産業界、新自動車政策の慎重な対応求める声明を発出

(パキスタン)

カラチ発

2026年06月16日

パキスタン政府は、近く発表予定の2026/2027年度(2026年7月~2027年6月)連邦予算と並行して、「自動車産業発展・輸出政策(AIDEP)2021-26」の後継となる新政策の策定を進めている。ムハンマド・イスハーク・ダール副首相の主導の下、ハイレベル会合や専門小委員会を通じた関係者協議が継続されており、政策内容は最終調整局面にある。

新政策は、電気自動車(EV)への移行加速、国内製造基盤の強化、輸出拡大、雇用創出を柱とし、2030年までに新車販売に占めるEVおよび新エネルギー車の比率を30%へ引き上げるという野心的な目標を掲げている。この背景には、輸入燃料依存の低減や外貨節約といったマクロ経済上の従前からの課題に加え、中東情勢の不透明化に伴うエネルギー価格高騰への対応がある。

一方で、政策の具体的手段、特に関税政策の見直しをめぐっては、政府内外で見解の相違が生じている。テックジュース、ガルフニュースなど複数メディアによる地元報道によれば、政府内では完成車(CBU)や自動車部品に対する関税の大幅引き下げが検討されているが、これに対し自動車製造業者協会(PAMA)、自動車部品製造者協会(PAAPAM)など国内産業界が強い懸念を示している。これまで国内自動車産業は、現地調達率の向上とともに雇用創出にも寄与してきたが、急な関税合理化が進み部品などの輸入が増加すれば、産業基盤やサプライチェーンの毀損(きそん)につながりかねない、との指摘だ。

こうした状況の中、パキスタン日本ビジネスフォーラム(Pakistan Japan Business Forum、PJBF、注)は6月11日、輸入完成車や現地化部品と同等の輸入部品に対する急激な関税引き下げが、国内製造業およびサプライチェーン全体に深刻な影響を及ぼし得るとして、地元各紙を通じ慎重な政策運営を求める声明を発出した。ムルタザ・マンドビワラPJBF会長は、日本企業を含む長年の投資により形成された製造基盤や技術移転、人材育成の成果について言及し、「安定的かつ予見可能な政策枠組みの維持が不可欠である」と強調した。新自動車政策をめぐっては、政府がEV化の推進と既存産業の保護・育成の間で、バランスをいかに確保するかが重要な論点となっている。

写真 PJBFのムルタザ・マンドビワラ会長(ジェトロ撮影)

PJBFのムルタザ・マンドビワラ会長(ジェトロ撮影)

(注)PJBFは2001年設立。日本・パキスタン間の貿易・投資促進およびビジネス交流の強化を目的とする、パキスタンに拠点を置く民間組織。日本・パキスタン両国の企業を含む約140社が加盟。

(糸長真知)

(パキスタン)

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