IMF、2026年の世界経済見通しを小幅下方修正、AI需要が紛争の影響を相殺
(世界)
調査部国際経済課
2026年07月10日
IMFは7月8日、最新の「世界経済見通し(改定版)」(英語
、日本語
)を発表した。2026年の世界経済の成長率(実質GDP伸び率)を3.0%、2027年の成長率を3.4%と予測した(添付資料表1、表2参照)。前回4月時点の予測から、それぞれ0.1ポイントの下方修正、0.2ポイントの上方修正となった。中東地域で発生した紛争によるマイナスの影響が、エネルギー輸入国や経済が脆弱(ぜいじゃく)な国では重くのしかかる半面、人工知能(AI)需要の加速により紛争の影響が部分的に相殺される結果、世界経済は緩やかな減速が見込まれると予測した。
今回のIMFによる見通しは、7月中旬にホルムズ海峡の通航が再開し、2027年3月までにおおむね紛争前の状況に戻るとの想定に基づいている。前回の見通しと比べ、世界の全体像に大きな変化はないように見えるものの、内訳をみると国ごとに大きなばらつきがある。一部のエネルギー輸出国や、AI関連製品などの世界の技術バリューチェーンに深く組み込まれている国などでは上方修正された一方、AI主導の経済活動から恩恵を受ける立場にない商品輸入国では下方修正されている。
主要国・地域別にみると、米国の2026年の成長率は、前回予測と同じ2.3%で据え置かれた。財政政策や生産性の強みなどが経済活動を支えているほか、エネルギーの純輸出国であるため、紛争の影響は限定的とされた。ユーロ圏は0.9%(0.2ポイントの下方修正)となった。主にアイルランドによる2026年第1四半期の大幅なマイナス繰り越し効果に加え、その他の国でも景気モメンタムが弱いことや、財政支援策による一定の緩和にもかかわらず、エネルギー価格の上昇や消費者信頼感の低迷が成長を抑制することなどを反映した。
中国の成長率は4.6%(0.2ポイントの上方修正)となったが、世界的な原油価格の上昇に加え、長期化する不確実性や構造的要因が経済活動の重荷になるとした。インドでは、民間消費とサービス活動の力強い勢いに支えられ、6.4%(0.1ポイントの下方修正)と高成長が続くと見込まれる。中東・中央アジア地域の成長率は0.7%と予測され、前回予測から1.2ポイントと大幅に下方修正された。もっとも、ホルムズ海峡封鎖の長期化を前提とした反動も見込まれることから、2027年の成長率は6.5%(1.9ポイントの上方修正)へ大幅に引き上げられた。
またIMFは、世界のインフレ率については、エネルギー価格と食料価格の上昇を背景に2026年は4.7%まで加速した後、2027年には3.9%まで低下すると予測した。商品価格は、米国とイランの停戦合意締結後は、ピークであった4月からは落ち着きを見せているとした。ただし、エネルギー価格については、紛争発生前を上回る水準で推移すると予測する。
IMFは、世界経済全体としては、これまでのところ、紛争によるショックを当初懸念されていたよりもうまく吸収していると評価した。見通しを巡るリスクは、前回予測時点より均衡が取れているとした一方で、中東での紛争再燃や金融市場の価格調整に伴うリスクが残っていることから、依然として下振れ方向に傾いているとの見方を示した。
(熊谷佐和子)
(世界)
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