米臨床腫瘍学会で膵がん生存期間2倍を示す結果を発表、治療の転換点に
(米国)
シカゴ発
2026年06月05日
米国イリノイ州シカゴで5月29日~6月2日、米国臨床腫瘍学会2026年年次総会(ASCO2026)が開催された。世界最大規模のがん領域の学会で、オンラインを含め4万人以上の専門医や研究者らが参加した。特に重要な試験が選ばれるプレナリーセッションでは、膵臓(すいぞう)がんの生存期間を従来の約2倍に延ばす結果が報告され、大きな注目を集めた。
この結果は、2014年にカリフォルニア州レッドウッドシティで設立されたバイオ企業であるレボリューション・メディシンズが開発する膵臓がん薬ダラクソンラシブによる第3相試験RASolute 302で示された。試験は米国や日本を含む複数国で実施され、すでに治療歴のある転移性膵管腺がん患者約500例を対象とした。従来の化学療法に比べ、全生存期間は約6.6~6.7カ月から13.2カ月に延び、死亡リスクを60%低下させた。病気の進行を抑える期間や腫瘍の縮小率といった指標でも改善が示され、安全性も良好とされた。発表時にはスタンディングオベーションが起こるなど、その臨床的意義の大きさが会場に強い印象を残した。
同社は、これまで治療標的にしにくいとされてきたRASタンパク質に特化した研究開発を進めてきた。創業者には化学生物学やシグナル伝達の分野で実績を持つ研究者が名を連ね、独自の分子設計技術を基盤に、従来手が届かなかった標的に挑んできた。
膵がんでは患者の9割以上にKRAS変異が見られる。KRASは大腸がんや肺がんにも関わる重要な遺伝子で、変異により細胞の増殖を促すRASタンパク質が常に活性化された状態となる。しかし、その構造上、薬剤が結合しにくく、長年「創薬困難標的」とされてきた。ダラクソンラシブは、別のタンパク質を介してRASに結合する独自の仕組みにより、腫瘍の増殖を促すシグナルを遮断すると考えられている。
今回の発表は、2026年4月に公表されたトップライン結果(臨床試験での速報)をさらに詳しく示したもので、生存曲線や患者層ごとの解析、生活の質(QOL)の評価など、包括的なデータが提示された。膵がんは長年、治療選択肢が限られてきた領域であり、本試験は新たな標準治療となる可能性を示している。同時に本成果は、従来「創薬困難」とされてきた領域に対し、作用させるアプローチの革新によって治療標的として成立し得ることを示した点で、今後の創薬開発や市場の方向性にも影響を与え得る転換点として注目されている。
レボリューション・メディシンズの展示ブース(ジェトロ撮影)
(坂井愛子)
(米国)
ビジネス短信 9f193c6c730e731b





閉じる