サムスン電子、ニュージャージーの新本社開設から1年未満でテキサス州へ移転
(米国、韓国)
ヒューストン発
2026年06月05日
韓国サムスン電子の米国法人サムスン・エレクトロニクス・アメリカは6月1日、米国本社をニュージャージー州イングルウッドクリフスからテキサス州プレイノへ移転することを明らかにした(「NJBIZ」6月1日)。移転は2026年末までに完了する見込みで、同社が2025年にニュージャージー州に新本社を開設してから1年未満での移転となる(注1)。
同社は今回の移転について、長期的成長に向けた事業変革の一環と説明しており、既存のテキサス拠点への機能集約を通じて、組織連携の強化や意思決定の迅速化を図るとしている。約1,000人規模の従業員に影響が及ぶとされる。
サムスンのテキサス州オースティン工場では、1998年に容量64キロビットのDRAMメモリー半導体の生産を開始した。その後の増強投資により、現在はモバイルSoC(注2)や28ナノメートル(nm)と14nmの高性能ロジック半導体を製造する主力拠点となっている。2022年に着工したテイラー工場では、2nmと4nmの人工知能(AI)向け先端ロジック半導体を生産し、自動運転用チップ「AI5」「AI6」向けに供給する予定だ。これらの投資に対しては、CHIPSおよび科学法に基づき最大47億ドルの補助が確定しており、さらにテキサス州の半導体助成金プログラム「テキサス半導体イノベーション基金(Texas Semiconductor Innovation Fund、SIF)」から2億5,000万ドルの助成が付与されている。
韓国電子材料メーカーの現地供給も開始
こうした中、サムスンのテキサス州における半導体サプライチェーンの構築も進んでいる。韓国の電子材料メーカーであるENFテクノロジーは、テキサス州カイルの製造拠点からサムスンのテイラー工場向けに半導体プロセス用化学材料の供給を2026年4月に開始した(「The ELEC」6月1日)。米国内拠点からテイラー工場へ商業規模で材料を供給した初の韓国系企業となる。
同社は2021年からオースティン工場向けの供給実績があり、既存の現地生産体制を活用することでテイラー工場向けの需要にも迅速に対応した。また、テイラー工場への供給を見込み、2024年に約2,300万ドルを投じた設備拡充を完了している。他社(注3)は現地生産の立ち上がりが遅れており、供給体制に差が生じている。ENFテクノロジーが生産するのは、シンナー、ストリッパー、アンモニア水、リン酸、現像液など、半導体製造の初期工程向けの化学材料だ。今後は量産段階に合わせて、主要材料の供給拡大も見込まれる。サムスンのテイラー拠点にとっては、2026年末の試験生産および2027年の量産開始に向けた重要なマイルストーンと位置付けられる。
(注1)ニュージャージー州では2010年代から、レンタカーのハーツ(Hertz)や自動車のメルセデス・ベンツ、直近ではエクソン・モービルなど大企業の移転・転出が相次いでおり、ビジネス環境や税負担を巡る議論がある。
(注2)システム・オン・チップの略。CPU、GPU、メモリーなどを1枚の半導体チップに集約したもの。
(注3)韓国のドンジン・セミケム(Dongjin Semichem)は2025年2月、高速通信、AI、自動車、航空・防衛分野向けフォトレジスト用シンナーを生産するキリーン工場の拡充に、州助成240万ドルを含む1億1,000万ドルを投資する計画を発表した。同社が主導する合併会社DSMセミケムが2024年7月にプレーンビューで竣工(しゅんこう)した電子グレード硫酸工場には、拡充計画に対し州助成金約787万ドルが交付される。半導体製造向け化学薬品メーカーのソウルブレイン(Soulbrain)は、テイラーにリン酸製造工場を建設し、2033年までに4億ドルの投資を計画しているが、現時点では用地取得段階にとどまっている。
(キリアン知佳)
(米国、韓国)
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