高リスクが常態化する時代に、踏みとどまる自由貿易体制、2026年版「ジェトロ世界貿易投資報告」発表
(世界)
調査部国際経済課
2026年07月28日
ジェトロは7月28日、「ジェトロ世界貿易投資報告」の2026年版を発表した。本報告では、貿易政策の不確実性や地政学リスクが常態化する中で進む世界貿易・投資の構造変化と、自由貿易体制を支える通商ルールの現状を分析した。要旨は次のとおり。
世界貿易、関税措置の逆風下でも拡大
2025年の世界貿易額(財貿易、名目輸出額ベース)は、前年比7.3%増の25兆2,988億ドルとなり、貿易数量も4.6%増加した。AI(人工知能)関連需要の拡大や、関税措置を見据えた前倒し輸出が下支えし、デジタル関連財が世界貿易を牽引した。特にAI関連財輸出は前年比22.8%増と過去最高を記録し、アジア域内では関連サプライチェーンの深化も進む。
一方で、米中間の貿易関係は弱まり、企業は調達先や輸出先の多角化を進めている。高リスク環境の長期化を背景に、世界貿易は拡大を続けながらも、その構造は大きく変化しつつある。
企業の投資判断は強靭性重視に重心
2025年の世界の対内直接投資額は、国連貿易開発会議(UNCTAD)によれば、前年比6.0%増の1兆6,243億ドルとなった。グリーンフィールド投資は件数こそ減少したものの、データセンターや半導体、重要鉱物といった戦略産業向けの大型案件が寄与し金額は過去最高を記録した。
一方、企業の投資判断は、コスト効率を重視した国際分業から、地政学リスクや供給網の強靭(きょうじん)性を重視する方向へ移りつつある。増加傾向を維持する日本の対外直接投資では、インド向け投資が過去最高を記録した。ジェトロの海外進出日系企業実態調査では、グローバルサウスが日本企業にとっての利益の源泉になりつつある現状がうかがえる。
自由貿易を支える通商ルール、連携は多層化
貿易・投資を阻害する政策介入が過去最高水準に達する中、日本企業の本社を対象としたジェトロの調査では、約7割の企業が米中関係をはじめとする地政学リスクの影響を認識、または懸念している。一方、関税措置などの逆風下でも2025年の世界貿易は拡大し、自由貿易体制の強靭性を示した。WTOの既存ルールは引き続き基礎的な貿易インフラとして機能している。2025年に前年比約8割増となったアンチダンピング措置は、WTOルールに規定された措置として、不公正な貿易に対処する現実的な手段となる。
2026年7月時点の世界の発効済み自由貿易協定(FTA)は424件となった(ジェトロ調べ)。大型FTAに加え、デジタルや資源・重要鉱物などの分野特化型ルールや、法的拘束力を持たない国家間合意も広がり、通商秩序は多層化している。また、一部の国・地域でサステナビリティ政策の見直しが進む中でも、企業への対応要請は継続している。高リスクが常態化する時代において、複数のルールや枠組みを活用しながら事業を展開することが企業には求められている。
本報告の概要はジェトロの記者発表ページを参照。本文は「ジェトロ世界貿易投資報告」ページで公開している。
(峯裕一朗)
(世界)
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