トランプ米大統領、モロッコ産リン酸肥料への補助金相殺関税を一時停止、最長8カ月間
(米国、モロッコ)
ニューヨーク発
2026年07月02日
米国のドナルド・トランプ大統領は6月29日、モロッコ産のリン酸肥料の輸入に課されている補助金相殺関税(CVD)を最長8カ月、一時停止するよう指示する大統領布告を発表
した。同日、ファクトシート
も発表した。
1930年関税法第318条(a)項は、大統領に対し、戦争状態にある場合などに緊急事態を宣言し、その間、緊急救援活動に使用される食料、衣類、医療・外科用などを無関税で輸入できる権限を財務長官へ付与することを認めている。トランプ氏は今回、リン酸肥料が農業生産や国民の食料供給、米国の食料安全保障に不可欠だとした上で、生産地域での紛争などによりサプライチェーンが混乱状態にあり、米国の農業需要を満たすのに十分な肥料の供給が脅かされているとして緊急事態を宣言した。国連食糧農業機関(FAO)によると、全世界の肥料の20~30%がホルムズ海峡を通過しているが、米国・イスラエルとイランの軍事衝突により、同海峡の航行は制限されている。
モロッコ産のリン酸肥料に対するCVDは、商務省が2021年2月に賦課を決定し、直近では16.81%が課されていた(注)。CVDの一時停止は、布告発表と同日の2026年6月29日から開始し、期間は8カ月間、あるいは緊急事態が終結するまでのいずれか早い時期までとなっている。なお、モロッコ産と同時期にCVDが課されたロシア産リン酸肥料については、今回の一時停止の対象外だ。
ホルムズ海峡が封鎖されたことを受け、米農場局連盟(AFB)は3月、輸入肥料製品に対するCVDの一時停止を求める書簡をトランプ氏に送っていた(米通商専門誌「インサイドUSトレード」6月30日)。布告の発表を受け、AFBは声明
を発表し、農家が支援を必要としている時期に決定された今回の措置を「常識的」と評価しつつ、トランプ氏の対応を歓迎した。また、米大豆協会(ASA)のスコット・メッツガー会長は、肥料を「大豆農家が毎年直面する最も大きなコストの1つ」とした上で、モロッコ産輸入品に対するCVDの停止はその供給状況を改善し、「農家が2027年の作付け計画を立て始め、ますます難しくなる資金繰りの判断に直面しているこの時期に、生産コストの削減に寄与する」と述べた。
(注)モロッコ国営リン鉱石公社(OCP)の生産するリン酸肥料に対するCVD税率。2021年2月の導入当初は、19.97%。
(滝本慎一郎)
(米国、モロッコ)
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