ESCAP、ラオスの越境ペーパーレス貿易の制度強化促す

(ラオス)

ビエンチャン発

2026年06月15日

国連のアジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)は6月3日、ラオスの「越境ペーパーレス貿易(CBPT)」の準備状況に関する最新評価レポートを発表した。同レポートは、国内でデジタル化された貿易データを、国境を越えて相手国と交換し、それを法的に相互認証できる体制の整備状況を多角的に分析したものだ。具体的には、関税申告データ、電子原産地証明書、電子植物検疫・衛生証明書、電子署名の相互承認に加え、関連法や協定の整備状況を評価し、政策提言を示している。

ラオスでは近年、貿易円滑化が大きく進展している。国連の調査(注1)によると、貿易円滑化措置の実施率は2021年の63.44%から2025年には75.27%へと大きく改善した。この背景には、2024年2月に全面稼働したNSWA+(注2)がある。これにより、29カ所の国境検問所、3駅の鉄道駅、2経済特区がデジタル接続された。その結果、輸入手続きに要する平均時間は2022年の4時間51分から、2024年には3時間19分へと約30%の短縮に成功した(注3)。

一方、国境を越えたデータの相互認証については依然として課題が残されている。CBPT実施率は50%にとどまり遅れが目立つ。法的には電子文書の有効性を認めながらも、実務では対面審査や紙の書類と押印を義務付けるような重複が存在する。2022年に改正された電子取引法でも、電子船荷書類(e-B/L)など電子譲渡可能記録(ETR、注4)の管理・譲渡に関するガイドラインが整備されていない。さらに、外国の電子署名が承認されていないことが、国際的な文書の相互運用性を阻害する要因となっている。ASEANシングルウィンドウ経由の原産地証明書(e-Form D)の交換など一部で成功を収めているものの、植物検疫証書(e-Phyto)や衛生証明書(e-SPS)の交換は計画段階にとどまっている。

これらを踏まえレポートでは、次の3点を最優先課題として提言した。

  1. アジア太平洋ペーパーレス貿易枠組み協定(CPTA、注5)への早期加盟
  2. 省庁間の断片化を排除するための調整メカニズムの強化
  3. NSWA+統合範囲を2030年までに4機関から15機関への拡大

その他、中長期的には原産地証明書の発行プロセスの完全デジタル化、認定事業者(AEO)プログラムの強化を通じた相互承認協定(MRA)の締結、およびETRや個人データ保護に関する具体的法整備を並行して進めることを求めた。

(注1)デジタルおよび持続可能な貿易円滑化に関する国連グローバル調査(UN Global Survey on Digital and Sustainable Trade Facilitation)。国連の複数機関が共同実施する、各国の貿易手続きデジタル化の進捗を測る指標。透明性、制度、国内ペーパーレス、越境ペーパーレスなどの実施状況をスコア化している。ラオスのデータは「UN Global Survey on Digital and Sustainable Trade Facilitation外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を参照のこと。

(注2)NSWA+(National Single Window ASYCUDA Plus)。貿易窓口統一システムのLNSWと、電子通関システムのASYCUDAを統合した包括的な電子申告プラットフォームのこと。

(注3)リードタイム調査とは、 世界税関機構(WCO)が推奨する調査手法のこと。貨物の到着から最終的な引き取りまでに要する時間をステップごとに測定し、物流のボトルネックを特定するもの。

(注4)ETR(Electronic Transferable Records)とは、紙の有価証券や権利証書(船荷証券など)が持つ譲渡可能な権利を、デジタル上で完全に再現したもの。

(注5)CPTA(Agreement on Facilitation of Cross-border Paperless Trade in Asia and the Pacific)とは、貿易データの相互承認を目指す国連の多国間条約のこと。2026年2月時点で、タイやフィリピンなど15カ国が批准済み。ラオスは加盟に向けた準備評価を終えている。

(山田健一郎)

(ラオス)

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