米テキサス州知事、害虫NWS発生で災害宣言を発令
(米国)
ヒューストン発
2026年06月15日
米国テキサス州のグレッグ・アボット州知事(共和党)は6月5日、新世界ラセンウジバエ(New World Screwworm、以下NWS)の州内での発生を受けて災害宣言を発令した。州知事は同宣言に基づき、政府機関の資源を災害対策業務に再分配、あるいは業務遂行を妨げるような規定を停止することができる。
主に中南米・カリブ地域に生息するNWSは、「肉食バエ」とも呼ばれ、メスのハエが傷口や粘膜に卵を産み付け、孵化(ふか)した幼虫が生きた動物の体内に侵入・寄生して臓器などを食い荒らすため、畜産業に深刻な打撃を与える可能性がある。1976年にNWSがテキサス州でまん延した際、家畜の死亡による生産量の減少や追加的な検査費用など、当時の家畜生産者が被った損失額は年間1億3,210万ドル、州経済全体では2億8,300万~3億7,500万ドルと試算されていた。以降、米国政府は各種対策を通じて約50年にわたりNWSの再発を抑えてきた。
非営利団体のシンクタンク・テキサス政策リサーチ(Texas Policy Research)が、1976年にNWSがまん延した際の被害額に基づき、今回のNWSのまん延がもたらす被害額を試算したところ、テキサス州内だけで約20億ドルの損失が発生し、かつNWSが州外に広がれば損害はさらに大きくなると結論付けている。カナダ食品検査庁は6月5日、テキサス州からの家畜の輸入を一時的に停止する措置を発表するなど、既にサプライチェーンに影響が出ている。
災害宣言の発令以降、テキサス州政府はNWSの拡大の阻止に積極的に動いている。アボット氏は災害宣言の発令同日に開かれた記者会見において、「屋外のペット、特に傷口が露出している、または未治療のペットを注意深く監視してほしい」と住民に呼びかけた。
また、米国農務省(USDA)はNWSの被害拡大対策として、放射線で不妊化させたオスのラセンウジバエを大量に放つため、7億5,000万ドルをかけて不妊ラセンウジバエの生産施設の建設に着手した(注)。なお、この投資によりテキサス州南部エディンバーグで建設が進められている不妊ラセンウジバエの生産工場について、アボット氏は完成予定の2027年11月を前倒しすべく、テキサス州予算を追加投入する意向を示した(AP通信6月5日付)。
さらに、テキサス州動物衛生委員会(TAHC)は、最初に幼虫が発見されたザバラ郡をはじめ、ラサール郡、ウェブ郡、ギレスピー郡、カー郡、キンブル郡を制限区域に指定、制限区域外に生きた動物を持ち出すことを禁止するなどの対策を取っている。
(注)NWSのメスは生涯に1度しか交尾しないという独自の生態的特性を利用し、「蛹(さなぎ)」の段階で放射線照射により不妊化させたオスを大量放飼することで、不妊オスと交尾したメスが産んだ卵は孵化しないため、個体群密度を段階的に低下させる仕組み。
(早坂直樹)
(米国)
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