パキスタン、2026/2027年度連邦予算を発表
(パキスタン)
カラチ発
2026年06月23日
パキスタン政府は6月12日、2026/2027年度(2026年7月~2027年6月)連邦予算を公表した。総額は約18.7兆ルピー(約10.8兆円、1パキスタン・ルピー=約0.58円)で、財政健全化と成長下支えの両立を志向する内容となった。政府は個人所得税や州への財源配分を巡る調整を続け、公表は当初予定から2度延期された。今後、国会審議を経て7月1日までの成立が見込まれる。
歳入面では、連邦歳入庁(FBR)の税収目標を約15.3兆ルピー(前年度約13兆ルピー)とし、非税収入を含めた総収入は約20.6兆ルピーを計画する。一方、国家財政委員会(NFC、注1)制度に基づく州配分(約8.8兆ルピー)後の連邦政府純収入は約11.8兆ルピーにとどまり、借入依存体質は継続している。
歳出では、債務利払いが約8兆ルピー(注2)と最大項目で、歳出の約43%を占める。特に国内向け利払いの比重が高く、総歳出の約37%に達する。対外借入は、IMFプログラムの下で債務持続性を重視した財政規律が求められることに加え、低位のソブリン格付けにより国際市場での資金調達が成約されているため、拡大余地が限定的だ。この結果、高金利環境下での国内借入への依存が強まり、利払い負担の増大が構造化している。防衛費は前年度比約16%増の約3兆ルピーと拡充され、年金・補助金とともに固定的支出の比重が高い。
ムハンマド・オーラングゼーブ財務相の予算演説では、給与所得者への減税措置に加え、輸出促進を目的として輸出代金に係る源泉徴収税率の引き下げが打ち出された。さらに、農業分野での機械化推進と生産性向上のため、農業用機器・機械の輸入に対する関税撤廃が発表された。一方で、ユーチューバーやSNSのインフルエンサーの所得を対象としたデジタル経済への課税強化に加え、税務手続きの電子化推進を通じた課税基盤の拡大など新たな政策要素も柱に組み込まれた。
本予算は、IMFの拡大信用供与措置(EFF)(2024年9月30日記事参照)と強靭(きょうじん)性・持続可能性ファシリティー(RSF)(2025年5月14日記事参照)の枠組みに沿い、財政規律の維持と構造改革の継続を前提に策定されており、IMFが示す政策方針が色濃く反映されている。貿易自由化や関税合理化などの改革課題もその一環に位置付けられている。一方で債務負担の重さや歳入基盤の脆弱(ぜいじゃく)性といった課題は残るものの、改革の着実な実施を通じ、対外信用の回復とマクロ経済の安定化を経て、持続的成長への移行が期待される。
(注1)NFC(National Finance Commission)とは、国の税収を連邦政府と4州の間で分配するルールを定める、憲法に基づく制度。各州への配分は、人口や貧困状況、地域特性など複数の基準を踏まえて決定されており、財政基盤が脆弱な州に対しては一定の財政調整機能を果たしている。
(注2)国内利払いが約7兆ルピー、対外利払いが約1兆ルピー。
(糸長真知)
(パキスタン)
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