パキスタン製品が支えるFIFAワールドカップ、サッカーボール製造のフォワード・スポーツに聞く
(パキスタン)
カラチ発
2026年07月14日
国際サッカー連盟(FIFA)ワールドカップが北中米で開催され世界中のサッカーファンの注目が集まる中、その舞台を支えるサッカーボールの多くはパキスタン製だ。パンジャブ州シアルコートに本拠を置くサッカーボール大手メーカー、フォワード・スポーツのビジネス・デベロップメント&マーケティング部シーラズ・ムナワール氏から、同社の事業展開について話を聞いた(ヒアリング日:2026年7月7日)。
フォワード・スポーツのシーラズ・ムナワール氏(ジェトロ撮影)
同社によると、パキスタンは世界のサッカーボール市場の70%超のシェアを持ち、世界最大級のサッカーボール生産地のシアルコートには1,000社以上の関連企業が産業クラスターを形成している。パキスタンとサッカーボール産業の歴史は古く、1900年代初頭に英国駐留軍(注1)が地元工房にボール修繕を依頼したことにさかのぼり、その後100年以上にわたり発展を続けてきた。
1990年設立のフォワード・スポーツは、年間約2,050万個を製造する業界最大手だ。1994年以来、世界的サッカーブランドのアディダスと戦略的パートナーシップを維持し、同ブランド需要の最大60%を供給している。現在開催中のFIFAワールドカップ公式試合球の詳細は非公表ながら、同社製ボールも供給されている。FIFA向けボールを製造できる国は世界でも限られており、パキスタンはその中核を担っている。
ムナワール氏によれば、アディダス向け製品は100項目以上の品質試験を通過する必要があり、吸水率、摩耗耐久性、反発性能、飛行時の回転特性、プレイアビリティ(蹴りやすさ)など、競技性能に直結する検査を含む。また、日本向けにはモルテンやミズノなどへ供給しており、品質は国際的に高く評価されている。
品質管理を徹底する検品(フォワード・スポーツ提供)
研究開発が製造技術と生産性を向上し、競争力を強化
競争力の源泉は研究開発投資と生産工程の高度化にある。同社のカワジャ・マスード・アクタールCEOは、「イノベーションは当社のDNAに刻まれている」と述べ、同社は独自の研究開発施設を有する。熱可塑性ポリウレタン(TPU)やポリウレタン(PU)を主要素材とし、用途や価格帯に応じ6種類の製造技術を使い分ける。2000年代初頭には手縫いから完全機械化のリーン生産方式(注2)へ移行し、大量生産と安定品質を実現したほか、新素材開発、スマート機械導入、人工知能(AI)活用による品質検査も進めている。
カワジャ・マスード・アクタールCEO(同社提供)
また同社は環境対策、人権尊重、労働環境の改善に関する国際基準を順守している。工場にはブランド担当者が常駐し、監査や改善提案を実施する。従業員約1万人のうち35%が女性で、女性の経済的自立にも貢献する。新型コロナ禍では需要急減に直面したが、生産効率化とコスト削減で乗り越えた。今後はフットウエア製造体制の強化と、自社ブランド展開の拡大を目指しており、世界最高峰のスポーツイベントを支える企業として、パキスタン製造業の国際競争力を象徴する存在となっている。
同社独自の研究開発施設(同社提供)
(注1)現在のパキスタンに相当する地域は、1858年から1947年まで英領インドの一部として英国統治下にあった。
(注2)リーン生産方式とは、生産ラインの無駄を徹底排除し、生産の効率化、製品の品質向上を図る生産方法。
(糸長真知)
(パキスタン)
ビジネス短信 07601655c62cc05c





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