宇都宮発の宇宙スタートアップBULL、ブルガリアの小型衛星企業との協業を発表

(日本、ブルガリア)

調査部国際経済課

2026年07月28日

宇宙デブリ対策技術を開発するスタートアップの株式会社BULL外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(本社:栃木県宇都宮市)は7月16日、日本にも拠点を置くブルガリアの小型衛星企業エンデューロサット(2026年3月12日記事参照)と、PMD装置(注1)「HORN」の軌道上実証(注2)に関する契約を締結したと発表した。実証成功後にはエンデューロサットの認証サプライヤーとなることを目指しており、日本発技術の欧州市場展開に向けた重要な一歩となる。ジェトロは7月23日、同社に協業の狙いや海外展開戦略について話を聞いた。

同社によると、今回の協業は、2025年に東京で実施されたアジア最大級の宇宙ビジネスイベント「NIHONBASHI SPACE WEEK 2025外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に端を発する。近年、小型衛星コンステレーション(注3)の拡大などを背景に、運用終了後の衛星を適切に軌道離脱させるデブリ化防止技術への関心が高まっている。会場で出会った両社は、こうした市場ニーズを背景に協業へ向けた議論を進めた。BULLが開発する「HORN」は、衛星の運用寿命終了後にブーム(展開式の支柱)を使って大型の膜を展開し、スラスター(衛星の軌道を変更するための推進装置)を使用せずに軌道離脱を促す装置だ。2026年6月にH3ロケット6号機で打ち上げた、「HORN」を搭載した実証衛星では、膜の展開と衛星の軌道降下に成功した。宇宙デブリ対策を目的とした展開型装置を開発する企業は世界でも限られており、同社代表取締役の宇藤恭士氏は「宇宙空間で10メートルを超えるブームを伸展させることができるのは自社だけ」と胸を張る。宇都宮市には航空宇宙産業が集積しており、部品や加工を地域企業から調達しているのも特徴の1つだ。

同社は今回の実証を、海外市場への本格展開に向けた重要なステップと位置付ける。エンデューロサットの認証サプライヤーとなれば、同社衛星を利用する世界各国の顧客に対し、「HORN」を通じた軌道離脱ソリューションを提供可能となり、販路拡大が期待される。加えて市場が拡大すれば、「HORN」をデブリ化防止の業界標準とする道筋も見えるという。

画像 BULLが開発する「HORN」(同社提供)

BULLが開発する「HORN」(同社提供)

同社は今後、実証成功の成果を踏まえ、欧州をはじめとする海外市場での事業展開を強化する方針だ。既にフランスに現地法人「BULL SAS」を立ち上げており、2025年には欧州最大級の宇宙産業の展示会「Space Tech Expo Europe」に参加するなど、海外市場へのアプローチに積極的だ。宇藤氏は「今後はHORNの販売だけではなく、衛星位置データの解析や利活用まで含めた宇宙サービスプロバイダーを目指したい」と語り、宇宙状況把握(注4)サービスの展開を見据えた富士通とのMOU外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(覚書)について言及した。

今後、「HORN」が海外の宇宙産業サプライチェーンに組み込まれることになれば、日本の宇宙スタートアップの国際展開の新たな事例として注目される。

(注1)あらかじめ宇宙機に搭載をすることで、ミッション終了後の宇宙機の軌道離脱を早め軌道滞在時間を短縮させる装置。

(注2)宇宙機を地球周回軌道に投入し、宇宙環境下での性能や耐久性、通信能力などを実際に確認する実証試験のこと。

(注3)特定の目的に応じて複数の人工衛星を統合して運用するシステムのこと。

(注4)宇宙にある人工衛星や「宇宙ゴミ(スペースデブリ)」の位置や軌道を監視し、衝突を防ぐための活動のこと。

(峯裕一朗)

(日本、ブルガリア)

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