フランス、AIに6億5,500万ユーロを追加投資、公共サービスへの導入を加速
(フランス、米国、欧州)
パリ発
2026年06月19日
フランスのセバスチャン・ルコルニュ首相は6月16日、人工知能(AI)分野に6億5,500万ユーロの追加投資を行うと発表した。投資は国家投資計画「France 2030」を通じて実施され、インフラや計算能力、研究開発、企業・産業基盤の強化に充てられる。発表は、6月17日にパリで開幕した欧州最大級のテクノロジー見本市「ビバ・テクノロジー(VivaTech)」を前に、自身のX(旧Twitter)上の動画(フランス語)で行われた。
首相は「かつての電力やインターネットのように、AIは既に私たちの生活を変えつつある」と述べ、AIを社会構造の変革を担う基盤技術として位置付けた。その上で、「実証段階は終わった。私は国家の変革を加速させることを決断した」とし、公共部門におけるAI活用の本格展開を宣言した。
政府はまず、全公務員を対象とした共通の主権型対話AIアシスタントの導入を進める。これは政府独自の生成AIプラットフォーム「ジェニアル(GenIAl)」(注)を活用するもので、機密データを国内で管理しつつ、行政業務の効率化を図る狙いがある。司法省や内務省では2026年中に最先端AI技術が導入され、機密情報の処理やビザ審査の迅速化などに活用される見込みだ。
さらに、2026年末までに公的医療保険のオンライン窓口「アメリ(Ameli)」にAIを活用した「公共ヘルスアシスタント」を導入し、国民向けサービスの高度化を図る。また、人口・経済・地理などの公共データへのアクセスを容易にする新たなAI専用プラットフォームも整備する方針だ。
首相は、「デジタル分野で新たな戦略的依存を受け入れることはできない」とし、「真の自律性の構築が不可欠だ」と強調した。背景には、米国のトランプ政権が国家安全保障上の懸念を理由に、同国のAIスタートアップ「アンソロピック(Anthropic)」に対し、外国人の最先端モデルへのアクセス停止を命じたことがある。
首相は今後、AI分野の公共調達においてもフランスまたは欧州企業を優先する方針を示し、国内治安総局(DGSI)が同日、米国のAI企業パランティア(Palantir)との契約を打ち切り、フランスのチャップ・ビジョン(ChapsVision)と契約したことを明らかにした。
ルコルニュ首相は、「このAI革命をただ見守り、受動的に受け止めることもできるが、主導することもできる。フランスは選択した」と述べ、AI分野における主権確保への強い意思を示した。
(注)フランス軍事・退役軍人省が開発した主権型生成AIプラットフォーム。2024年の導入以来、わずか2年で利用者は10万人に達し、年間約1,900万件のリクエストを処理するなど急速に普及している。
(山崎あき)
(フランス、米国、欧州)
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