことを背景に、引き続き世界最大の投資受け入れ国の地位を維持した。
新興・途上国・地域では、中南米向けFDIは前年比14.2%増となった。ブラジルは再生可能エネルギーや資源分野への投資拡大を背景に22.9%増と好調だった。一方、北東アジア・ASEAN(前年比2.4%減)は小幅な減少となった。これは、タイ(30.3%増)、マレーシア(50.8%増)への投資は増加したものの、3年連続で減少した中国(10.0%減)や、香港(15.6%減)での減少が響いた。前年に減少に転じていたインドも43.6%増と大幅に回復した。中東(19.9%増)ではサウジアラビア(52.9%増)を中心に好調に推移した。一方、2024年に単一の大型案件により過去最高の受け入れ額を記録したアフリカ(26.3%減)は反動減となった。
2025年の世界のFDIでは、投資の集中もみられた。UNCTADによると、受け入れ額上位20カ国・地域が世界の直接投資流入額の80%超を占めた。業種別では、データセンターなどの人工知能(AI)関連デジタルインフラ、半導体、重要鉱物、脱炭素関連技術など、技術覇権やエネルギー安全保障、産業政策と結びつく戦略産業に投資が集中した。これらの分野は世界のグリーンフィールド投資額の44%を占め、2020年の16%から大きく上昇した。他方、再生可能エネルギーやその他インフラ分野では投資額が減少した。関税措置を巡る不確実性の高まりを背景に、自動車や電子部品など貿易依存度の高い一部製造業の投資も落ち込んだ。
投資形態別では、2025年の国際プロジェクトファイナンス(注2)は、デジタルインフラ分野の成長を契機に金額ベースで前年比3%増となり、3年続いた減少傾向に歯止めがかかった。ただし、高金利の継続を背景に、2021年のピーク時をなお約25%下回る水準にとどまった。クロスボーダーM&Aの取引額は7%減少した一方、国内でのM&A取引は活発だった。グリーンフィールド投資の発表額は前年の高水準を維持したが、データセンターや半導体など少数の大型案件が総額を支えた。
UNCTADは2026年の世界のFDIについて、中東情勢の影響を含む下振れリスクを抱えており、地政学的緊張や紛争に加え、資金調達コストの高止まりや通商政策の不確実性が投資判断の重石となると指摘した。また、投資が少数の国・地域や特定分野に偏る傾向が続き、戦略産業を巡る投資誘致競争は一層激化するとの見方を示した。
(注1)海外直接投資上の優遇税制を有するいわゆる導管(conduit)国・地域を経由したFDIを除くと、実質的な増加は4%程度にとどまると指摘。多国籍企業が税負担の軽減などを目的に海外直接投資を行う場合に、欧州などの優遇税制を有する国・地域を介在するケースを指す。
(注2)資金調達方法にかかわらず、複数の海外投資家が出資し、多額の借り入れを伴う大規模プロジェクトを指す。グリーンフィールド投資(クロスボーダー)やクロスボーダーM&Aともそれぞれ重複する部分がある。
(馬場安里紗)
(世界)
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