失業率9.1%に上昇、インフォーマル化の進行と女性の失業増加が課題
(チリ)
サンティアゴ発
2026年06月05日
チリ国立統計局(INE)が5月29日に公表した全国雇用調査(ENE)
によると、2026年2月から4月までの失業率は9.1%となり、前年同期比で0.3ポイント上昇した。これは新型コロナ禍の影響が大きかった2021年半ば以来の高水準で、40カ月連続で失業率が8%を上回った。
今回の失業率上昇は、直近12カ月の労働力人口の増加(前年比1.0%増)が就業者数の増加(0.7%増)を上回ったことに起因する。就業者数は増加しているが、雇用創出が求職者の増加に追いついていない。失業者数は4.1%増加し、特に「初めて求職する者」が11.6%増と大きく伸びた。
今回の結果で最も顕著なのは女性の失業率増加だ。女性の失業率は10.5%と前年同期比で0.8ポイント上昇し、男性(8.0%)との差が拡大した。女性の労働力人口が2.1%増と大きく伸びた一方、就業者数の増加は1.3%にとどまり、雇用吸収力の不足が顕在化している。また、女性失業者数は10.1%増と大幅に増加し、女性の労働市場参入と雇用機会のミスマッチが背景にあるとみられる。
就業構造の面では、雇用の「質」の低下が顕著だ。職業区分別ではインフォーマル賃金労働者および自営業者が増加した一方、正規賃金労働者は減少している。インフォーマル就業率は26.8%と前年同期から1.0ポイント上昇し、インフォーマル就業者数も4.5%増加した。特に商業および製造業での増加が目立ち、雇用創出がインフォーマル部門に偏っている。
今回の統計では、大卒以上の層における失業増加が目立っている。大卒以上の失業者は前年同期比15.3%増、技術教育修了者も20.8%増と大幅に増加し、いずれも複数期連続で増加している。従来は比較的安定していた大卒以上の層での失業拡大は、経済全体の構造的な雇用創出力の低下を示唆するものといえる。
労働時間も減少している。総労働時間は0.2%減少し、平均労働時間も週36.2時間に低下した。労働時間の短縮傾向が進行しており、雇用の量は維持されても所得の伸び悩みにつながる可能性がある。
こうした状況を受け、政府は対応を急いでいる。トマス・ラウ労働・社会保障相は「これらの悪い数値には緊急の対応が求められる」と述べ、投資促進や成長の回復を柱とする国家再建計画の推進を強調した。また女性雇用対策として、保育所制度改革の法案修正を6月中旬までに提出する方針を示した。
一方、ダニエル・マス経済兼鉱業相は、今回の状況を「約95万人が無職という社会的悲劇」と表現し、その背景に10年以上続く低成長を挙げている。専門家の間でも、労働市場の弱さは短期的な景気変動ではなく構造的要因に起因するとの見方が強い。
足元の雇用情勢は、雇用創出の不足とインフォーマル化の進行、さらに女性および大卒以上の層の失業増加が同時に進む構造的な問題を示している。経済成長の回復に加え、雇用の質の改善や女性の労働参加を支える制度整備が今後の重要な政策課題となる。
(高橋英行)
(チリ)
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