ジェトロ、大連で税務・財務・人事・労務などテーマにセミナー開催、最新動向を解説

(中国)

大連発

2026年07月07日

ジェトロは6月26日、中国・遼寧省大連市で「税務・財務・人事リスクへの対応」をテーマに、大連進出日系企業向け最新動向を解説するセミナーを開催した。製造業や商社など16社が参加し、デロイト大連事務所の寺田貴史公認会計士が、税務、財務コンプライアンス、人事・労務管理に関する実務上の留意点を解説した。

税務分野では、ロイヤルティー料率の設定に当たり、ベンチマーク分析や利益貢献度の説明資料など、合理性を裏付けるデータを事前に整備しておく重要性を指摘した。また、日本本社からの技術支援については、中国側税務当局からロイヤルティーとして源泉徴収課税を求められるケースがあるため、契約内容や業務実態に基づき、技術サービスであることを適切に説明する必要があるとした。

また、企業所得税について、ハイテク企業や技術先進型サービス企業を対象とする優遇税率(25%から15%への引き下げ)や、研究開発費の100%追加控除制度を紹介した。特に大連では、大連ハイテクパークのIT企業が技術先進型サービス企業として認定を受け、これらの優遇措置を積極的に活用している事例が多いことが紹介された。大連の日系企業でも研究開発費追加控除の活用がみられる一方、ハイテク企業認定には中国国内で保有する知的財産権が求められるため、日本本社が権利を保有する企業では認定取得が課題となっていると説明した。

個人所得税については、年次賞与に対する優遇課税制度を説明した。大連では当該制度の適用要件が比較的厳格に運用されており、対象となる賞与は原則として算定期間を12カ月とする年間賞与に限定される。このため、半年賞与などは中国の他地域では適用対象として認められることがあるが、大連では対象外とされる。そのため、賞与制度の設計段階において事前に適用可否を確認することが重要であると指摘した。

財務コンプライアンスについては、中国会計基準(CAS)が国際財務報告基準(IFRS)との整合性を高めていることを指摘した。特に新企業会計準則の適用が推奨されており、会計処理と税務処理の差異を適切に管理する必要があるとした。

人事・労務分野では、大連では暖房費補助を毎月支給すること(注1)や住宅積立金が上限額となる「前年度の大連市における在職者の月平均社会賃金の3倍」を超えないこと(注2)が実務上の留意点として挙げられた。また、経済補償金に関する相談が日系企業から多く寄せられていることを紹介しつつ、労働契約の違法解除に関する制度運用について、2025年9月以降は労働関係の回復(解雇・退職後の復職)がまず求められると紹介した。

参加者からは、「日本と中国の会計・税務制度の違いを理解できた」「税務の基本知識を整理できた」「最新の税務動向を把握できた」などの声が聞かれた。

(注1)大連市政府は、暖房費補助に関して2019年5月15日に「職員暖房費補助弁法」を公布している。同弁法では、暖房費補助額を従業員の職位に応じて設定し、「住宅面積基準×暖房費基準単価×70%」により算出した年間補助額を12カ月で案分して毎月支給することを定めている。企業による暖房費補助の支給額は月額100元(約2,400円、1元=約24円)前後となるケースが多い。

(注2)大連市の関連規定に基づき、住宅積立金の「拠出基数」(基準額)は、従業員本人の前年度における月平均賃金を基準として決定しなければならない。従って、従業員の賃金に変動が生じた場合、企業は翌年7月以降、速やかに住宅積立金の拠出基数を見直し、必要に応じて調整を行う必要がある。

(李穎)

(中国)

ビジネス短信 82f554d3cdfa027d